表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
13/14

知らない自分

「簡単に言うと、お前はおかしかったんだよ」

「簡単に言いすぎだと思うよたっちゃん、それにおかしいと言われると傷つくよ」

「そもそもかいつまみすぎよ、せめてたつやさんが合流したところくらいからは話さないと」

 僕が気を失った理由を尋ねたのに何故か馬鹿にされた気がしないでもない返答をたっちゃんにもらったが、イースさんがたっちゃん達と合流したところから話してくれることになった。

「私たちとリーダーの間に沢山のオークが割り込んできたでしょ?それからその間はどんどん開いていってしまったの。私たちがなんとか身近にいるオークを倒してあなたがいるであろう方向に近づいていくと大きなオークファイアターとあなたが戦っているところに遭遇した訳」

 彼女は話を続ける。

「あなたとオークファイターの周りは赤い壁で覆われていてその状況がボス戦だってことはアリサに聞いたわ、あなたは何故かたった一人でボスと戦うことになっていたの。覚えてる?」

 覚えてる訳ないです、というか何故ボスとタイマン貼っているのだろうその時の僕は。

「そこにタツヤさんのパーティが通りかかったって訳」




 その赤い壁は何度叩いてもびくともしない、どうしてもこの向こう側にいかにと彼は死んでしまう。

 私たち四人はその壁を叩きながらその中にいる彼、カナタの名前を呼んだ。

「なんでアイツは気付かないんだよ!」

「この壁は言葉も遮断するみたいです」

「それよりもなんであんたは一人でそんなとこにいるのよ!」

「カナタさん!」

赤いながらも透けているその壁の向こうではすでに戦いが始まっていてオークファイターという普段の体格よりも二回り近く大きなオークがカナタ目がけて巨体で突き進む、カナタはそれに盾を構え応戦するがその巨体から繰り出される拳を止めることができず大きく吹き飛ばされた体は地面を二度三度跳ね転がり止まる。彼はゆっくり体を起こすがHPはすでに半分を切っている。

 メイは杖を取り出し回復魔法の詠唱を始める、しかしその魔法はカナタに届かず赤い壁に吸収されてしまった。しかし彼女はあきらめず再度詠唱を開始する。

「無駄だよ、その壁は何も通り抜けることができない」

 四人は振り返った、こんな森の中自分たちだけだと思っていたのに他にも人がいたなんて思いもしなかった。

 振り向いた先にいたのは四人パーティ、一人男性で残りは三人は女性、装備が自分達のものより明らかに華やかで希少なものだと思われた。


「そもそもボスとタイマンするなんて自殺行為以外なんでもないでしょ」

 男性はそう言った、表情は見るからに呆れている。

「私たちオークに襲われて離れ離れになったんです、なんとか合流しようと思ったら彼はボスと戦っている状態で」

 イースは簡単に状況を説明した、この状況を説明したところで好転する訳でもない、この男性のいう通りなら同情を誘うだけだ。

「カナタさん!」

 アリサが叫んだ、その先の彼は再度オークファイターの拳を受け止めきれず吹き飛ばされている。同じように地面の土や枯葉を舞い散らせ何度か跳ねてから止まった。

「あんた今カナタって言ったか?」

 先ほどの男性がアリサに尋ねた、口調は変わっており呆れていた顔は少し怒ったようになっている。

 男性はカナタのステータス画面を確認してからカナタ自身のを見た、すぐ様赤い壁に飛びつくように張り付く。

「おいカナタ!俺だ!タツヤだ!なにしてんだよお前は!ばかやろう!」

 急に態度の変わった男性【タツヤ】にその場にいる全員が驚いた、彼のパーティの面々ですら彼を見る表情が困惑している。

「一人でボスに勝てるわけないだろ、ばか!もうなにしてんだおまえは!」

 壁を殴り蹴り罵声を浴びせる、それでもその壁の前に無力だった。

「俺をなめるんじゃねーよ!」

 タツヤは腰の鞘から刀を抜いた、日本刀に近い形状をしていてその輝きは鋭く力強い。

「何やってのよあんた!その壁は絶対壊れないって!」

「やってみなきゃわかんねーだろ!【龍破一閃」!」

 彼は手に持つ日本刀【覇道弥勒】に力を込め一気に振り下ろす、それと同時に刃から凄まじい衝撃波が放たれ赤い壁に激突した。

 轟音と衝撃がその場を支配する、土や枯葉が大きく舞視界を奪う。

 彼の一撃はモンスターに対しては相当な威力を持つことはその大きな穴を見れば一目でわかる、ただし今はあまりにも無力でその赤い壁には何の意味ももたない。

「畜生!ふざけんな!」

 再度彼が刀を振り上げたがその瞬間彼のパーティと思われる女性三人が取り押さえた。

「離せよ!ダチが待ってんだよ!」

「無理だって言ってるでしょ!何したってこの壁は壊れないのよ!」

「でもこの壁開けないとカナタが死んじまう、助けてやらないとダメだんだよ!」

「とりあえず落ち着きなよたっちゃん!」

 タツヤの腕と体と脚をなんとか三人の女性は抑え込む、それでも彼は必至にもがき続ける、

 彼らの押し問答を見ていたイースとドレッドとメイだったが一人アリサだけは違うものを見ていた。

「み、皆さん、あれ」

 彼女の指さす方を皆が見た、その先は赤い壁に囲まれたカナタの殺戮ショーが行われているはずのフィールド。しかしそこでカナタは不気味なほどしっかり立っていた。

「もうHPゲージないじゃない!」

 カナタのHPゲージはほぼ0だった、次どのような攻撃を受けたとしても死が待っている。そんな中で彼は背筋を真っ直ぐにし両足でちゃんと立っていた。そして目は据わりその口元は笑っていた。

 不気味な感覚、いつものカナタでないことをアリサ達とタツヤは感じた、いつもはただただ優しいその彼が今ではただ不気味としか言いようがない表情をしている。

 オークファイターが駆け出す、地面を響かせカナタに向かって一直線。力一杯握り込まれた右手後ろにし左手は前に構えただその冒険者を亡き者にする為一気に近づいた。

 カナタは真っ直ぐだった姿勢を一気に低くする、途端に彼が持っていた龍の腕が”開いた”。

 四つの爪のような部分が開き握っていた手を開くように展開する。その形はすでに鎚ではなく別物。

 地面を響かせ駆け寄ってきたオークファイターは拳をカナタに叩き付けた、しかしカナタはそれをギリギリで真横に避けた、足を思い切り踏ん張り体勢を立て直した後カウンターのように手に持つその武器をオークファイターの右腕に叩き付けた。大きな爪で引っ掻くような形の攻撃だが引っ掻くどころではなく


 ”抉り取った”。

 

 右肘辺りに命中、それと同時にオークファイターの筋肉を抉る。真っ赤な血が吹き出し右腕の面積は半分ほどになり力なく垂れ下がった。悲鳴を上げるオークファイターはカナタの方に向き直り左手の拳を強く握る、その手を一度引き再度カナタに殴りかかった。

 しかし先ほど同じようにカナタはそれを避けカウンター、龍の爪を振るった軌跡はオークファイターの左手を縦向きに走り手の甲から肘辺りまでの部分を引きちぎった。

 自慢の腕は使いものにならず傷口から流れ出る血液はまったく止まる気配がない、跪きそしてそのまま前のめりにオークファイターは倒れた。

 その状況を見ていた八人は無言だった、口から言葉が出ずただ目の前で起こった異常事態に反応しようと試みる。そもそも何故あのような生々しい描写がされるのか、本来なら切り傷のようなエフェクトが出るだけで実際腕を切り飛ばすような部位破壊はなく武器破壊しか適用されない、しかし目の前で起こった惨劇はその類に当てはまらない。肉が抉られ血が噴き出すのだ、これまでなかったその現実の世界の感覚が心の奥底で目覚めるような感覚を感じた。

 カナタは血の池に倒れたオークファイターの傍まで近寄ると龍の爪を大きく振り上げ叩き付けた。途端にオークファイターの体は一瞬大きく動きすぐに収まる、それは止めでオークファイターのHPゲージは0になり体や血液、そして抉り取られた肉片は輝き光になって消えた。カナタの前には勝利を祝ってテロップが出る、それと同時にアイテムドロップが起こり赤い壁も消えてしまった。


 誰も近づけない。

 彼、つまりカナタに誰も近づけなかった。オークファイターを倒した後彼は微動だにせず生い茂る木々の隙間から空を見ていた。

「、、、カナタさん?」

 アリサが恐る恐る名前を呼んだ。それに気づきカナタはアリサの方を見た。

 その表情に先ほどのような不気味さも恐怖も感じない、ただ生気の抜けたような疲れ切った顔をしている。ただぼーっとしていてアリサに気付いてはいるものの明確な反応はしていない。

「おーい、カナタ。俺だぞ、タツヤだぞ」

 タツヤも彼に話しかけた、先ほどの彼を見ているせいで素直に再会を喜べない。長年の友人に会えたというのに彼の体の一部は拒否反応を起こしている。恐る恐る八人はカナタに近づいて行く。

 そんな彼らの前でカナタは苦しみだした。手に持っていた龍の腕を地面に落とし口元を抑える。目を見開いたと思うと前のめりになった彼は吐血した。抑えていた手の隙間から血が噴き出し、そのまま膝魔づいて何度も何度も咳き込み血を口から吐き出した。

 彼の急変に誰も動けなくなった、何が起きているのか誰もわからずその状況でのベストな選択を見いだせない、彼が吐血した理由も苦しみ咳き込み自分の口から吐き出された血の池に倒れ込むその状態を見ることしかできなかった。

 近づいて助けてあげたい、でも彼は先ほど笑いながら大きなモンスターを倒したのだ。恐怖に駆られる八人だったが率先して動いたのアリサだった。

 彼女は近づき彼を抱え起こした、顔から足まで自分の血まみれになった彼は肩で息をし時折血液を飲み込み再度咳き込む。苦しむ彼の名前を呼びながら背中をさする。

「誰か助けてください!」

 涙目で彼女は訴えかけた、原因がわからない今誰かに願うことしかできない。

「回復魔法を試します!」

 一番早く行動したのはメイだった、すぐ様【ヒールレイ】をカナタに向け詠唱を開始する。その魔法はカナタの体を包み込み彼のHPゲージをほぼ全開まで回復させる。肩で息していたカナタは少しづつ正常な呼吸を取り戻し始めそのまま眠った。

「寝たのか?」

「みたいですね」

 ドレッドの問いにアリサが答えると少し離れていた仲間たちはカナタの元に集まった。

「これからどうする?」

「とりあえず別の場所に移動しようか、オークがまた来ると厄介だし」

 ドレッドがカナタを背負い他の者たちがその周りを固めた。

「アイテムはあんたが拾っておきなよ」

 イースに言われアリサは断った、しかし「古株のあんたが今のリーダーだよ」と続けて言われひとまず預かるという形でアリサがドロップしたアイテムを仕舞った。


「アレはあそこに置いといていいの?」

 森から少し開けた広場までの道中ヒナギクはタツヤに問いかけた、アレとはカナタが持っていた両手鎚【龍の腕】のことである。

「アレはいいんだよ」

 カナタが気を失った後あの武器は元に戻っていた、つまりカナタ自身の影響で変形したのか武器自体の影響でカナタがおかしくなったのかどちらかしかない。

 そして誰もタツヤの言葉に反論しかなかったことが全員の総意である。

 

 その翌日カナタは目を覚ました。



久々長文

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ