トラップ
付き合って。
そう西田に言われてやよいは
暫くして承諾した。
何故ならば都会育ちの弥生は
この北陸と云う土地に恋人どころか友達すらも居なく、孤独な日々を送って居た。
暫くは楽しい日々が続いた。
北陸で一番の繁華街、金沢の片町で
やよいと西田は毎週末会い、呑み歩く。
目立つタイプのやよいは、一度でも行った事が有る飲み屋に行けば、大概店の人間に憶えられ、至る処でやよいさん、やよいさん!と声がかかる。
福井の田舎が地元でそこしか知らない西田は、自分には無い所が多い華やかなやよいにどんどん惹かれていく。
きちんと化粧を施した、やよいの風貌は確かに美しく、華やかで人目を引く
だが、家族や友人等に恵まれず、ずっと彼氏も作らずに孤独を貫いていたやよいに、素朴な西田は安心を感じさせる空気をやよいに与えていた。
時を重ね、やよいは彼氏が居るということで有頂天に成り
西田に 「貴方のお家に行ってみたい」と漏らす。
西田は調子良く
「家は何時でも誰でも大歓迎だと答える」
それじゃあ、挨拶にお伺いするわとやよいは品良く地味なスーツに身を固め、御菓子等の土産を手にし、サンダーバードに乗り、金沢駅から芦原温泉迄向かう。