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18話

 今回、シリアス注意です。修羅場ってます。

 あと残り2~3話なので、ラストスパートかかってます。

 

 ではでは、どうぞ!

 電柱の下でなく、帰宅途中に別の場所でひなたを見つけた。

 運が良いのか悪いのか。……悪いわね、間違いなく。


 ここで無視をしてしまっても構わないのだけれど、そうなると後が面倒ね。きっとここぞとばかりにねて、文句を言うに違いないわ。


 ただ、問題はひなた以外に人がいることだけれど。


「……」


 昔みたいに後日変にやっかんでくる行動はしないはず、よね。中学校と小学校で違うし、あの子と一緒にいる人も初めて見る顔だもの。


 女の子と二人っきりで話すなんてやるわね、ひなた。ただ、道のど真ん中は通行の邪魔になるわよ。まぁ、住宅街の中だから通る人なんて限られるけれどね。

 同級生かしら? 会話の内容自体は聞き取れないけれど、あまり盛り上がってはいないみたいね。でも、あのくらいの年って異性とは見えない壁があったから、おかしくはないのかもしれないわ。


 あいさつくらいしておけば、大丈夫よね?


「ひなた」

「……」


 視線が一瞬絡んだ後、ひなたのほうから外された。無駄に明るく爽やかにあいさつをしてきたりもしない。


「……え?」


 目が合ったじゃない。なのに、どうしてよ。

 そのまま、ひなたは目の前の女の子と会話を続ける。まるで、私を最初から見ていない、興味なんてないように。


 気付かないふりをされたの?


「……」


 彼が話す先に彼女がいるのは何故? だって、前までは誰と一緒にいようと私に話しかけてきたじゃない。


 もしかして、その子はひなたにとって大事な女の子なの?


「――っ」


 ヒュッと息をのむ音を鳴らしたのは、私?


 なんで、動揺をしているのかしら。良いことでしょう?

 ひなたに特別な人ができて、私は彼から解放される。どちらにも損が生じないわ。丸く収まるの。


「っふ……」


 目が熱い。

 胸が内側から突き破られてしまいそうなほど、鈍痛がする。


 ああ、もう。嫌よ!


 瞳が勝手に膜を張っていく。視界がにじんでいって、ひなたがわからなくなっていく。



 ……ここにいたくないわ。



 背を向けて走り出す。揺れるたびに手に持ったカバンが重く食い込んでくる。でも、つらくないの。それよりも、この場から去るほうが先決だから。


 だって、あの光景を見ていると、グラついてしまいそうになるもの。

 今まで築いてきたものが、足元から崩れ落ちていくような喪失感。そんなものは味わいたくないわ。


 私は、私を守るために逃げ出した。



 ***



 口の中が渇く。のどがひりつく。

 全力で走れば頭から消えると思ったのに。ひなたと女の子の姿が残ってこびりついているわ。


 邪魔なのよ、消えてなさい!


「……ぃらない」


 少しでも気を許すんじゃなかったわ。


 どうして忘れていたのかしら。


 ひなたは、ひなたなんだから。私を滅茶苦茶にしてしまうってことを、小学校の頃に散々な目に遭ってわかっていたじゃない。


 学習能力がないのかしら、私。


「いらない!」


 こんな感情なんて持ちたくなかったわ。

 ただ平穏で静かな毎日を送りたかったのに。心の中が台風でも襲来したみたいに乱れる。


 汗が額に浮かぶ。手の甲で拭って、目の端にあった水滴も取っておく。


 背後から、駆ける足音があった。気のせいか、人違いであったらいいのに。こんな風に嫌がらせかと思うことを私にしてくるような相手なんて、一人しか知らない。


「っ千佳!」

「……」


 今、あなたの声は聴きたくなかったわ。


 振り返ると、ひなたが息を切らして立っていた。……追いかけてこないでよ。


「千佳? どうしたんだ?」


 『どうした』? 白々しいにもほどがあるわ。自分が一番わかってるでしょう? 首を傾げて問う姿が演技にしか見えないの。


 罵声ばせいを飲み込んだ。……ひなたに怒るのはお門違いもいいところってことはわかってるわ。彼は、私が言ったことを忠実に実行しようとしていただけなんだもの。

 言いだしたのは私自身。


 そうは頭で理解しているのに、わだかまりが蓄積されていく。


 ひなたは私の荒れている内心を察するなんて不可能だから、ニコニコと笑顔を浮かべてる。

 彼なら仕方のないことだっていうのに、苛立ちがおさまらない。


「……千佳これ!」


 普段と同じように花を差し出された。レモンクリーム色のバラ。

 咲く花を見て、綺麗じゃなく憎らしいと感じた自分に嫌気がさす。


「いらないわ」


 はっきりと断ってみせた。身動き一つできずに、バラを眺める。

 キョトンとひなたが見つめてくるのがわずらわしい。


「え、なんでだよ?」

「いらないものはいらないの」


 それくらい、聞き分けなさい。


「昨日までもらってくれたのに、本当にどうしたんだよ?」

「……」


 答えたくなんてないわ。 


「なぁなぁ、もらえよ」


 無言の私にグイグイと押しつけようと、ひなたが寄ってくる。



 ――来ないで!



「っ! いらないって言っているでしょう!」


 花なんて、私は欲しくなんてないのよ!


 ああ、最悪よ。怒鳴るなんてみっともないマネ、したくなかったのに!


「千佳……?」


 ひなたの腕が向ってくるのに、拒絶感しか湧かない。

 その手はなに? 私にばさないで!


「触らないで!」


 抵抗したくって手を振り回す。その拍子ひょうしに、ひなたの顔に花がぶつかった。

 つぶれる音と同時に、黄色の花びらが飛び散る。


 と、ひなたの頬にパッと赤い鮮やかな線がついた。


「え……」


 もしかして、バラのとげがひっかかってしまったの……?


「あ……」

「へ?」


 気の抜けた声を上げるひなたの頬に、血がプックリと玉みたいに浮かび上がって、流れる。

 傷つけてしまった。


「……っ」


 わざとじゃなかった。けれど、言えるはずがない。


「千佳?」


 うるさい。話しかけないで。

 不安そうに尋ねてきたって、答えたくないの。

 

 気持ちが冷えていく。頭に上った血も、もとに戻るように意識をしなきゃいけないわ。


 でないと、もっとみじめになってしまう。


「もう二度と、私に近寄らないで」


 声色がなくなっているって自覚はあるわ。けれど、どうしようもないじゃない。

 感情をなくそうとするのに精一杯なのよ。


 返事を聞かないままで、ひなたから走って逃げる。

 さっきの答えが是でも非でも、私が彼をまた避ければいい。



 ――ねぇ、ひなた。これ以上私の心を踏みにじらないで。



 嫌いなの、あなたのことが。


 だからどうか、惑わさないで。そのままでいさせて。

 明日は私用があり拘束されますので、投稿が遅れるかと思います。

 ご了承ください。


 今回も読んでくださり、ありがとうございました!

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