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10話 超級魔法


 スギノルリ、風使いになりました!


 そして、目標であった、レベル40にもなったし!



 えーっと?


 次は何を目標にすればいいんだろ。



 「上級魔法の上ってないんですか?」


 私はキュノさんの店をたずねた。


 「あんたまさか…」


 それ以上は聞かず、キュノさんはため息をついた。



 「ない。上級魔法の上なんてない」


 「本当ですか?」


 私はキュノさんをじっと見た。


 根負けしたキュノさんが、


 「なんでそう思うの?」



 私は窓からある方向を指差した。


 「あの山なんですけど」


 キュノさんの顔つきが変わった。


 「やっぱり、何かありますよね?」


 「……」


 「あの山から、なんか、わかんないんですけど、強い何かを感じるんです」


 キュノさんが窓に近付き、その山を見た。


 「あの山には、竜がいると言われている」


 「竜!?て、ん?言われている?」


 「見たやつは一人もいないのさ。伝説の竜だとか、破壊の竜だとか。話ばかりが膨らんでる」


 「竜…」


 竜って、ドラゴン?


 口から火吹く的な?


 ラスボス級だよね、それ。


 この世界にもいるんだ…



 「その竜なら、持ってるかもね」


 「え?」


 「超級魔導書」


 「!!」


 


 「竜は人族より優れた魔法を使うって言われてるから、もしかしたらね」


 「可能性としてはありですね」


 「ただ、さっきも言ったけど、その竜の姿を見た人はいない。そもそも、あの山に近付くことさえできないんだ」


 「どうしてですか?」


 「結界なのか、魔法なのか、麓の森は迷いの森って言われてて、山に近付くどころか、一度入ると森から出ることさえ困難なんだ」


 「迷いの森…」


 「だから!変なこと考えるんじゃないよ!」




 あの後何回もキュノさんに念をおされた。


 迷いの森か。


 確かに不安はあるけど、超級魔法があるかも!って言われたら行かないわけにはいかない。


 それにいざとなったら[転移]の魔法もあるしね。




 夕方、私はジロッソさんの宿屋の下にある食堂でご飯を食べていた。


 今日はゆっくり寝て、明日から山へ行ってみよう。


 どれくらいかかるかな…


 キュノさんには聞けないし…



 そんな時、男の人達の話し声が聞こえた。


 酔っているのか、その男の人達は大きな声で笑いながら話をしていた。



 「こないだ、山の麓の森に行ってきたんだけどよ!」


 「あの迷いの森にか?」


 「なんの為に?」


 「竜退治に決まってんだろ!」


 「ははははははは!!」


 「バーカ!いるわけねーだろ!」


 机を思い切り叩き、ビールを持った手を振り回す。


 店中に笑い声が響いていた。


 「それでよ、連れてった魔法使いが、まー使えねー」


 「役立たずなんか連れてくなよ!」


 「荷物持ちにちょうど良かったんだよ」


 「なのにあの野郎、途中でくたばりやがって」


 「迷いの森出るのに1ヶ月かかったあげく、途中で魔力も回復薬もなくなってよ」


 「荷物持ちがお荷物になってどーするんだよってな!」


 「ぎゃははははははは!!」



 私は体が固くなった。


 今すぐにでもアイツらを殴ってやりたい。


 必死で拳を机に押し付けた。



 「それで、どーなったんだよ?」


 「もちろん、その場に置いてきたさ!役立たず連れてくほどバカじゃねー」


 

 男達は笑い続けた。


 それに同調する人はいなかったが、否定する人もいなかった。


 賑やかなことを迷惑がってはいるが、魔法使いに同情して心配している人はいない。



 どうしてここまで…




 「はいはい、ごめんよーお客さん」


 男達の注文した追加のビールを机に乱暴に置く店員さん。


 ジロッソさんだ。



 「魔法使いがどーとか言ってるけど、結局は竜退治も出来ず迷いの森で1ヶ月も迷子になった低ランク冒険者ですって、大声で言ってて恥ずかしくねーのか?」



 クスクスクスクス…


 

 店内の他の客が男達を見て笑っている。



 「あぁ!?おっさんなんだよ!?」


 

 恥ずかしくなったのか、怒りの矛先をジロッソさんに向けて誤魔化そうとしている。


 胸ぐらをつかみ、何かまた叫んでいる。


 大丈夫かな、相手は5人だし、低ランクとは限らないんじゃ…?



 「オレの店で暴れる気か?」


 「あ? う、ぐぅわぁぁぁぁぁ〜!!」


 ジロッソさんが、掴まれていた腕を引き離す。


 強く握られたのか、男は呻き声を出して腕を押さえている。


 「まだやるか?」


 いつもより低い声。


 鋭い目付き。


 ……怖い。



 「……くそっ!」


 男達はやられた男を抱えて店を出ていった。




 パンパン!!


 「ほらほら、飯が冷めちまう、皆食べてくれよ〜」


 手を叩き、いつものジロッソさんの笑顔が戻っていた。


 

 「ルリも食ってるか?」


 ゴツゴツとした手の甲で、優しく頭を2回叩かれた。


 その表情の裏に、言えない言葉を持って。



 この世界の魔法使いの立場を、どうにか変えることは出来ないのかな。



 そもそも、どうしてこんな扱いをうけているんだろう。



 星明かりの下、私は宿を出た。




 スギノルリ、いよいよ竜退治に出発です!


 

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