44話 決意
スギノルリ、見てるだけでした!
2階の部屋へと入った。
「もう!見てたんなら早く助けてくださいよ!」
「すまんすまん」
椅子の正面に座るパッセさんを、私が怒った。
パッセさんの隣にヴァイス、私の隣にエクルが座った。
「なんで、あんなことになってたんですか?」
聞くと、身なりを整えるようにと城から訪れていたエクルとヘーシュ、母親だったが、先に女性陣の身なりを、と言うことで、エクルは時間を持て余していた。
せっかくだから店内を見たいと思ったエクルは、黙って下に降りてきてしまっていたらしい。
そして、ボロボロの身なりを見た獅子の獣族達がエクルに目をつけた、と。
あー、なんかデジャヴ…
私怒れないやつだ、コレ。
「ヴァイスが言ったように、最近の国民がたるんでいたのは事実だからな。少し様子を見ていたのだ」
その貴族っぽい紅茶の飲み方…
王子であるヴァイスを呼び捨てにする立場…
エクルを甥と言っていた。
「エクルの母親と兄弟だったんですね」
「あぁ、セフィは私の姉だ」
そんな気はしてたよ。
雰囲気似てるし。
あぁ〜、パッセさん、有力者だけじゃなくて権力者だった!
この国でパッセさんには逆らわないでおこう…
「ルリ!」
着替えを終えたヘーシュと母親が出てきた。
「ヘーシュ!可愛いね!」
「えへへ〜」
屈託なく笑うその顔は、ドロドロで薄汚れてもなく、髪も、元の真っ白な毛並みに戻り、リボンの付いた、可愛い服を着ていた。
「ルリさん、いらしてたんですね」
おぉ、眩しい!
これぞ本物の王族の女性ですよね、って感じの気品あるセフィさん。
胸に当てた手の指には、白い花の指輪をしていた。
サラサラの長い髪に、しなやかな長い手足、切長だけど大きい黄色の瞳をしていた。
「あれ?瞳、紫じゃないんですね。尻尾の先も」
パッセさんと違う。
「ふふふ、パッセは少し特別なの」
優雅に笑うその姿に見惚れて、その言葉の意味を気にしていなかった。
「エクル様、どうぞこちらへ」
戸惑うエクルに、
「カッコよくなっておいで」
そう言うと、少し照れ臭そうに、部屋の奥へと連れられて行った。
「エルフの里へ行くそうだな」
「はい。その前に、一度人族の国にも寄ろうと思ってますけど」
「いーなー、ヘーシュも行きたい!」
「もう少し大きくなったらね」
ヘーシュとセフィさんを見ていたら、なんだか無性に恋しくなった。
キュノさんとジロッソさん、元気かな。
この世界で、帰る場所があるってことが、こんなに心が温かくなるとは思わなかった。
「創造国には寄らんか?」
「ここへ来る前に寄って来た所なので、再入国するにはまだ日にちがありますね」
「そうか、なら別に頼むからいい」
「言伝ですか?」
「あぁ。クロムにな」
クロム!
「お知り合いなんですか?」
「あぁ。キミのことも聞いていたよ。風変わりな魔法使いがいる、とね」
お上りさんの次は変わり者扱いか…
「直接会うまでは半信半疑だったが、納得したよ。まさかあの気まぐれ屋に気に入られるとはな。流石というか」
気まぐれ…かな?
「気まぐれで気分屋。そのくせ客を選ぶ。本心を見せることなくいつも笑っている。抜け目のない男よ」
確かに…
「それでも、情報屋としての腕は代々優秀だからな」
もしかして、獣族国の揉め事を巨人の王に教えたのはクロムだったりして…
「エルフの里で、アートルムに会ったら、私は元気にしていると伝えてくれ」
「お知り合いなんですか?」
「昔、世話になったんだ」
「へー」
エルフと獣族はやり取りがあるのかな?
「ヴァイスが案内するんだろう?」
あ、その話題…
鳥の姿で大人しく肩にいたラピスの殺気が刺さる。
「……そうですね」
「ヴァイスなら顔も効くし大丈夫だろう」
やめてー。ヴァイスを褒めないでー。
「僕も、行く!」
身なりを整えたエクルが出てきた。
「僕も、ルリに、ついて、行く!」
服を着替え、髪も整えたエクルは、見事な美少年になっていた。
うん、さすが王族。
私や母親のセフィさんに、必死で訴えるエクル。
まだ幼いエクルを、この危険な旅に連れて行くわけにはいかない。
「ごめんね、エクルは連れて行けないんだ」
「いやだ!お父さん、助ける!」
その言葉に、部屋にいた皆が黙った。
「ルリは、いつか、行くん、でしょ?」
お父さんの仇、赤竜の元へ…
目が、そう語っていた。
「ぼくも、いく、」
真剣な眼差しに、それ以上何も言えなかった。
「わかった。一緒に行こう」
「ルリ!?」
「お預かりして、宜しいでしょうか?」
エクルの肩を抱き、セフィさんに尋ねた。
その決意を察したのか、
「エクルを、どうかお願いします」
深々と頭を下げてくれた。
このやり取りを見ていたパッセさんもヴァイスも、それ以上は反対しなかった。
スギノルリ、新たな仲間が出来ました!




