それでは皆さん、ご一緒に。「リア充、爆発しろ!!!」
来るバレンタイン前。
料理自体が苦手な柴乃は、スイーツづくりが得意な杏珠に
チョコレートを一緒に作ろうと提案する。
家に帰ると、そこにはめったに料理をしない
姫野の姿があって・・・
「まずチョコを溶かすところから始めよっか。お湯、沸かして」
料理教室の先生のように、優しくあんちゃんが話しかけてくれる。
慣れない私達は協力しつつ、言われるがまま行った。
チョコレートを作るどころか料理すらまともにしない私にとって、未知の世界同然。
あんちゃんが言う色々なことが初めてすぎて、どれも興味を惹かれるものだった。
「それにしても、姫野がチョコ作るの珍しいわね。バレンタインなんて姫野の愛を振りまくだけで充分~とか言ってたくせに」
「もちろん下僕にはそうするよ~? 姫野がチョコを作るのは、一人にだけだもん」
思わずびっくりして、手を止めてしまう。
それはあんちゃんも同じようで、姫野をめずらしげに見つめた。
「二人とも何その顔~姫野がチョコ作っちゃおかしいの~?」
「おかしいわけじゃないけど……その一人にって誰に?」
「一応直樹君だけど?」
「はぁ!? あんた達、もうそこまで進展したの!?」
「ち、違うもん! 姫野はただ、妹さんのことで迷惑かけちゃったから、お詫びにあげるだけだもん!」
まるで子供のいいわけだ、と思った。
それでも嘘じゃないってことは、彼女の顔が物語っている。
その姿は、恋する乙女のようで……
「なんかびっくりだな。姫野ちゃんが、寺濱君のことそんなに意識してたなんて」
「別に~あそこまで言われちゃ、やらないと姫野が意地悪みたいじゃない」
「あそこまでって……あんた、聞いてたの? あいつが早紀ちゃんに言ったこと」
「ていうかぁ、姫野ばっかりに言うのずるぅい~。渉さんだって、好きな人にあげるんでしょ~? 姫野、知ってるんだからね!」
姫野の言葉に、あんちゃんは持っていたボウルを落としそうになる。
いつにもまして顔を赤くした彼女の姿を、私が見逃すわけがなく……
「あんちゃん! それ、どういうこと!?」
「ちょっ。食いつくの早いよ、柴乃」
「だって今、好きな人って!」
「す、好きだなんて……私は少し、気になってるだけで……!」
「え~姫野はお似合いだと思うけどなあ。あの祓い屋さんと」
「姫野ちゃんっ!」
祓い屋という言葉だけで、すぐに誰のことか分かった。
彼女がバイトをしているところのチーフだと言っていた、神月瀬名さんだ。
それこそ私は全く接点がないから、気付くこともなかったけど。
でもバイト漬けになったのも、あそこで働きたいって言ったのもそれが関係しているとしたら……?
「何よ〜二人とも。急に色気づいちゃって。かんわいい~❤︎」
「からかわないでよ、柴乃」
「そうだよお姉ちゃん。自分は告白したからって、バカにしてるでしょ?」
「逆よ、姫野。この私が、二人の恋をサポートしてあげる!」
私の宣言が、家じゅうに響き渡る。
こうして私による、二人のためへのバレンタイン計画が幕を開けたのだった。
二月十四日、バレンタインデー当日。
今年のバレンタインは日曜日で、幸い学校で持ち物検査みたいな面倒ごとに巻き込まれなくて済んだ。
厄介なのは、いちいち呼び出さないといけないってことくらいかしら。
ま、連絡先は持ち合わせてたし全然問題ないんだけどっ。
「それで柴乃……どうして私が、こんな格好しないといけないのかな……?」
「そんなの、勝負事だからに決まってるじゃない! 似合ってるよ、あんちゃん!」
「……柴乃のバカ……」
真っ赤に顔を染め、恥ずかしそうにうつむくあんちゃん。
彼女をかわいらしい服にコーディネートしたのは、まぎれもなく私だ。
もともとあんちゃんは素質がいいし、私がどうこうするまでもなかったけど。
「お姉ちゃんってやること、意味不明だよね~他人の心配より、自分の心配すればいいのに」
同じようにかわいいフリルをあしらったワンピースを着せた姫野が、ため息交じりに言う。
姫野に至ってはセンスが似ているせいか、髪を少しいじっただけで何もしていない。
現に、二人のことを男子がちらちら見ているレベルだ。
ふふん、どうよ。これが私の実力よ!
「よぉ~柴乃。約束通り連れてきた……どうしたんだよ、その格好……特に渉は」
やっとのことで現れたのは、相変わらずおしゃれな私服を着た馨君だ。
いつものように眼鏡で顔を隠してはいるものの、やっぱり目立っているのには変わりない。
後ろからゆっくり目に歩いてきていた寺濱君と瀬名さんが来ると、二人は少し緊張したような顔つきになっていた。
「おはようございま……って、姫野さん! どうしたんですか、それ!」
「ちょっとおしゃれしてみたんだ~かわいいでしょ~?」
「はい! まるで天使みたいなかわいさです!」
「そ、そこまで言われると……姫野も困るんだけど……」
「女は化けるとよく聞くからな。悪くないと思うぞ、杏珠」
「あ、ありがとう……ございます……」
うんうん、いい感じいい感じ。
あとはそれぞれに任せてっと……
「これ、お前の差し金?」
「ふふっ、どう!? ちょぉっと私が本気を出せば、こんなもんよ!」
「そうですかい」
「あ、それとこれ! 馨君に! 甘いもの苦手って言ってたから、ビターチョコで作ったんだけど……」
勢いに任せて、彼に袋ごと手渡す。
馨君はその中身を確認すると、へえと感嘆の声を上げた。
「いつもあま~いのばっかもらってたから、助かるわ。よく覚えてたな」
「当たり前でしょ! あんたの彼女なんだから!」
「そんなお前だから、色々な人が引き寄せられるんだろうな」
え?
「キューピット、お疲れさま。ありがと」
ぽんぽんと頭を触りながら、にこりと笑う。
太陽の光に照らされた彼の微笑みに、私はますます彼に落ちてしまうばかりだったー
(つづく!!)
きっとこの話を読んだら、
言いたくなるだろうと思って
こんな題名をつけてみました。
姫野ちゃんがようやく意識しだしたのに、
舞台はもう二月。
時は残酷なものですね。
そんなラストに近づいているこの作品。
いよいよあの問題に追求します




