0話 はじまり
「あー、また負けた」
ゲーム画面に、ゲームオーバーの文字が表示されている。
「魔法使いって火力高いんだけど、魔力なくなったら全然使えないんだよね」
電源を切り、ベッドに倒れ込む。
「魔力無限大の魔法使いがいたら最強なんだけどなー」
「いやいや、そんなのあるわけないか…」
就職活動全敗中の唯一の安らぎは、寝る前にするゲームだ。
「明日もまた面接か…」
自分の長所?
―諦めが悪く、最後までやり抜くことです!
短所?
―何かに夢中になると、時間を忘れて没頭してしまうことです!
『あんたはどうしてそんなに出来損ないなの?お兄ちゃんはあんなに優秀なのに!』
『お前は何やらせてもダメだな!この役立たず!』
母と兄に毎日言われ続けてきた言葉は、家を出た今でも私の頭から離れることはなかった。
その日は、いつもより深く眠りについた気がした。
「行ってきます!」
リクルートスーツに身を包み、すり減らしたヒールの踵で思いっきり踏み出し玄関のドアを開けた。
「へっ!?」
その瞬間、私は落ちた。
落ちた場所は、見たこともない場所だった。
広い部屋、高い天井に太い柱、剣を持った騎士達に、いかにもって感じな王様。
あーこれは、あれですね…
私が状況を理解しようとした時、王様らしき人物が話始めた。
「よく来てくれた、召喚者達よ、我が国の英雄となってくれ!」
杉野瑠璃22歳、異世界召喚されました。