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そして『器』を奪われた俺  作者: 深爪 みなみ


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ep.9 ダヴル④

悪意がある訳ではない。

敵対する訳でもない。




威圧する訳ではない。

もちろん意地悪する訳でもない。




結界の最後の1枚だけ。そこだけを狙って放つ。



そんな神威を放つヒイラギ。




首がもげるのではないかと思うくらいにずっと頷いているダウラ。


ただ静かに、しかしながら

どこか勇ましく見守るヴァルカス。





「おっとぉ。」

意識が飛び、糸が斬られたマリオネットのごとく倒れゆくリリィをヴァルカスが優しく冷静に受け止める。


おそらく結界を貼っていたことで

他人格であるリリィを留めておくことがでくるのであろう。


リリィの意識が戻るまでどれぐらいの時間がかかったであろうか。


その間、誰1人喋る物はおらず、ただひたすらに回復する彼女をずっと待ち続けている。

そして、ダウラ。彼も流石に頷いはいなかった。



辺りは徐々に薄暗くなり始め、

美しい萌芽色をした月が顔を覗かせ始めた頃。



「あ、、、あれ??

わ、わ、わ、、、、、わたし。」


先のリリィはこう言った。

『私は内からリリィを見てきた』と。



それに対してリリィは今、何が起きていたのか

全く把握が出来ていない様子だ。


つまりは他人格のリリィが表に出ている時

本格のリリィはそれを見ることが出来ない。

いや、見ていない。

どちらにせよ記憶はないわけである。

ここは綺麗に眠り姫モードとでもしておこう。




とても困惑しているリリィを落ち着かせようとヒイラギがこう告げる。


「おい、ヴァルカス。我ではなんだからな。

お前から説明してやってくれ。」

「リリィ。お前は今からとんでもない話を聞くことになるかもしれん。

いや、聞くこととなる。

しかし、落ち着いてヴァルカスの話を聞くんだ。いいな?」



そう笑顔で告げるヒイラギ。

リリィも納得したように頷く。

なぜだろう。ダウラも頷く。




そして、ヴァルカスがこれまでの経緯をリリィに話す。

彼の話し草はリリィに不安を与えまいとしている。

身振り手振りは大きく、時には冗談も交えながら、それでも真剣に順を追っていく。



また、リリィもヴァルカスの目をしっかりと見て真剣な眼差しで話を聞く。


時折、生唾を飲むような仕草が垣間見える。

必死に現実を受け入れようとしているのだろう。




ヒイラギはまた目を閉じ、耳をかたむける。

ダウラはヴァルカスの話しぶりを見ながら、いまだに頷いている。

おい、ダウラ。そろそろ首がもげるぞ。




突然ヒイラギが立ち上がり

リリィの元にゆっくりと、ゆっくりと歩みを進める。



ヒイラギがぽんっ。とリリィの頭に手を置く。




リリィの頬が真っ赤に染っていくのがわかる。

無理もない。

横柄な態度に、横柄な口ぶり。時折見せる無邪気な笑顔。

まさにオラオラ系。母性までくすぐられる。

年頃の女の子だ、照れるのも仕方の無いこと。





「リリィ。お前の中にもう一人リリィがいる。これは理解したな?」


コクっ。


「我が今からその者に語りかける。」


コクっ。


「見えてはいる。

しかし、聞こえているかは定かではない。」


コクっ。


リリィは頭に置かれたヒイラギの手が少しだけ熱くなるのを感じる。

次の瞬間、リリィはまるで水の中にいるような

、宙に浮かんでいるような感覚で聴覚が支配される。


そして耳で聞いている訳ではないと分かる。

脳を揺らすように声が聞こえたからだ。


『心配するでない。最初だけだ。

じきに慣れる。』

『それでは始めるぞ。』


そう直接脳に語りかけるヒイラギ。


「は、、、はい、わ、分かりました。」


口に出して答えるリリィ。


会話の流れも何も無い。

突然の返事。


それを見て驚いている様子のヴァルカス。

こちらも驚いている様子の頷き執事ダウラ。

驚くことに違和感などない。それはごく当たり前の反応。

彼らにヒイラギの声は聞こえていないのだから。





『おい、聞こえているのだろ?

いい加減出てきたらどうだ?』


『、、、、、』反応はない。


『この子はお前を受け入れようとしている。

その覚悟をもったのだ。

それぐらいは分かっているだろ。』


『、、、、、』反応はない。


『次はお前の番だぞ。

リリィはお前と話したがってると思うがな?

お前はそれでい』、、。


『分かりましたよ!

分かりましたから!!』



キョロキョロ。

?????





「わ、わ、、、、私、、の、、、声?」


急にリリィの脳内に響くリリィの声。

とても不思議そうにヒイラギを見上げる。


頬を赤らめたままヒイラギを見上げるリリィ。



今だけ俺の身体を返せ。と言いたげな宮下を思い浮かべるのは無粋というもの。

皆で無かったことにしよう。その扉は閉めておこうではないか。





「『あとは頼んだぞ。リリィ。』」


そう言ってリリィの頭からすっと手を降ろす。




「まぁ、とりあえずってとこかぁ。」

緊張の糸が解けたような声で言うヴァルカス。


大きく、ひとつため息をついた後にヴァルカスはヒイラギを見る。

表情とは裏腹に、その瞳だけは獲物を狩る前の獣そのものだ。

次はお前の番だ。聞かせてもらおうかと言わんばかりに。




しかしヒイラギはリリィの方をちらっと見る。



ヴァルカスはその仕草だけで理解したのだろう。


「まぁ、そうだな。

おい、リリィ。今日は宿にでも泊まってくれやぁ。」


そう言ってビアが入っているであろう小袋をふわりと投げるヴァルカス。


「あ、あ、、、わ、、、、」


1


2


3バウンド。


やっと掴めたようだ。




「この部屋には音が漏れない結界がしてある。別にここでもかまやぁしねぇのだが」

「まぁ一応俺の部屋とはいえギルドだ。」

「シュナに怒られちゃー目も当てられねぇ。」

「まっ、そーゆーこった。」


コクリと頷くリリィ。



続けてヒイラギも、頷き執事ダ、、、

失礼。

ダウラに小袋を投げる。


「ダウラ、お前もリリィと同じ宿を取れ。

護衛だ。分かるな?」


「承知しました。ヒイラギ様。」


「あとだ、お前は今日、我とヴァルカスの神威を受けておる。直に来るぞ。

ゆっくり休め。」



「承知しました。」

自分なんかの為に慈悲を下さるとは。と、言いたい気持ちを抑え、深々と頭を下げるダウラ。


本当にヒイラギを崇拝しているのだろう。

彼が何故その境地に至ったのかはまた別の機会にでも。





「ダ、ダ、、ダウラさん。い、、、行きましょ。」


「ええ。参りましょうか。リリィさん。」



おどおどとした様子は変わらない。

だがリリィは人見知りではないようだ。



机の引き出しをあさり、少しホコリの被った煙草を取り出し火をつける。



萌芽色の月明かりに照らされる白い煙。



「さて、ヒイラギぃ、行くかぁ。」


「ああ。」



ダウラとリリィ、ヒイラギとヴァルカス。

それぞれの帰路につく。


2人にとっては帰路ではないのかもしれない。




長い、長い一日が萌芽色の月と共に終わりを告げる。

そして、長い、長い夜が萌芽色の月と共に始まりを告げようとしている。

読んでいただきありがとうございます。


感想やレビューもらえると


めちゃくちゃ喜びます。


拝読いただきありがとうございました。


では、また次回。

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