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~手の届かない花~4

  食事を終えたあと、約束通り、鍋釜、米、味噌を買うために、研之介は夏鈴と信吾を連れて町へ出た。

 情けないことに、そういったものなど今まで買ったことがなかったので、すべて夏鈴任せになってしまった。

「ーーああ、そうだ」

 味噌を吟味している夏鈴を見て、研之介はふと思いついた。

「おまえたちの着物がいるな、うちには子供用のものがないから」

 その言葉に夏鈴がぴくんと反応する。

「金がないのでな、古着でいいか?」

「……わっちにも着物を?」

 おそるおそるといった風な夏鈴を研之介はいぶかしげに見た。

「当たり前だろ。たくさんは買えないが、好きなものを選ぶといい」

 夏鈴の顔がぱあっと明るくなる。それを見て、なるほど女の子というのは着物が大切なのだな、と思う。

 思い出してみれば義母も毎日着物をとっかえひっかえ着ていたし、呉服屋も頻繁に出入りしていた。女の機嫌をとるにはこれが一番なのかもしれない。


 古着屋の店先にくると、夏鈴は竿に下がっている着物を熱心に見始めた。信吾は興味なさそうにあくびをしているので、店のおやじに適当にみつくろってもらう。

 夏鈴は手鞠模様の着物の袖を持ち、うっとりとそれを手で撫でていた。

「……これ、よござんすか」

 しかし、おずおずと差し出したのは、地味な絣の着物だった。

「これでいいのか? 向こうの手鞠模様の方が新しいようだぞ?」

「あれは値段が高ぅおざんす」

 研之介は絣と手鞠模様の着物に縫いつけられている値札を比べてみた。確かに手鞠模様の方が高い。だが、

「さほど変わらん。もしこちらが好きなら買えばよい」

 研之介は色鮮やかな手鞠模様の着物を夏鈴に当ててみた。薄紅色の地色が夏鈴の白い肌によく映えてかわいらしい。

「うむ、こっちの方がよいな」

 夏鈴の頬がぽっと赤くなった。それを隠すようにあわててうつむく。

「べ、別にこんな着物ちぃとも欲しくはござんせんが、主さまがそうおっしゃるなら、着てやってもようござんす」

 早口で言う。

 生意気な言い方だったが、真っ赤になっている顔はとても愛らしかった。

 妙なところで意地っ張りなのだな、と研之介はおかしくなる。

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