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美少年と通りすがりの通行人A

馨と一緒にいたのは、見知らぬ男子生徒。

そこに居合わせた姫野が、付き合わない? と告白。

しかし馨は、女には興味ないと言い捨て・・・?

夏の日差しが、かんかんに照り付ける。

雲一つない、見事に真っ青な空が私達を見下ろしている。


「は~い、皆さ~ん。口じゃなくて、手を動かしてくださ~い。皆さんが使うプールですからね~」


先生がテントの中から、私たちに叫ぶ。

だったら先生も動きなさいよと心の中で突っ込みながら、私ははあっとため息をついた。

まだ六月に入って間もないというのに、気温が高くてしょうがない。

というのも多分、ずっと日の下にいるからだ。


私、渕脇柴乃は現在プール開きのために二年生全員でプール掃除を行っています。

二クラスあるということで名簿順に二手に分かれ、私たちのグループはプール掃除を、もう一つのグループは周りの草むしりを行っている。

正直草むしりじゃなくてよかったと思う半面、こうやって日に照らされること自体好きじゃない。

まったく! せっかくのかわいさが日焼けで台無しじゃない!


「ああ! もう! なんで私達がこんな目に合わなきゃなんないのよ!」


「柴~乃、手が止まってるよ?」


「あんちゃんはよくやってられるね~こんっなに暑いのに」


「しょうがないでしょ、これも授業なんだし。さぼってると評価下がるよ?」


そういうとまたまじめに掃除をしだすあんちゃんは、私に掃除をするように言いながす。

仕方なく私も、持っていたデッキブラシでプールの床をごしごし磨いた。


「そういえば柴乃、あの後大丈夫だった?」


「は? 何が?」


「告白した姫野ちゃんに言った、浅沼君の一言。相当こたえたんじゃない?」


「ふん! あんなので動じるほど、私は軟じゃないわよ!」


さかのぼること一日前。浅沼君のことがすこ~~~しだけ気になった私は、尾行しようと後をつけていた。


その最中に遭遇したのが、姫野の告白である。

あいつ自身浅沼君が好きかどうかは、私にはわからない。

でも何か裏があるのは確かだ。

お願いだから、あいつの誘いだけは断ってほしい。そう思ってた矢先に突き付けられた現実が、これ。


『俺、女に興味ないから』


マジでなんなのよ! あいつ!!!

こんなにかわいい私を目の前にして、興味ないとかふざけてる!!!

イケメンだからって調子のりやがってぇぇぇぇ!


「もう! 思い出したら腹が立ってきたじゃない! そもそも私あいつのこと好きじゃないし!」


「まだいってる……いい加減、見栄張るのやめたら?」


「張ってない! もとはと言えば浅沼君が悪いんでしょ!!」


「浅沼君が何だって?」


はっと気づいた時には、もう遅かった。

いつの間にいたのだろう、私の後ろには彼がいた。

遥かに高い身長から、私を見下ろしている。

私をじっと見ているその目からは、何も感情が感じられなかった。


「なっ、なんであんたがここにいるのよ!!!」


「二組は名簿の前半がここ担当なんだよ、悪いか?」


「悪いわよっ! 今すぐ後半と交代してきて!!!!」


「そうなると妹と一緒にすることになるんじゃね?」


「うぐっ……!」


「そんなに嫌われることしたか? 俺」


変な奴とつぶやく彼の体が、異様に近いことに今気づく。

いつもの制服ではなく体操服だということにも、また変な感じがする。

こんなに近くに来られるとこっちが困るっていうか……

って違う! 騙されちゃだめよ、柴乃!

男なんてどれも一緒! クズなんだから!


「あ、あのさ。あんた姫野になんか言ったでしょ?」


「まあ言ったっちゃあ言ったな」


「あれどういう意味よ。家でもうるさいんだけど」


もちろんこれは嘘だ。

あいつは言われたことに関して、何も感じていない。

というより家ではここ以上に会話がないため、私にはわからないけど。

すると浅沼君は深いため息をつくと、私にぽつり。


「どういう意味も何も、そのまんまの意味だけど?」


と言……って……


「じゃあ好きなタイプとかも、何もないの!?」


「ねぇな」


「ひ、姫野が嫌だったから言ったわけでもなく!?」


「事実なんだから、仕方ないだろ?」


やっぱりこの人、本当にそう思ってるんだ。

驚きとがっかりが入り混じったような感情が渦巻いて、すごく複雑な胸中で何もいえなくなる。

どうして? こんなにかっこいいってちやほやされてるのに。

私が男子を嫌っているように、彼も女子が嫌いなの……?


「まあ、相手が相手だったのもあるけどな。あいつがいる前でやるもんだから、あの後大変だったし」


「あいつ?」


「あっ、いた! 人ごみに紛れてどこかへ行くのやめてよ、馨ぅ」


そこにやってきたのは、告白当時に一緒にいた彼の友人らしき人だ。

少年は私達に気が付くと、ぺこりと浅く会釈してみせた。


「えっと、柴乃さん……ですよね。どうして馨が柴乃さんと?」


「言ったろ? 前バイト先で会ったって」


「あれ? そうだったっけ?」


「紹介する。こいつ(てら)(はま)直樹(なおき)、ダチの一人」


「あ、えっと……は、初めまして」


遠慮がちにぺこぺこする彼の姿は、やっぱり普通って感じだった。

こんな人が浅沼君の友達、ねぇ~……

なんていうか、地味っていうか目立たないっていうか……


「知っての通り、私は渕脇柴乃よ。こっちはあん……」


「……渉です……あまり名前好きじゃないんで、名字で呼んでください……」


私が名前を紹介しようとする前に、あんちゃんが口をふさぐ。

なんでとばかりに彼女を見たが、鋭い目つきを向けられただけだった。

まったく、自分の名前が好きじゃないなんてもったいない。

杏珠、なんて聞いただけでかわいいのに。


そんなことよりも、だ。

浅沼君の友達とかいう彼―寺濱君は、本当に仲がいいように見える。

この人に聞けば、案外簡単に理由がつかめるんじゃないかな……

うーん、どうやって聞き出そう……


「うわさでは聞いてたけど、姫野さんとは全然違うんですね」


「何? 私と姫野を同レベルだって思ってたわけ? 失礼な言い方」


「あっ、そういう意味じゃなくて!」


「別にいいわよ、言われ慣れてるから。あんたこそ、イケメンと一緒にいてよく何も言われないわね?」


さりげなく気になっていたことを、ナチュラルに聞いてみる。

あんちゃんと浅沼君は、ごみを集めるかとか言って掃除を再開しているためここの会話は聞こえていない。

つまり、聞くのは今がチャンスってこと。

すると寺濱君は、あははと苦笑いして見せた。


「目立つようにはなりましたね……僕、普通すぎるので有名なので。でも、いい奴ですよ?」


「ふうん……じゃあ浅沼君が女子に興味ない理由とか、分かるの?」


「あー……百聞は一見に如かず……じゃないでしょうか……?」


「? どういう意味?」


「よかったら一緒に来ませんか? そこでなら理由、分かると思うので」


寺濱君がにこりと笑いながら、浅沼君の方へかけてゆく。

その後ろ姿を見ながら、私は事態を把握するので精いっぱいだった。


(つづく!!)

音楽機器が復活してからというもの、同じ曲を

エンドレスで聞いています。

やはり音楽というものはいいですね。癒されます。


次回、直樹君が言う馨君の秘密とは?

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