~鬼灯の夢~8
研之介は手頃な長さの竹を見つけ、腰の刀に手をかけた。
「ふっ」
息を短く吐いて斬りつける。パチンと鞘に戻すと竹が地面に落ちた。切り口は地面に置くことを考えてまっすぐに斬った。
「お見事お見事」
望月が手を叩いた。
「いや、これしか能がなくて」
「実に美しい切り口だ」
望月は竹の切断面に手を置いた。
「かなりの修行をなさいましたか」
「まあ子供のころからやってましたので」
信吾も近寄って切り口を撫でた。
「おいちゃん、すごいねー。おいらもできるようになる?」
「なんだ、信吾は侍になりたいのか?」
「んー」
信吾は首を傾げた。
「わかんない。さむらい、おもしろい?」
研之介は思わず望月と顔を見合わせた。
「ははは、面白いかどうかで決めたわけではないからなあ」
「信吾も学んでいれば自分がなにになりたいか決めることができる」
研之介は少し離れたところに立っている夏鈴を振り向いた。
「夏鈴は大人になったらなにになりたいのだ」
「わっちは……」
夏鈴はうつむいて足の指先をもじもじと動かした。
「わっちはわからない……大人にならなくてもいい」
廓で育った夏鈴は大人の裏や暗い部分ばかり見て育ったせいか、大人に対して否定的だ。未来に希望をもたせることが自分の役目なのかもしれない、と研之介は思った。
「さあ、家に帰って七夕飾りを作ろう」
研之介は竹を肩に背負った。わさわさと揺れる葉に信吾がじゃれつく。
「たんざくいっぱいさげようね」
四人で再び町中にはいったとき、急に望月が立ち止まった。さきほどと同じだ。こわばった顔で正面を向いている。
前からは子供たちが数人歩いてきていた。ほおずき市で買ったのか、大きなほおずきの鉢植えを持っている。
縄でくくられたそれを二人の子供が一緒に持ち、うんうんと汗を流しながら運んでいた。周りの子供たちがそれを囃し立てる。
結局望月は子供たちが通りすぎるまで、固まったままだった。
「……望月どの」
研之介が呼ぶと、望月は大きなため息をついた。
「いや、まったくお恥ずかしい……気がつかれたかもしれぬが……」
「ほおずき、ですか?」
「左様―――」
望月はゆっくりと歩きだした。
「拙者は夏が嫌いなのです。夏になればあのように家々の戸口にほおずきが置かれる。拙者はほおずきが嫌い……いや、恐ろしいのです」




