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4話

 この話からやっと千佳がデレてきます。

 やったね、ひなた。千佳の好感度が上がるよ!


 ではでは、どうぞ!

「……またいる」

「あ、千佳!」


 ブンブンと勢いよく手を振るひなたに、頭痛がする。


 嫌いと告げても翌日また会いに来るなんて、この子の学習能力はないのかしら。それとも『馬鹿と天才は紙一重』の生きた例なの?


「はい、これ!」

「……なんだったかしら、これ」


 ガーベラみたいな見た目だけれど、たぶん違ったはずだわ。黄色の花びらの根元は、茶色にわずかに染まってる。私の手のひらよりやや小さいくらいの大きさ。


「カザニアだ! ラザニアみたいで美味しそうだよな!」

「……ひなた」


 その発言はないと思うわ。好感度を上げるために渡す相手にかけるのにふさわしくないわよ。デリカシーとか備わっていないのかしら。


 それにしても。ここまで枚数があると、あれをしろってことなのかしら?


「ひなたは、私から」

「……? 千佳?」


 スッとおもむろに指を持ち上げる。そして。


「離れる、離れる、離れる、離れる、離れる、離れる、離れる、離れる――」

「花占いに使うなよ! って離れるしか言ってないじゃん!」


 最後の一枚を抜き終わった瞬間に、そんなことを言われても知らないわ。ひなたはそれを見て「あああああ……」なんてガックリしているし。

 ヒマワリに似てて、長く持ちたくなかったのよ。いやがらせかと思ったわ。


「いや、確かにあげたけど。ちぎるか、普通。女ってこんなものなのか?」

「有効利用してあげただけじゃない。文句を言うのなら、今後一切渡さないでほしいわ」

「言わない。言わないから、渡す!」

「……そう」


 残念。面倒を減らせるかと思ったのに。


「今日も勉強してたのか?」

「……そうよ」


 期末試験まで時間がないの。勉強しすぎて困ることなんてないわ。


「へぇーすごいな! 俺、勉強ばっかなんて無理!」

「でしょうね」


 足掻あがかなくたって、ひなたならできるのだから。無駄になるとわかってするはずがないわ。


「昔っから千佳は努力家だよな」

「……」


 それは、そうするしかなかったからよ。


「いつも頑張ってて、そういうところも凄いって尊敬してんだ!」

「……は?」


 尊敬? って、ひなたが、私を?


「嫌味かしら」

「はぁ!? なんでそうなんだよ!」

「じゃあお世辞かしら。そんなことをしても好きにはならないわ」

「世辞のつもりじゃないっつーの! どうしてそんな疑うんだよ?」


 困惑気味に様子をうかがってくるけれど、仕方がないことだと思うの。


「ありえないわ」


 ひなたは、そんな感情なんて持っていないと思っていたわ。自分のことを中心に考えていて、私の都合なんて構わず気まぐれに振りまわすから。

 なんとなくないと落ち着かない程度の存在だと位置づけられてるって。まるで幼子がヌイグルミを手放せないように。


 戸惑って何を言っていいのかわからない私を、ひなたは逆に呆れて見てる。

 なにかしら。その表情、すっごくイラッとくるのだけれど。


「顔、潰すわよ?」

「怖い! やめろ、手を伸ばすなって! って、そうじゃなくて!」


 あら残念。身をよじって逃げるなんて。そのままでよかったのよ?


「だって俺にしたらなんで千佳がそんな否定すんのか、全然わかんねーし。ありえないっつう発言も、『は?』って感じ」

「私のほうが『は?』よ」


 ふざけているの? それともからかっているのかしら?

 警戒して睨んでいると、溜息を吐かれた。


「ええっこのチョキなに!? なんで目に近付けてんだよ!?」

「知りたい?」

「いや、知りたくないから! これ以上寄せんな!」


 遠慮しなくていいのに。身にも目にもしみてわかれば、正しい価値観がわかるかもしれないわよ?


 それにしても、なにがどうしてそんな感情になったのか、私には経緯がつかめないわ。

 ああ、あれかしら。上からエサを運ぶアリを観察する気分なのかしら。納得。


「納得すんな! つうか、千佳の中で俺はどんな認識なんだよ……」

「あら、聞こえていたの?」

「うん、口に出してたからな?」


 無意識って怖いわねー。ついつい、本音がこぼれてしまったのかしら?

 ジト目になってどうしたの、ひなた? 疲れているんじゃない? 布団に入って体調を整えたほうがいいわよ。ほら、お帰りはあちらよ。

 あ、私はしばらくしてから帰るから、気にしないでちょうだい。


「千佳が……冷たい」


 グスッと鼻をすすらないでちょうだい。みっともない。


「もう少し、優しくしてもいいじゃん」

「……帰るわ」

「ゴメン! 俺が悪かったから帰るなよ!?」


 必死に引き留めるくらいなら最初からしないくれるかしら。面倒なの。


「っつか、俺嘘とかついてないのになんでそんな責められてるんだよ……」

「……」


 ――知ってるわ。


 ひなたが、嘘をつけるような人間じゃないってことくらい。使い分けられるほど器用じゃないもの。


 でも、だからって。すんなり飲み込める言葉じゃないのよ。


「……嫌いな相手だからじゃないかしら?」

「うう、わかってはいたけどな。ひどい」


 半泣きでなげくひなたに背を向けた。慌てて追いかけてくる彼の足音を聞きながら、内心に動揺を押し隠していた。


 ――なんで。彼からなのかしら。


 生まれて初めて裏のない賛辞を送ったのが、親でなくひなたなんて。


 悲しみと悔しさが心を埋める。その中にわずかに浮かんだ感情は。


「千佳」


 気づけば隣に並んでいた。私はいいと言ったおぼえはないのに。

 邪気なんて見当たらず心にも存在してないひなたは、私に笑う。


「千佳、俺は好きだから」

「……そう」


 ……厄介な幼馴染み。

 あれ、おかしいですね。ラブコメじゃなかったはずなんですが。

 ック、これがラブコメの波動というやつですか……! お、おのれ!


 今回千佳がやけにバイオレンスだったのは、ヒマワリを見て機嫌が急転直下だったためです。

 そして今回ひなたが選んだ花。この花言葉を調べてみると面白いかもしれません。


 それでは、本日も読んでくださりありがとうございました!

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