これが噂のかわいい双子❤︎
「し、柴乃ちゃん、僕ぅずっと柴乃ちゃんが好きだっただす! お友達からでいいので、付き合ってほしいだす!!」
まん丸い顔の太っちょ君が、顔を赤らめて頭を下げる。
少しハゲている頭のてっぺんを眺めみながら、自分の髪をくるくる回して一言。
「嫌だ」
と言った。
「な、なんでだす!? こんなに柴乃ちゃんのこと好きなのに!」
「どんくらい好きとか聞いてないし。そもそも、初めて会った人と付き合う~なんてあると思ってるの? はい、分かったら行って!」
「ひ、ひどいだすぅぅぅぅぅ!」
泣きわめきながら、彼はどたどたと教室を出る。
そんな彼の背中を眺めながら、私ははあっと深いため息をついた。
「なにあれ、超ださい」
「せっかく一生懸命告白してきたのに、それはないんじゃない?」
「私の言うことの方が正しいでしょ」
「そうかもしれないけど……相変わらず柴乃は、ファン相手に容赦ないね」
呆れたようにつぶやく彼女をみながら、またため息をつく。
これが私、渕脇柴乃。
私にはたくさんのファンがいる。
告白されるのは日常茶飯事、それを玉砕するのももう慣れた。
男なんてかわいいものに目がない。だって私がそうだから。
「まったく、こうやって男が寄ってたかってくるのも嫌だなあ。見た目がいいってだけでモテるなんて……ああ、私って罪な女だよねぇ~」
「はいはい、それはよかったですね」
「ちょっとぉ、人の話聞いてる?」
「その言葉聞かされるの、何度目だと思ってるの?」
真顔でさらりと言ってのけるのは、私の友達の渉杏珠ことあんちゃん。
大人っぽい雰囲気が特徴の、クールでおとなしい女の子だ。
私の数少ない友達の一人でもあり、こうしてよくつるんでいるんだよね。
「そんなに怒らないでよ。私だってモテたくてモテてるんじゃないんだし」
「あんまりいうと、もう弁当作ってあげないよ」
「す、すみませんでした! もう言いません!」
そういいながらあんちゃんはため息交じりに、ハイと私にあるものを渡す。
かわいらしい手提げ袋に入れられた、弁当箱だ。
誰もが彼女を見たら、クールな一匹狼で近寄りがたい雰囲気があるだろう。
しかしあんちゃんの場合見た目はそうでも、中身はちゃんとした女の子。
料理はもちろん、裁縫だってお手の物。
女子の中じゃ一番女子力が高いって有名なほど。
俗にいうギャップ萌えって、このことを言うんだろうなぁ。
「失礼しやす! 渕脇柴乃さん! 姫野様が国語の教科書を貸してほしいとのことで、受け取りにまいりました!」
そんな時、だった。
いかにも柔道部っぽいがたいのいい男の人が、私に向かって話しかけてきた。
その人は私の答えを待っているかのように、微動だにしない。
私が何も言わないでいると、あんちゃんがその男の人を見ながら一言。
「って言ってるけど、貸してあげないの?」
と呆れ気味につぶやいた。
「はぁ? なんで私が」
「だって柴乃宛てに来てるんだよ?」
「じゃあその姫野様に言っておいて。貸してほしけりゃ自分で頼みに来なって!」
「つれないなぁ~そんなんだから、友達できないんだよぉ~?」
こ、この憎たらしい声は……!
「ヤッホー♪ 来ちゃった♪」
「……姫野」
「おねがぁい、今日発表なのぉ。貸してくれたら、姫野助かるなぁ~ね、いいでしょ? お・ね・え・ちゃん♪」
隣のクラスに所属する、渕脇姫野。私の双子の妹だ。
外見は極めて目立った差がない、一卵性だ。
双子って息ぴったりだよね~とか、仲めちゃくちゃいいよね~とか、そんなの表面上で見ただけ。
私たちは、全然違う。そっくりなのは、外見だけだ。
「来るんだったら、最初から自分で頼みに来なさいよ。わざわざ男子に来させる意味ある?」
「違うよ~姫野がいこっかな~ってしてたら、勝手にこの子が飛び出しちゃったの♪ も~いいっていったのにぃ」
「……またそんなこといって、いいように使っただけでしょ?」
「違うよぉ〜下僕のみんなにとって、姫野に尽くすのが大好きなだもん♪」
これが渕脇姫野。これが私の妹。
彼女にはたくさんのファンがいる、私と同じくらいかそれ以上かはわからないけど。
男自体を毛嫌いしている私と違って、彼女はファンの男全員を「下僕」としてこき使っているらしい。
こんな性格悪い奴に、どうしてここまでするのか私には謎だけど。
「もうすぐで授業始まっちゃうなぁ~貸してくれないっていうんならぁ……この前家でお姉ちゃんが言ってた愚痴、先生に言っちゃおっかな~?」
「わ、分かったわよ! 言われなくても貸したあげるわよ!」
「さっすがお姉ちゃん! じゃあまたおうちでね~♪」
姫野は狂喜ともいえる笑みを浮かべ、その男子と去っていく。
嵐が過ぎ去ったかのように静かになった私の肩を、そっとあんちゃんがドンマイという風にたたいてくれたのだった。
(つづく!!)
ついに新連載、開始となります!
ちなみにタイトルの和訳は主役でもある、双子姫
になっております。
略称的な感じで浸透してもらえるとありがたいです!
次回も双子が大活躍? です!