~鬼灯の夢~7
通りを抜けて脇道に入る。そこにもいくつかの店が出ていた。
たらいの輪を直すもの、竹ひごをくんでざるをつくるもの、風鈴の絵を描くもの……ほとんどがふんどし一丁の裸同然で仕事をしている。
その前をやはり裸の子供たちが「わあっ」と駆けていった。
青あざのついた子供の尻を見送っていた研之介は、望月が立ち止まったことに気づかず、うっかりその背中にぶつかってしまった。
「これは失礼―――」
慌てて謝ったが望月から返事はない。背後からその横顔を覗き込んで驚いた。
望月がまるで死人のように青ざめ、ぶるぶると震えていたのだ。
「望月どの?」
望月はまっすぐに前を見ている。研之介はその視線を追ったが望月をそのように驚かすものは見つからなかった。いや、驚かすというよりは怖がらせているようだ。
「望月どの!」
少し声を強め、肩に手を置くと、望月の身体が激しく震えた。
「―――ああ、いや、すまぬ」
望月はぎこちなくうなずき、やがてゆっくりと歩きだした。その身体が右によって来る。どうも左になにか避けたいものがあるようだ。
研之介は左側を見た。
包丁を研いでいる男がいる。ござを編んでいる姉妹がいる。猫ののみとりをしているばあさんがいる。軒下に鈴虫を入れた虫かごをつるした家、七夕飾りを置いている家、ほうずきの鉢を置いた家―――
なんのへんてつもない、夏の町の風景だ。
望月はしばらく歩くと、はあーっと長いため息をついた。息を止めていたようだ。
「望月どの、大丈夫ですか」
「ああ……大丈夫、もう平気です」
望月は額を手でぬぐった。暑さではない汗をかいたようだ。
「川はこちらです」
町をしばらく行くと唐突に家並みが切れ、広い道に出た。すぐに水の匂いがした。
「ほら、あそこです」
望月の指さすほうに一群れの竹林が見える。日差しの中に濃く緑を浮かせていた。
林に入ると空気がひんやりとした。足元に落ちている葉は湿っている。鳥の声もなく妙に静かで、ただサラサラと葉ずれの音だけがした。




