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~夏のしらべ~12

   五



「どうもお疲れさまでした」


 与ノ助は研之介と紋次を自分の部屋でもてなした。

冷たく冷やした酒に魚を出してくれる。紋次は「うめえうめえ」と遠慮なく食べたが、研之介は魚のきれいな肌色を見ると、胸がつかえて食べられなかった。酒だけを手酌で飲んでいる。


「子供たちは?」

「全員風呂にいれて休ませてます。明日にはみんな家へ帰します」

「世話をかけるな」


 与ノ助はゆったりと笑った。


「いいえ、これくらい。使えるものは使って補い合う、と研さんがおっしゃったじゃないですか」

「うむ」

「だが、家へ戻れないやつもいるな」


 紋次の言葉に与ノ助はうなずいた。


「信吾ですね」

「伊佐吉のところへ帰すわけにはいかん」


 研之介は猪口を膳の上に置いた。


「あやつは子供を育てる気などないのだ」

「そうですね」


 与ノ助もため息をつく。


「だが、どうする」


 紋次は二人を見ながら言った。


「琴菊の文は全部で七通。あとの三人を探し出して引き取ってもらうか」

「……いや、」


 研之介は膝に手を置くと背筋を伸ばした。


「俺が引き取ろうと思う」

「えっ」

「ほう」


 研之介は紋次と与ノ助を見つめた。


「あの百姓家で、信吾は迷わず俺に抱き着いた。その時の信吾の重みや熱……。なんと言ったらいいのかわからんが、これを失ってはいかんと思った」

「父親としての情か?」


 紋次が皮肉っぽい笑みを浮かべる。


「正直、いい父親になる自信はないし、本当のところわからんのだが」


 研之介は照れて頭に手をやった。


「漢気【おとこぎ】というやつかな。それに、この三人の中では俺が一番自由がききそうだし」

「ああ……」


 与ノ助はうなだれた。


「琴菊さんの子ならあたしだって引き取りたいと思いますよ。でもおとっつあんの目の黒いうちは許してくれないでしょうね」

「俺のところはガキを育てるような場所じゃねえしな」


 紋次が苦笑する。


「二人とも、琴菊の子のことが気になったらいつでも俺のところに来てくれていい。兄弟だからな」

「はい、なにか必要なものがあったら遠慮なくおっしゃってください」


 喜んでうなずいた与ノ助とは逆に、紋次が首を振る。


「俺はいかねえよ」

「そんなこと言うなよ、寂しいじゃないか」


 研之介が徳利を持ちあげ紋次を促した。紋次は黙って酒を受ける。


「ところで夏鈴ちゃんはどうなさるんです」

「ああ、そのことだが……さっそく与ノさんに頼みがあるんだ」



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