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~手の届かない花~11
家に戻って横になった研之介は、そのまま夕方まで寝てしまった。
気がつくと西日が長く部屋の中に入りこんでいる。
「しまった、寝すぎた。これでは夕飯を食ったらすぐにまた伊丹屋に行かねばならん」
井戸端で顔を洗っていると夏鈴と信吾が戻ってきた。
「おいちゃん、おかえりー」
信吾が飛びついてくる。昼間にたっぷり遊んだ体は汗ばみ、熱かった。
「おかえり。よく遊んだか?」
「あしょんだー」
「そうか、えらいぞ。子供は遊ぶのが仕事だ」
「ちっとも儲からない仕事でありんすがねえ」
夏鈴が笑う。
「おまえも遊んだか?」
研之介の言葉に夏鈴は肩をすくめた。
「わっちが子供と遊ぶわけありゃあせん」
「おまえな、そんな態度だと友達ができないぞ」
「別にいりゃあせん」
「そう言うな。子供の時の友達は一生の宝物だぞ」
「おいらともだちいるよー」
信吾が研之介の袖をひっぱる。
「よっちゃんにおそめちゃんにたろすけちゃん。それにたいちにいちゃ」
「そうか、いっぱいだな」
「うん。でもたいちにいちゃ、きょういなかったー」
「太一が?」
研之介は夏鈴を見たが、彼女はつんとすまして部屋の中に入っていった。
「じゃあ、今日は夕飯は三ツ輪で食うか。太一がいるだろう」
「うん、たいちにいちゃのあぶぁげ、おいちいよ」
信吾は満面に笑みを浮かべた。




