18話 創造国
スギノルリ、創造国、入りました!
「おぉ〜〜!!」
高い内門を抜けると、やっと創造国に入れた。
目の前に広がる街が、巨人とドワーフの国なんだ。
だだっ広い広場に、たくさんの人が往来していた。
遠目からでもわかる、巨人の大きさ。
尻尾のある獣人に、耳の尖った美男美女のエルフ。
その間を小さい背丈で忙しく動いているのがドワーフだ。
広場の中央には大きな建物があった。
ギルドかな?
円状の広場を囲むように建ち並ぶ店々。
そして、広場の奥には山のように大きい建物の集合体があった。
元からあるの山に、建物を建てたのか?
無数にある階段の先に、家なのか、店なのか、隙間なく並んでいる。
そして、その頂にある建物。
城だ。
この国の王がいる場所だろう。
とてもあそこまでは行ける気がしないな。
世界が違う。
日本が戦国時代だった頃、山の上にお城を造った意味が今ならわかる。
なんでわざわざあんな高い所に、建てるのも行くのも大変だったろうに、と本で読んだ時は思ったけど…
実際に下から見てわかった。
あんな場所、攻め落とすのは安易なことではない。
私は視線を戻し、広場を見渡した。
「とりあえず、武器屋だよね!」
武器屋を探していると、広場の周りの店一軒に、たくさんの人が集まっていた。
「はいはーい、冒険者の皆さん、ようこそいらっしゃいましたー!」
店員だろうか?
1人のドワーフが店の前で手を叩き客を呼び込んでいた。
「こちらが創造国一番の人気、職人メイズの店だよー!」
一番人気、気になる!
ここで買うかは分からないけど、基準にはなるかな。
巨人が両脇を守る入り口から店内へ入った。
シャンリンシャンシャンリン…
扉のベルが鳴り響く。
一つじゃない。
何重にも、何層にも重なったベルが、聞いたことのない音を出していた。
さすが職人の国。
造りが細かい…
広い店内に、ガラスケースに並べられた武器。
スート国の武器屋より遥かに優れているだろうことは、私でもわかった。
「皆さーん!注目ー!これから店の説明しますよー!」
さっきのドワーフが、集めた人々を店内に入れていた。
私の腰くらいの高さの背丈に黄色い肌、腰まである長い髪の毛に髭、腰にはたくさんのポケットがついた鞄を身につけていた。
「この店で武器を買う方法は二種類あります。一つは、既製品を買うこと。もう一つは、受注生産で世界に一つのあなただけの武器をつくることです」
ガラスケースの中の武器を見ると、なかなかな値段が付いていた。
既製品でこの値段って…
「そしてここからは、受注生産の説明をします。これはこの国の店共通のことなので、聞いといて損はないよ!」
なんか、デパートの実演販売のプロの人のような口調だな。
「受注生産にも、二種類あります。一つは、完全受注生産。その名の通り、お客様からのご要望通りに、素材から全て、当店でご用意します!」
「もう一つが、半受注生産。こちらは、武器の素材となる魔物や魔石を、お客様に用意してもらう方法です!それにより、完全受注生産と半受注生産では、値段が全く異なります!」
「もちろん、高価な素材は買取も可能なので、皆さん、是非当店にて持ち込みくださいね!」
「今言った説明と、詳しい料金はこちらに書いてるので見ていってねー!」
壁一面に詳しい料金表が提示されていた。
なるほど、武器の素材となるのは魔物の骨や牙、爪など。
革は道具店にて鞄や靴を作ってもらうことが可能。
自分で解体して持ち込むか、解体料込でしてもらうか。
私の場合は後者だな。
今まで魔物はジロッソさんに食料として売ってたけど、こうやって武器屋に売ることもできるのか。
「ちなみに、この国の付近では、稀に銀狼が出没するから、力に自信がある人は討伐に挑戦してください!」
ざわっ!!
「銀狼だって!?」
「シルバーウルフだろ?」
「普通の茶色い狼だってB級依頼だぞ!そもそも見つけることが奇跡、見つけたとしても倒せるのなんて一握りの冒険者だけだ!」
店にいた冒険者達が騒いでいる。
「はいはいはーい!皆さん、私のことぼったくり店員と思わないでくださいねー」
手を叩き冒険者達をなだめる。
「こちら見てくださいー!」
店の入り口、巨人の横に他より強固なガラスケースに入れられた武器があった。
「これは、あの有名なA級冒険者、カーマインからの依頼でつくった長剣です!」
ザワザワッ!!!!
「カーマイン!!」
「A級の中でもトップと言われている!」
「そうですー、かつて、カーマインからの依頼でつくり、役目を終え、今はこうしてここに飾られていますー!これこそが、シルバーウルフを素材に、職人メイズがつくったものです!」
「おぉ〜〜!!」
「通常一年待ちのところ、今なら半年待ちでお受けできますー!」
よくわからないけど、とりあえず、凄い人が凄い魔物を倒して、ここの職人が凄いですってアピールらしい。
A級冒険者お抱えの鍛治職人ってのが、ステータスになるのかな?
このお店のことと、この国での武器のつくりかたはなんとなくわかった。
他の店もみてみよう。
「ちょっと待てや!!」
店を出ようとした時、聞いたことのあるフレーズの叫び声が聞こえた。
「半年待ちだと〜?ふざけるな!こっちはわざわざこんな遠い所まで来てやってんだよ!!」
ドワーフ店員の胸ぐらをつかみ怒鳴る男。
「は、離してくださいっ!」
宙に浮いた足をバタバタさせて苦しそうに叫んでいる。
「俺のこと知らねーのか!?」
知らないよ。うるさいなぁ。
「B級冒険者、スマルト様だぞ!!」
ザワッ!!
おぉ、ざわついている。
有名なのか?
いやでも、自分で様付けってどーよ。
「み、皆様順番におつくりしてますのでっ」
「はぁ!?」
どこに行ってもいるんだな、こんな輩は。
この後の展開が読める。
「お客様」
「あぁ!?」
ほーら来た。
「手を離せ」
ドワーフ店員を掴んでいた手を握る大きな手。
入り口にいた巨人だ。
「これ以上騒ぐなら、連行する」
剣を抜き巨人に立ち向かうB級冒険者だったけど、勝者はあっさりと決まった。
「連れてってくる」
もう1人の巨人にそう告げると、冒険者を担いで店を出て行った。
なんか、関所にいた巨人とは違った雰囲気だな。
言葉使いも丁寧じゃないし。
お役所勤めと、用心棒ってかんじ?
巨人の中にもタイプがあるんだな。
さて、他の店も見てみよっと。
スギノルリ、武器屋を探します!




