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5話

 引き続きお読みくださりありがとうございます。


 じわじわと日間読者数が上がり、「よし!」と喜んでいます。以後もこのちょうしで毎日更新を続けられるよう頑張ります。



「千佳ー!」

「……」


 もうツッコミなんているのかしら。


 連日、同じ電柱の陰から現れるのが習慣化している幼馴染みは、今日も能天気な笑みをさらしていた。


「え、なんか今ひそかに俺のこと馬鹿にしなかったか?」

「……気のせいじゃないかしら」

「そうだよな!」


 二パッと笑うひなたは、毎日が楽しそうね。


「で。今日は、これな!」

「……トケイソウね」


 花の形が時計の形をしている。見た目から名前をとった植物よね。


「今日は大丈夫だよな! ちぎったりしないよな!?」

「そうね。これだとちぎるのがどこかわからないもの」

「それってわかってたらちぎるってことかよ……喜んでいいのか複雑」


 あなたを喜ばすために受け取るつもりはないのだけれど。そうなら返却していいかしら。


「ちょ!? なんで振りかぶってるんだよ!?」

「優しく包んで潰さないようにはしてるわ」

「いやそういう問題じゃないし!」


 慌てて両手を振って止めるひなたに、気持ちがやや治まったので野球のポーズを中断する。

 そもそもこのまま投げると、セーラー服のスカートが上がって太ももが必要以上に見えてしまう可能性があるのよね。


 腕を下ろした私にほっとしたひなたに、代わりに疑問を投げつけた。


「それで。今日もこのためだけに来たのかしら?」

「うん!」


 元気に首肯をされても。


「そう。ひなた、暇人なあなたとは違って私は忙しいの。あと根本的にいやがらせをしないでちょうだい」

「俺暇人って確定してる!? いやがらせでもないし! なんでプレゼントしに来て会話するのがそうなるんだよ」

「……神様って、罪よね。存在自体を受け入れない物を生み出すなんて」

「物憂げに溜息つくなよ! それに言ってること自体ひどい! オマケになんか漢字変換がおかしかった気がする! 俺人じゃないの!?」

「…………」

「そこで黙るな、千佳」


 そうね、人間よね。きっと。ただ、原始人かもしれないけれど。


「やっぱりすっごく馬鹿にされてるような」

「あら、そんなこと……あるわ」

「せめて否定しろ……?」


 あら、そんなに肩を落としていると脱臼するわよ?


「さ、一通り会話もしたのだから、私は帰るわね」

「だから! 千佳は毎回隙あらば帰ろうとするなよ!」


 まだ、なにかあるのかしら?


「……え、なんで止めた俺が悪いって目で見てんの?」

「だってあなたのこと、嫌いだもの」


 まだ聞き足りないのかしら。やっぱりひなたは天才で馬鹿ね。


「やっぱりなんか毒舌吐かれてる気がするな!?」

「被害妄想ね。……ひなた」

あわれみの目で見るなよ!? って、その手で口隠して震えてんのやめろ!」


 あらつれない。つまらないわ。まぁ、ひなたで面白くなんてならないでしょうけれど。


「さて。冗談はおいておくわ」

「……やっぱりからかってたんだな」


 あらあら、そんなこともわからないなんて。ひなたはやっぱり単純ね。

 だから、人の気持ちとかを推察する能力に欠けるのよ。


「ひなた、私は本当に忙しいの。時間がおしいのよ。あなたに割いている時間なんてないの」

「……」


 期末試験まで数日を切っているのに、雑談なんてしている余裕なんてないわ。

 世間体や安全面を考慮しないで済むなら、歩きながら単語帳を暗記したいほどなの。


 言い聞かせるように言うと、ひなたは私に大きな瞳を向けてきた。


「……俺が嫌いだからか?」

「……」


 ウザい、と思っても口に出さなかった自分自身をめたいわ。 言葉にしたら最後、また面倒な連続質問攻撃を受けたでしょうね。

 この状態だけでも、十分面倒だけれど。


 どう返すべきかしら。……? あら?


 すっかり意気消沈しているなんて。一年前とは違って、期待してチラチラ見てくるなんて行動はしないのね。


 ……もしかしたら。ひなたは本当に「嫌い」と言ったことを、口だけじゃなくしっかりと理解しているの?


「……」


 半信半疑だったけれど、なんだか改めて初めて『そうかもしれない』って感じるわね。


 …………ふぅん。


 返事待ちのひなたに溜息をこぼすと、彼の肩が揺れた。


「あなたが嫌いだとかはこの件に関しては関係ないわ」

「! 本当か!」


 ……だから、これくらいのことで喜ばないでちょうだい。目を輝かせるようなことでもないでしょう? まったく、反応に困る上に苛々するわ。


 それを眉を動かす程度にとどめて、発言を続けた。


「……ただ単にテストが近いのよ。数日しかないから勉強をしたいの」

「そっか!」


 ひなたは笑顔でうなずいた。そしてすぐに、首を傾げた。彼は顔が無駄に可愛いから、こんなことをしても違和感がないわね。だからといって、私がムカつかないかと言えば別問題だけれど。


「でも千佳勉強してんじゃん。それでもするのか?」

「……っ」


 怒りに目がくらんだ。



 ――は?

 ふざないで、あなたになにがわかるのよ!



 全く。全然足りないわ。

 もっと勉強をしないと。私には良い点を取るにはそれぐらいやらなきゃいけないのよ!


 授業を聞いただけで大体把握できるひなたとは違うんだから。仕方ないじゃない!



 無神経すぎるわ。ひなたには考えもつかないのかもしれないけれど。

 殴りたい。いえ、耐えるのよ私。そんなことをしたら手を痛めるだけじゃない。それに、自分のことが余計にみじめに思えてしまうだけよ。


 拳をつくった右手をあげないよう、こらえた。でもどうしても、手が震えるのは抑えられなかったけれど。


 静かに深呼吸を一つ。声色が変わらないように意識した。


「……ひなたなら、必要ないでしょうね。けど私には必要なのよ」

「ふーん……」


 あなた基準で考えないでちょうだい。


 言葉の裏でそう臭わせているけれど、彼には通じないでしょう。

 案の定、私の皮肉を言い返さないで、ひなたはすんなり受け取った。でもすぐに、新たに質問をぶつけようとしない。


 黙ったまま、なにかを考え込んでる。


 ……どうしてなの? さっきまではあれほど端々まで拾ってたじゃない。薄気味悪いわね。


「なぁ」

「……なにかしら」


 私が呼びかけに思わず答えるほどに、今のひなたは気持ちが悪い。


「テストって、一週間後ぐらいには終わる?」

「……は? まぁ、そうね。そのくらいで終わるわ」


 どういう意図かしら?


 困惑する私をおいといて、ひなたは一人でうなずいてる。勝手に納得してないで、話しなさい。


「うん、わかった。じゃあ一週間後な!」

「は? え、ええ……?」

「じゃーなー」

「はぁ!?」


 ちょっと! あいさつだけして先に帰るんじゃなくて、ちゃんと説明しなさいよ!?

 って、あっという間に背中見えなったわね。あの子、運動もできたものね。……チッ!


 それにしても。あの内容だと、しばらくは会いに来ないようにするのかしら。


 まさか、気をつかって?


「……信じられない」


 前までは、自分のわがままをなにがなんでも通したがっていたのに。

 あっさりひなたが引き下がるなんて。


「……あれ、本当にひなたかしら?」


 中身がすり替わってるようにしか思えないわね。


 はっきりと言って。


「不気味よ」


 ……ありえないわ。

 千佳とひなたのかけあいがゆるーくなってきましたね。


 ラブコメをこの作品のタグに加えてもいいのか迷っています。千佳がシリアスなので、作者心境上の境界線ではギリギリのラインです。う、うーん……?


 とりあえず。

 本日も読んでくださり、ありがとうございました!

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