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~手の届かない花~18

 伊丹屋の台所では、逃げようとする黒鼠の一党と佐々木研之介の激しい戦いが繰り広げられていた。

 すでに二人の男が斬り伏せられ、血を流して呻いている。

 研之介は刀の峰で叩いたり、浅く斬りつけたりして動きを止めていた。

「えやあっ!」

 一人が匕首(あいくち)を腰だめにして突進してくる。それをよけたところにもう一人が振りかぶって襲ってきた。

 刀でその刃を跳ね上げ、空いた胴に峰をぶち込む。男はぐうっと呻いて胃液を吐き出した。

「ちくしょう」

 匕首を構え直す相手に、研之介は刀の刃を横にして目の前にかざした。

 突然相手は匕首を投げつけ、逃げだそうとした。研之介は匕首を叩き落とすと、その背を追った。

「いかせねえ!」

 その男との間に別な男が割り込んだ。お(かしら)と呼ばれていた男だ。

「どうして俺たちが来ることを知ってやがったんだ」

 お頭は背にくくりつけた長脇差を抜き、手下を庇うように両手を広げた。

「おまえたちの誰かが不用意に口を滑らせたのさ」

「まさか」

「耳はどこにでもあるぞ、たとえば寺の床下とか」

 お頭の後ろで男がはっとした顔をした。

「その手下は思い当たるふしがあるようだな」

 お頭はちらっと手下を見た。

「てめえ……」

 だがお頭はそれ以上言わず、長脇差(ドス)を握り直した。

「獄門台に送られてたまるか、てめえを叩き斬って逃げ延びてやる」

「どうかな」

 研之介は剣を八双に構え、引きつけた。刃をチャキリ、と峰から戻す。

「抵抗もできない弱きものを殺すだけの外道には、負ける気がせん」

「ぬかせっ」

 お頭は長脇差を振り回した。研之介はその刃を右に左に軽く受け流した。

「おかしらっ」

 手下が研之介の動きを封じようと飛びかかってくる。それをひらりと避け、腰を蹴飛ばす。手下は頭からかまどにつっこんだ。

「ぶっころすっ!」

 叫びながらつっこんできたお頭の体を下から切り上げる。帯と着物がぶっつりと切れ、剣風が眉毛をそよがせた。

 研之介はぴたりと切っ先をお頭の目の前につけた。

「黒鼠が裸鼠になったな」

 へなへな、とお頭が腰を落とす。長脇差が手から落ち、カラリと軽い音を立てた。


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