表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/23

8話

 活動報告に書かせていただきましたが、ツイッター始めました。興味のある方はちょろっと見に来てくださいな。


 さて、今回からやっと甘みが出てきますよー。


 ではでは、どうぞ!

「ひなた」

「おはよう、千佳!」


 家の門を出たら待ち構えていた人物に、しかめっ面になる。


「なんで、朝からここにいるのよ」


 土曜日の、朝からひなたの顔を見るなんて。

 清々しい気分でいたのに、最悪よ。


「え? だって千佳、今日は出かけるんだろ?」

「……何故、そのことを知っているのかしら」


 当然のように答えられたけれど、私、あなたに教えた記憶はないわよ。


「やっぱりひなた、あなたストーカー――」

「違うって! なんでことあるごとにストーカーにしたがるんだよ!?」

「違うのかしら?」

「違う!」


 あらそうなの。じゃあ何故よ。

 顔を真っ赤にしていたら、さもやましいことがあるようにしか見えないわよ?


「母さんが千佳のおばさんと話してるのを聞いただけだって」

「それって盗み聞きよね」


 母も勝手に人の行動を話さないでほしいわ。

 まぁ、無理よね。なんでもかんでも話したがるもの、ひなたの母親相手だと。


 こういうとき、家族ぐるみの付き合いって厄介だわ。


「それで。貴重な朝を台無しにした理由は」

「台無しって!」

「なにかしら、盗聴主さん」

「……なんでもない。だから、そのさげすんだ目をやめてください」


 ならいいのよ。

 ひなたもわざわざ言い返さないでほしいわ。


「これ」


 昨日と同じ見た目の花を渡してきた。花の色は赤みがかった青。紫、といってもいいわね。


「今日はちゃんとアサガオをつんできたからな!」

「……そう」


 でしょうね。今まで同じ種類の花は用意してこなかったもの。


 だからそんなに得意げになる必要はないと思うわよ、ひなた。


「じゃ、渡したからな」

「……え?」


 背を向けて自宅に引き返そうとするひなたに、素で目を丸くしてしまったわ。

 まさか、このまま帰る気なのかしら。


「ついてこないの?」

「え? だって千佳、俺と一緒にいたくないだろ?」


 不思議そうに首を傾げて問い返された。

 ……そうね。なにを聞いているのかしら。これ幸いと流してしまえばよかったのに。


 内心の戸惑いを隠していると、ひなたが笑いかけてきた。


「それとも、ついていっていいのかよ?」


 断るだろうと見え見えで、彼は質問しているようで。

 笑っているのに、悲しそうに見えてしまった。


 ――なによ、その表情。似合わないわ。


「べつに、」


 口が、勝手に動く。


「どっちでもいいわよ。ひなたなんて、いてもいなくても興味なんてないんだから」


 っ!? ……なにを、言っているのかしら、私。

 自らの首を絞めるようなことをわざわざ告げるなんて。

 暑さで頭がくには早すぎるわ。


 困惑する私をよそに、ひなたは先程とは比べ物にならないほどの眩しい笑顔を浮かべた。


「マジで!?」


 一端離れた距離が、また短くなる。

 食い気味に尋ねるひなたに苛立つ。


 なんで、そんなに喜ぶのよ。


 平静をたやすく崩してくる、ひなたが恨めしい。

 どうしてこうも、私のペースを乱してくるのかしら。


 気にくわないわ。

 なんで、私ばかり。


 視線を彼から外して、そっぽを向いた。


「やっぱり、なしだわ」

「えー!? いや、でもいいって言ったじゃん!」

「……」

「な、いいって言ったよな!」

「…………幻聴じゃないかしら」


 なくしたはずのひなたの顔が、横から入ってくる。

 そのニヤニヤした表情、ムカつくわ。


 どうしてそんな嬉しそうなのよ。


「いいって言ったよな!」

「………………そうね」


 意地を張っているほうが恥ずかしいような気もしたので、諦めて肯定してみせた。

 すると全開の笑顔を向けてきたひなたに、心底嫌気がさすわ。


 ああ、嫌ね。

 また、気まぐれにひなたに振りまわされてる。


 いい加減、私に付きまとわないでほしいわ。

 そんなことを願っても、叶わないでしょうけれど。


 苦い感情を、吐き出した。


「ひなた、あなたのことが嫌いだわ」

「うん、そうだな!」


 告げても、ひなたはニコニコと笑う。


「なんでそんな嬉しそうなのよ。まさか、あなた……」

「? なに千佳」


 そう、そうだったのね。


「マゾだったなんて」

「違うし! なに千佳、俺を変態にしたいの!?」


 必死に首を振って大声で叫ぶ姿が無様ね。

 否定したって事実は変わらないわよ。


「べつに構わないわよ、ひなた。あなたが変態であろうと、マゾであろうと、はたまたストーカーであろうと、関係ないわ。嫌いなのは変わらないことだし」

「うん、なんだろ。俺、喜んでいいのか? あと違うから。全部当てはまんないからな」


 遠い目で話すひなた。

 なにが違うのよ。


「だってそうでしょう? ならどうしてののしられても嬉しそうな顔をしてるのよ」

「え、いやそれは」


 言葉を詰まらせて、口をモゴモゴと動かす。そしてあっという間に、さっきと同様のニヤケ顔になってみせた。

 だから、なんなのよ。


「千佳の冷たい反応が、照れ隠しにしか見えないんだって」

「……なによ、それ」


 本当に、なによ。

 ありえないでしょう。そんなはず、ないじゃない。


「目、腐ってるんじゃないかしら? もしくは幸せな頭をしているのね」

「え? そんなことないと思うけどな」


 明るく笑うひなたを、冷めた目でにらんだ。けれど彼は楽しそうにしている。


「やってられないわ」


 背を向けて歩き出す。日本語が全く通じないやからは、放置に限るわ。


「あ、なぁ待てって!」


 慌てて駆け足で追いかけてくるひなたを突き放すために、早足にならないと。

 隣に並ぼうとする彼に、目で文句をうったえる。けれど知らぬそぶりで、満面の笑みで返してきた。


 諦めて特大の溜息を吐いてみせる。



 ――うっかり、ひなたの行為を容認してしまう発言をしてしまうなんて。


 私は、ひなたから離れたかったんじゃないの?

 なのに、何故、それとは真逆の行動をとってしまったのかしら。


 混乱させてくるひなたは、やっぱり大嫌いよ。


 口に出すとまた彼が嬉しそうにしてしまいそうだから、心の中で悪態をついた。

 




 甘み(控え目)でしたが、どうでしたか?

 まだまだカカオ成分多量でジャリジャリのチョコみたいですが、甘くしていきたいと思います!


 今回も読んでいただき、ありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただきありがとうございます!
「ミスキャスト!」
現在連載中です!
気に入ってくれた方はブックマーク評価感想をいただけると嬉しいです。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ