青藍の始まり
今回は会話文がありません。
ご了承ください。
私は幼少の時から周囲の注目を集めることが得意だった。
全てを完璧にこなし、母から美容のことを叩き込まれたかいもあり、男女問わず、人の心を掴んでいた。そして、欲しいものは、何でも手に入った。人も物も人心も。
でも、そんな日常に倦怠を感じるようになった私は、『手に入らないもの』を探すことにした。
それが、小学五年生の時、見つけられたのは、幸運だったかもしれない。
季原秋斗という男の子は、私と同じように日常に飽きていただけでなく、『人』『物』『人心』にすら無関心でいて、私にとってそれは魅力的だった。
どんな人も私に好意を持って近づいてくるのに、彼は好意も悪意もなく、近すぎず、遠すぎずの距離感を設けている。
私がその距離感を縮めるまでは、だけど。
わざと消しゴムを秋斗の近くに落としたりして、私という存在を認識させることに専念した。
小学生の間に、兎に角、『興味のない他人』から『知り合い』になっておくというのが目的。
※
中学生になって、私から秋斗に話しかける頻度が増えた。
他愛もない話題や生徒会としての相談など口実が出来れば何でも話した。
秋斗は少しずつではあったけれど、徐々に私との会話を楽しんでくれるようになって、それが凄く嬉しかった。
だけど、秋斗は二年生になってから急激に変わってしまった。
俗に言う、中二病。妹らしき女の子と訳のわからないことを行うようになってしまった。
その兄妹の間に私の存在が無いのは苦しかったけど、それでも、私は秋斗と一緒に居たくて、彼が振ってくれるようになった面白味も分からない話題に笑顔で頷いていた。
それなのに、いつからか、知らない女が秋斗の近くにいることが増えた。
その女は秋斗の振る話題に困惑した様子を見せず、むしろ喜んで熱中している。
秋斗も私といるよりその女といる方が楽しそうだった。
胸が苦しい。吐き気がする。気持ちが悪い。
嫉妬などは、見苦しいと分かっていても抱いてしまうものならば、受け入れてしまえば楽だ。
そう認識した後から、私は秋斗を自分のものにする行動を早急に起こした。本当は、ゆっくり時間をかけてやる予定だったけれど、秋斗があの女のものになる前に私が掌握するには仕方なかった。
秋斗の嫌がることをしている自覚は当時の私に無い。有るのはただ、秋斗に私という存在を認識させ、何でもいいから感情を抱かせたいという、欲求のみ。
支配欲、独占欲にも似た感情が湧き上がる私を秋斗は受け入れようとしてくれたが、叶わなかった。
それもその筈だ。私は秋斗の嫌がる顔に喜びを感じていたのだから。こんな愚かな私を受け入れられるほど、当時の秋斗も寛容ではない。
それでも、秋斗は責めることをせず、拒絶だけした。私には辛いことだが、今に思えば、良かったのだ。
拒絶だけで済んだのだから。
私は秋斗を愛することをやめられない。
私を受け入れられるのは秋斗だけ。秋斗を一番愛しているのは私。
誰にもこの不変の関係を断てはしない。
そう。誰であっても。
秋斗でも。
次回は三月七日の午前一時です。




