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季原兄妹の日記  作者: 表 裏淳
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バレンタイン特別話〈ぼくらのギリギリ発言〉

 お話の腰を折るみたいで申し訳ないけど、ひと言言わせて下さい。


 「二回目のバレンタインとか、地獄をぼくに見せたいのかな~作者は?」


 ぼくは、家の自室のベットでゴロゴロしている中、そう呟いた。その呟きをリツイートしたのは、本編では喧嘩中のまこちゃんだ。机の椅子に乗っかり、クルクル回っている。


 「アキ……あんまりそういうことは言わないで……。あと、そういうことも考えないで。幾ら、僕らのお話がコメディでも限度があるからさ」


 「へ~、真、ぼくの考えわかったんだー。流石だね。本編じゃ、喧嘩中だけど」


 「近いうちに仲直りするから、今は言わないで」


 「真も返しとは言え、あんまり言わない方がいいんじゃない?」


 「言わせてるのは、アキだよ……。それより、バレンタインなんて、あんまり深く考えない方がいいんじゃない?」


 「ハァ……リア充は余裕でいいですね。ぼくはね……家で過ごすバレンタインは特別嫌いなんだよ」


 「遠い目をして、どうしたのさ。何か嫌な思い出でもあるの?」


 「言わなくても、すぐ分かるよ……」


 「すぐ?」


 遠い目を続けて、起き上がったぼくには聞こえる。ドタバタと階段を駆け上がる音が。


 「兄上ー!! チョコ作ったから食べてよ!」


 扉を壊す勢いで蹴り開ける愛妹。両手には等身大の人型のチョコ。どことなく、ぼくに似ている。

 状況を察した親友は、等身大チョコから目を背けた。


 「アキ……わかったよ」


 「なら、よかった。冬海、その巨大チョコ、真にも分けてあげていいかな?」


 「え~、兄上に食べてほしいのに……」


 「凹まないでよ。いくらぼくでも、一人じゃ食べきれないからね。なんなら、冬海もどう?」


 「あ、兄上を……食べる……」


 顔をどんどん真っ赤にしていく冬海はなにやら、妄想しているようだ。え? それが目的じゃないの。


 「そ、そういうことなら……」


 「なにがそういうことなの? アキを食べるならいいってこと? てか、どういう意味で食べる気のなさ?」


 「まこちゃん、ツッコムなら、もっと勢いよくスムーズにやらないとね」


 目を細めて愛妹を見る彼にぼくは苛立ちを込めて鋭い視線を向ける。すると、胸板(むないた)を背もたれに押し付けて反発してくる。


 「アキの妹相手だから遠慮してるの! 僕の気遣いをちゃんと分かってよ!」


 自分のせいにされたのが気に(さわ)ったのか、冬海のまこちゃんに対するあたりがきつくなる。


 「真さん、結構うるさいです。静かにしてください」


 「あ、ごめんね。冬海ちゃん」


 「兄上と一番楽しく会話できるのは、冬海です。兄上の(のど)を無駄に乾かさないでください」


 「とんだブラコンだこの子……」


 「真は黙って、チョコ食べてなよ。冬海との時間を邪魔しないで」


 「あれ? シスコンだったんだ……僕の親友…………」


 小さな声で「相性ばっちりじゃん……危ないよこの兄妹」というのは聞き流す。そこまで、干渉されたくない。そもそも、真は茜さんと一線すら超えてないチェリーちゃんのくせに。


 *


 新聞紙を下にひいて、等身大チョコをポキポキ折って、食べているとお客さんがきたみたいで、ベルがなった。


 「冬海出てきて」


 「兄上が出たほうがいいよー」


 「面倒だから、まこちゃんよろしく」


 「なんで、僕……。ここの家主は君じゃないか」


 「ちぇ……わかったよ」


 指先〈チョコ〉を(くわ)えながら、立ち上がって部屋を出て行く背後で聞こえた声。


 「ニシシ……うまくいった」


 「え? なにその怪しい笑い」


 冬海の何か企んでいるときの笑いとそれを見て引いているまこちゃんの声が。


 *


 「はいはーい。どちら様?」


 二階から階段を降りて玄関に手をかけると外から聞き慣れた明るい声質が。


 「せ、先輩! これ、受け取ってください!」


 「っ!? ビックリした……柚紀ちゃん……」


 デジャヴュに見舞われつつもぼくは目の前に差し出されている赤い小包(こづつみ)を受け取る。


 「ありがとう。嬉しいよ、わざわざ来てくれるなんて」


 「こんなイベント逃せませんよっ! ……冬海ちゃんの手引きのおかげですし」


 最後の部分が聞き取れなかったけど、意気込んでいることだし突っ込まないであげよう。


 「まあ、上がってよ。今、冬海が作った特大チョコのバイキングやってるから」


 「はい。先輩のアソコとアソコはユズが頂きます!」


 そう言って、小走りで階段を駆け上がっていく後輩に疑問が一つ。


 「あれ? ぼくモデルの人型って言ったかな?」


 言ってない。断じて。冬海が言ったのかもしれないけど。ていうか、冬海の招待だろう。

 納得して、ぼくは気が付く。


 「あ! 人型ってことは……」


 冬海は凄く器用な子……。もしかして、細部に渡って完璧に作られてるんじゃ……?


 ぼくはズボンを確認しただけで、それが脱がせられる(・・・・・・)ことまでは想像してない。


 「アソコってどこのことぉぉ!!」


 慌てることが最近、増えた……。

 階段を一段飛ばしで駆け上がるがぼくの部屋で目にしたのは、真っ青な顔をして窓の外を眺めているまこちゃんと、頬を蒸気させて、顔と頭にかぶりつこうとしている女子二人だった。


 ああ、なんかホラーでグロいね……。まこちゃんグロ苦手だもんなー。




次回は二月二二日の午前一時投稿予定です。

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