27話 サント国とバルト国
スギノルリ、再スタートです!
「どこへ行くんだ?」
「えーっと…」
創造国で買っていた地図を覗きこむ。
「あ、ここだ」
行きたい国は2つ。
サント国とバルト国だ。
前回勇者を召喚したサント国、前に魔王を倒したバルト国。
スート国は、人族が暮らす大陸の東側の、真ん中に近いところにある国だったらしい。
これから行くサント国はそれより少し北へ行った所、バルト国は、かなり南よりにあった。
「とりあえず、近いサント国から行ってみよっか」
「サント国へようこそ。冒険者証を確認します」
創造国に続き、二つ目の国、サント国入りましたー!!
門を抜け、街へ入った。
大きな広場に、四方へ続く道、遠くに見えるお城。
ギルドに立ち寄り、この国までに倒した魔物の報酬を受け取る。
道具屋に入り、品揃えを見る。
一応、武器屋も覗いてみた。
宿屋に一泊して夕食と朝食を食べた。
「よい旅を」
サント国を出た。
「うーーーん?」
え、なんだろう、この違和感。
国の大きさとか、店の品揃えとか、宿屋とか、スート国とは大差ない気がした。
けど、何かが違う。
でも、それが何なのかがわからない。
「あー、なんなんだろこれ、気持ち悪いなー」
「考えてもわからないか。とりあえず、バルト国にも行ってみよう」
さすがにここからバルト国は遠かったので、転移を使った。
「ようこそ、バルト国へ!冒険者証をお願いします!」
元気なお姉さんが迎えてくれた。
「よい旅を!」
門を抜けて目に入ってきたのは、たくさんの人達だった。
広場を往来する人、商人の呼び込みの声、美味しそうな食べ物の匂い。
「…わかった」
「何がだ?」
「サント国で感じた違和感。サント国になくてバルト国にあるもの」
「人の多さか?」
「活気よ!」
「ほぉ?」
「サント国の人達は、なんか、笑ってはいるけど楽しそうじゃないってゆーか。ここバルト国は、生き生きしてる。国民も、訪れる人達も。こっちまで笑顔になる!」
この2つの国について詳しく知ってる人っていないかな。
情報といえば道具屋かな?
『見つけた』
「えっ!?」
声が聞こえた気がして振り向いたが、そこには誰もいなかった。
あれ?ラピスもいない。
周りを見渡す。
「お嬢さん」
今度は声の主がいた。
振り向いた先にいたのは、店の前の椅子に座っている老婆だった。
「私を呼んだ?」
「この街は初めてかい?」
「うん、そうなの。だから人とはぐれちゃって」
私は老婆に近づいた。
「あ、そうだお婆さん、サント国って知ってる?」
「もちろんさ」
「行ったことある?」
「何が知りたいんだい?」
シワだらけの顔に更にシワを作り、老婆が笑った。
「この国とサント国、勇者を呼び出した国の違い」
老婆は考えるように少しの間目を閉じ、ゆっくりと話してくれた。
「どこにでも、弱者が必要なのさ」
「弱者?」
「【敗戦国】と言う、弱者だよ」
「その国があるからこそ、他国はやっていけるのさ。嘲笑い、見下すことで、国の威厳を保てるのさ」
「そんな理由で…」
「サント国も、新しい敗戦国が出れば立場が変わる。敗戦国は一つでいいのさ」
「なんでそこまでして…」
「それが人族だからさ。敗戦国を見下し、魔法使いを見下し、人より上に立つことによって、己の地位を保ちたいのさ」
「魔法使いも…」
「誰かがやんなきゃなんないのさ。奴隷制度はなくなったけど、みんなで仲良しなんて出来やしない。でなければ、他族にまで手をだす愚か者だからね」
「!」
ドワーフや獣族を…
考えただけで鳥肌がたった。
「そして、この国は間違いなく勝者だね」
「勇者による魔王討伐。しかも、以後5回続く討伐失敗により、500年以上勝者はずっとこの国のままだ。勝ち続けるこの国に、新たな敗戦国を待ち耐えるサント国。これが違いかね」
「……」
サント国の人達が心から笑っていなかった理由。
その国を訪れ、嘲笑い優越感に浸る他国の人達。
この国が活気に満ち溢れている理由。
魔法使いが虐げられているのも…
「ありがとう、お婆さん」
座って手を振るお婆さんと別れ、広場に戻った。
「ルリ!」
手をひかれ振り向く。
珍しく焦った顔をしたラピスだった。
「あ、ごめん、はぐれちゃったね」
黙って私をじっと見ている。
「何かあったか?」
「いや、お婆さんと話してただけだけど」
「そうか…」
「どうかした?」
「急に、オマエの気配を感じれなくなったんだ」
「え、なんで?」
「……」
また黙る。
「無事ならいい」
手を離し目を逸らされた。
なんだったんだろう?
広場の中央に人だかりができていたので気になって近付いた。
まわりの人の話を聞くに、どうやら勇者達の銅像があるらしい。
500年前に魔王を倒し、今なお崇められている存在!
私にとっては召喚者の先輩ってことになるのかな?
見たい!
人だかりの間から覗き込む。
「あ、やっと見えた…!」
ドドォォォォーーーーーーーーン!!!!!!
目の前の銅像が砕け散る。
石煙が上がり、街が大騒ぎになっている。
「勇者様達の像が破壊されたぞー!」
「誰だ!?」
「いや、誰も銅像には近付いてなかったぞ!」
「じゃぁどうして!」
一瞬見えた。
銅像を破壊した物の正体が。
「ラピスも見た?」
「…あぁ」
4体もの銅像を一瞬にして破壊したもの。
それは【雷槍】だった。
「超級魔導書、持ってる人がいるってこと?」
「……」
ラピスは感づいている。
その正体に。
けれど、私に話してくれることはなかった。
「とりあえず、この国を出よう」
広場から離れようとした時、
『くすくす』
また視線を感じ振り向いた。
赤い花柄の着物を着た、髪の長い女の人。
私をじっと見ている。
瞬きをした一瞬、女の人が視界から消えた。
「雪乃は元気?」
耳元で響く声。
長い髪の先が、肌に触れた。
身体が凍りつく感覚。
殺気とは別の、私を縛る巨大な力。
「千代姫、行くぞ」
女の人は、赤い髪をした男の人と共に、人混みに消えて行った。
スギノルリ、動けません!




