2話 就職活動
杉野瑠璃22歳、異世界でも就職活動はじめます!
「はぁ〜、これからどーすればいんだろう…」
勢いよく城を出てきたものの、行くあてもなく、私は街の広場に来ていた。
椅子に座り周りを見渡す。
ここは異世界なんだ、と感じさせられる。
大きな広場に、見慣れない街並み、見たことのない色の髪や目をした人達。
こうして見てみると、確かに黒い髪をした人はいない。
茶髪の私を召喚者と気付く人はいないだろう。
この茶髪は、染めているわけではない。
私は産まれつき色素が薄いらしい。
そのせいで、子供の頃はずっとイジメられてきたし、中学高校では先生から注意を受けるし、就職活動だって…
『君、なんだねその髪色は?就職するつもりあるのか?』
『髪を染めてから出直して来なさい』
『学生じゃないんだからしっかりしてよ』
誰も私の話なんて聞いてはくれなかった。
そしてここでも、やっぱり私の話なんて聞いてもらえないのだ。
「まさか異世界に来てまで就職活動するはめになるとはね…」
そう言って見た足元は、いつも履いていたヒールではなかった。
あの後、支度金と一緒に渡された服と靴。
着ていたリクルートスーツはもうない。
「この国では珍しい服ですのでこちらをお使いください」
「召喚者さまは特別でいらっしゃる分、特異な目でも見られます。どうぞお気をつけくださいませ」
つまりは、召喚者であることを人に言うな。
役立たずの魔法使いで恥をかくのはお前だぞ。
そーゆーわけで、踵がすり減るまで履いたヒールも、就職活動全敗した勝負服ももうない。
私は、この世界で生きていかなくてはいけない。
「召喚者さま」
城を出る前に、ある人に呼び止められた。
嘘を見破る魔法を使っていた魔法使いだ。
「一言お伝えしたく」
丁寧に頭を下げてくれた。
「仕事を探されるということでしたが、魔法使いとして職に就くことは諦めください」
…役立たずだから?
「魔法使いとして職に就けるものは、我々年寄りだけです。あなたのような若い魔法使いに出来る仕事はございません」
「……どうしてですか?」
「あなたが魔法使いとしてこれからも生きられるのなら分かることです。今は、この助言のみが私に出来る精一杯です」
そう言ってまた深く頭を下げて、魔法使いは城へ戻って行った。
「けどなぁ〜……」
ため息をつきながら、ステータス画面を表示した。
スギノルリ
22歳
職業:魔法使い
レベル:1
「習得魔法はなし…」
「魔力…」
魔力:♾
「………」
「魔力♾?♾って、無限大ってことだよね?」
「それなら、この国で言われてる、魔力不足で魔法使いがどうっての、関係ないよね?」
本当は、あの時このことを伝えたかったのだが…
聞いてもらえていれば、何か変わっていたのだろうか。
「うーん………」
「でも結局、魔法1つも使えないんじゃ意味ないよなー」
「はぁ〜……」
「魔法使いは魔力がなくなれば使い物にならない役立たず…か」
確かに、ゲームをしているときに私がいつも思っていたことだ。
魔法使いは火力は強いが、その分魔力を消費して、魔力切れになると一気に使い物にならなくなる。
「ゲームでそう思ってたことでバチが当たったのかな〜」
「魔法使い、1番好きな職業なんだけどな」
「私も魔法でバンバン魔物やっつけたかったな…」
「役立たずの魔法使い…か」
異世界に来てもなお、私は役立たず呼ばわりなのか。
あの人達はここにはいないのに。
そうか、あの国王と勇者、誰かに似てると思ったら、母と兄に態度や口調が一緒なんだ。
私が突然姿を消しても、あの人達は気にもとめてないんだろうな…
私は空を見た。
青い。綺麗な空。
「ぐぅぅぅぅう〜〜〜〜」
お腹がなった。
「こんな時でもお腹は空くよね…」
自分が悲しくなる。
けど仕方ない、さっきから、すごくいい匂いがしているのも確かだ。
私は、その匂いの元へ向かった。
「おぅ、いらっしゃい!」
体格の良い、強面のおじさんがしている出店だ。
顔にも腕にも傷がたくさんあった。
スープかな?大きな鍋に入った何かをかき混ぜていた。
「それ、ください!」
「はいよ、3Gね!」
支度金から支払う。
この国の相場がまだわからない。
スープを待つ間、おじさんに聞いてみる。
「ねぇおじさん、この辺の宿って1泊いくら?」
「おーなんだ姉ちゃん、旅人か?ここらはだいたい50Gだな」
「ありがとう!」
スープを受け取り、近くの椅子に座る。
計算しよう。
1杯3Gのスープを1日3回食べて9G
1泊50G
1日あたり59G
城から渡された支度金200G
「ははっ」
馬鹿げた計算式だ。
私はこの国で3日しかやっていけないらしい。
「ごちそうさまでした!」
「おじさん、お金ってどうやって稼げばいいのかな?」
「なんだ〜?姉ちゃん家出娘とかか?」
「違う違う!」
「ははっ!金ならこうやって商売で稼ぐか、魔物倒して売るかだろーな」
「なるほど」
「まー、後者になれるのは一握りの奴だけだ」
「魔法が使えたらなー」
「魔法を使うには魔力がいるからな、俺らみたいな普通の人間にはまず魔力がない」
「魔力がない?少ないじゃなくて?」
「あぁ、大抵のやつは魔力を持っていない。持ってたとしても、姉ちゃんが言うように魔力量が少ないから魔法使いとしてやってくには難しいんだ」
「じゃぁさ、もし、魔力無限大の魔法使いとかがいたらどーなる?」
「そりゃ無敵だろ!」
おじさんは大声で笑った。
「なるほどねー、魔力はあるんだけどねー」
「なら魔導書買って魔法覚えりゃいんじゃねーのか?」
「え?」
「今なんて?」
「魔法って覚えれるの?」
「あぁ、そうだよ」
!!!!!!!!!!
頭が回らなかった!
ステータスに魔法がないから、使えないものなんだと思い込んでた!
これから覚えればいいんだ!
「おじさん!魔導書ってどこで買えるの?」
「ギルドか、そこの魔道具屋でも買えるぞ?」
すぐそこの店を指さした。
「ありがとう!」
私は急いで店に向かった。
「スープ美味しかった!また来るね!」
まだ諦めちゃいけない。
私は、この世界で、魔法使いとして生きてやる!
スギノルリ、魔導書買います!




