ご乱心中のお姉様
蛍雪高校では恒例行事と言われる美男美女コンテスト。
一位かと思った柴乃は、妹に抜かれて二位という結果に!
妹にすっかりはめられて、逃げるように去った柴乃は・・・
「ああ、もういらつく! なんなのよ、あいつは! 勝ったからって調子乗って! ほんっと気に入らない! そう思わない? あんちゃん!」
「……柴乃、食べるかしゃべるかどっちかにしようよ」
呆れたようにつぶやきながら、あんちゃんが私にナプキンを渡してくれる。
勢いよくケーキを口にした私は、それを受け取り口を静かに拭いた。
学校から出てもなお、私の怒りは収まらなかった。
それを気遣ってなのか、あんちゃんから「喫茶店、寄ろっか」と言ってくれた時は助かった。
ずっとイライラしていた私だったが、愚痴のように言っていたせいか少しはましになった気がする。
こんなことしてくれるの、世の中であんちゃんだけだと思うよ。うん。
「まあ確かに、あんなことされたら怒りたくもなるよね。去年も、あんな感じじゃなかった?」
「そこなのよ!! あいつにまんまとはめられたってのが気に入らない!」
「すごいよね。柴乃を悪者にみせるために、泣きまねなんて」
あんちゃんの言う通り、姫野はそういうやつだ。
二年連続でエントリーした美男美女コンテストでは、圧倒な差を残して姫野が勝利を飾った。
納得がいかなかった、だから彼女に問いただした。今日の私みたいに。
そしたら姫野は、泣き出した。
おかげで去年より男子のファンは増え、彼女の信者も減ることを知らない。
もちろん、嘘泣きだったというのに。
姫野は私が彼女を苦手なのと同じくらい、私が嫌いだ。
あんなに分かりやすい演技は、女子からは批判の的。
まったく、なんであんなのが妹なんだか……。
「でもすごいほうだと思うよ? 三学年有力者がいるにもかかわらず、二年連続で上位をキープするなんて」
「まあ、私にとって上位は通過地点みたいなものだしね」
「……相変わらず、姉妹揃って性格がよろしいことで」
「そういえば男子の方、どうだったの? 順位にとらわれて、見てないんだけど」
思い出したように私がつぶやくと、彼女はああと言って携帯を取り出す。
しばらく画面をスクロールしていたが、彼女は私に自分の携帯を渡してくれた。
「これが男子のランキング。女子と同じで、去年と一緒みたいだよ」
「へぇ~よく知ってるね、あんちゃん」
「まあ、女子の間では有名だからね」
男子ランキング一位に輝いたその人の名は、「浅沼馨」。
何度か女子の口から、その名を聞いたことがある気がする。
私自身イケメンなのかどうなのか、そんなのどうだっていい。
でも……
「……あんちゃん。その人の写真とか、あったりするの?」
何気なく聞いた、つもりだった。
なのに彼女はさも驚いたかのように、コーヒーを混ぜていたスプーンを落として……
「どうしたの、いきなり」
「たまたま! たまたま気になったの! 悪い!?」
「いや、だって……柴乃から男の人のことを言うなんて、台風でも来るんじゃないかと思って……」
「そこまで!?」
あんちゃんはごめんとか細くいいながら、携帯で写真がないか探し出す。
何よ、台風でも来るんじゃないかって。
私が男の人のことを聞くのって、そんなに変?
まあ確かに、男なんてどれも一緒だって思ってるしぃ? 嫌いでしょうがないんだけどぉ。
でもここまで言われると、気になるものでしょ!?
「ごめん柴乃、さすがに写真までは持ってない」
「え~! 人気なんでしょ!? そういうの出回ったりしてないの?!」
「ファンクラブに入ってるわけじゃないし、そんな簡単に……」
「お待たせしました、チョコレートパフェになります」
あんちゃんと会話を続けていた、そんな時だった。
彼が、現れたのは。
小さく束ねられていた、茶色と黒が混ざった髪。
すらっとした体格に、目と鼻がしっかりとした顔立ち。
燕尾服のような制服の胸元には、「浅沼」というネームプレート……
「あんた、もしかして……渕脇姉妹の片割れ?」
その言葉が私に向けられたものだと気づくのに、数秒かかってしまった。
予想もしていなかった登場の仕方に、戸惑ったのもある。
彼に不審に思われないように、平静を装いつつ鋭い目つきを向ける。
「そうだけど、片割れって言い方やめてくれない? 私には柴乃って名前があるのっ!」
「柴乃……ってことは、姉の方か。どうりで雰囲気違うと思った」
この人、まさか一目で私と姫野を見分けたの?
いや、さすがにそれはない!
私達は見た目だけはほんとにそっくりだし、初対面で見分けるなんてそもそも不可能よ!
「ていうか、あんた誰よ! 初対面の相手に、なれなれしくしないでくれる?」
「ちょっ、ちょっと柴乃」
「あー、悪い。気になったものでつい。俺は浅沼馨、蛍雪高校二年二組」
やっぱり、そうだ。
この人がうわさの……?
(つづく!!)
今週はバレンタインデーでしたね。
皆さんは、だれにあげたんでしょう
小説の男の子キャラにあげるとしたら、
別作品にはなっちゃいますが
絶対にしくにくのの神宮さんですね。
あとは遊部の司とか・・・
次回、やっと物語が動きます。




