ep.5 リリィ・アルブム
毎度の事ながら
ポエマー宮下のとんでも妄想は置いておくとしよう。
ヴァルカスが放った神威。
何人かは気絶しているが気のせいとしておこう。
その後、少しの静寂の後ギルドは普段の装いを取り戻す。
バツが悪そうに先程の男はそそくさとギルドをあとにする。
「ヒイラギさん?
、、、、
ヒイラギさん!!」
シュナが今回の報酬を渡そうと声をかける。
が、ヒイラギは先程から
とある者だけを見ていた。
まるでシュナの声など聞こえていない。
自分の世界に入り込んでしまっているかのように。
ただ、とある者だけを見ていた。
主が動かない事がわかるやいなや、ダウラが動く。
何故そのような考えに至ったかはダウラ自身も気付いていない、いや、本能の類だろうか。
この世界の事を、いや、ギルドの事を知っている訳がない。
しかしながらダウラはさも知っているかのように振る舞い、報酬を受け取る。
「これでよろしいでしょうか?」
『はい、確かに。
こちら報酬の300ビアになります。』
「ヒイラギ様、参りましょう。」
そう声を掛けたダウラ。
しかしヒイラギとダウラの間に割って入る。
「なぁ?ヒイラギぃ。
この後少しいいかぁ?
俺の部屋に来てくれやぁ。」
先程の神威のような威圧は放ってはないものの
どことなく威圧とでもいうのか、神威ほどではない様子のヴァルカス。
「ええ。良いですよ!」
これだ。屈託のない笑顔。
それを見せた直後。
ヒイラギはヴァルカスのみにしか伝わらない程の小さい声で、そして冷たく言い放つ。
「あの、受付嬢も呼べ。
それが条件だ。」
参ったと言わんばかりの表情で
「わぁーった、わぁーった。
その条件のんでやるよぉ。」
「そんじゃ俺は遅めのランチを取ってくるから、そーだなぁ、、、、
1時間後に俺の部屋に来てくれやぁ。」
そう言い残してヴァルカスは去っていく。
どこか不思議そうな顔をしているシュナ。
ヴァルカスの発言の意味が分からないのであろう。
不思議だと言った表情を残したまま
シュナは業務へ戻るのである。
取り残されたヒイラギ一行の様子はというと。
「ダウラ。さっきは助かった。
いい判断だ。」
『ありがたきお言葉。
このダウラには勿体なきお言葉。』
「それと、その口調。
もう少し和らげろ。」
『承知しました。』
『ところで、ヒイラギ様。
先程のヴァルカスとかいう男、どう思われますか?』
「あぁ、ヴァルカスか。
どうだろうな。まだまだ、底は見えてないとはいえ、、、お前と同等。
いや、、、、少し上。といったところか。」
『そうですか。。。』
少し悲しげで悔しそうな表情を浮かべるダウラ。
そんなダウラの表情など気にも止めずヒイラギは続ける。
「ヴァルカスもそうだが、、、
あの女だ。我が気になっているのは。」
『あの女ですか。』
ダウラは不思議そうな表情を浮かべる。
何故あれにそこまでの興味をもつのかと。
その後、持て囃した時間を潰すかのように
他愛のない会話をしながら
ギルド内を散策するヒイラギ一行。
散策の間にも何人かの冒険者仲間であろう人物に声をかけられた。
宮下はそこそこに冒険者としての仲間がいたようだった。
そして約束の1時間後。
「おい!入るぞ!」
もう、悟られているのだろうと
かなり横柄な態度で声をかけドアを開け放つヒイラギ。
「おぅ。きたかぁ。まぁ座れや。」
ヒイラギ、ダウラがソファにつく。
そして立派な机を挟んで対峙するように
ヴァルカスと1人の女性がすわる。
少しの沈黙。ピリつく空気。
ここでヴァルカスが口を開く。
「なぁ?ヒイラギぃ?
お前は誰だぁ?
何があったぁ?
横のそいつは何だぁ?
全てを説明してくれやぁ?なぁ?」
とても高圧的な態度で
ヒイラギを責め立てようとした。
その時、不意にダウラが立ち上がり開口
「まぁまぁヴァルカスさん?
お話の前に少しよろしいですか?」
「あぁ???」
「自己紹介がまだだと思いましてね。」
どこか不敵に笑みを浮かべそう話すダウラ。
「私、ダウカスダーラと申します。
ダウラとお呼びください。」
「そして、冒険者になろうとこのシブルクの街を目指していた所、ゴイモ谷を通過する際にウルフの大群に襲われてしまいまして。。。。」
「そこをヒイラギ様に助けて貰った。と、いったところです。」
話を聞いていたヴァルカスが呆れたように返す。
「よくもまぁ。そんな見え透いた嘘を。」
「まぁいい。ダウラ。
確かにお前さんのいう通りだなぁ。
不躾にイキナリ本題ってなぁ礼儀がなってなかったなぁ。」
深くはないが軽く一礼を済ませたヴァルカスが続ける。
「おれぁヴァルカス。
ザッハ・ヴァルカスだ。
まぁここのギルドのギルド長をやらせて貰っている。」
「そんでこいつが、、、」
と、ヴァルカスが言いかけた所で
隣に座っていた女性が立ち上がる。
先程はカウンター越しだった為か分からなかったが
背は低いようだ。
透き通るような色白の肌。
肩ほどまでの金色の髪。
とても手入れが行き届いていると分かるほどの艶髪。
目には少しだけ前髪がかかっている。
しかし、とても大きくて青い綺麗な瞳をしている。
16歳前後といったところか。
容姿端麗とまではいかないものの
とても可愛らしい印象をうける。
「、、っの。」
「、、ィ、、、と、、、しまぁす。」
声が小さいようだ。
苦笑いを浮かべながら威圧する訳でもなく優しい口調でヴァルカスが言う。
「おーぃ、もっと大きな声でしゃべろーかぁ?」
ビクッ!っと身体を反応させ
女性が続ける。
「当ギルドの受付を担当しております。
リリィ・アルブムと申します。」
声の大きさはさほど変わっていないように感じるが、かろうじて聞き取れた。
それは、ヴァルカスの声がアホみたいに大きいせいなのか。
軽く会釈をしてそそくさとソファに腰掛けるリリィ。
どうしようもない冒険者に絡まれていた受付嬢だ。
そう、ヴァルカスが神威を放ったあの時、ただその者だけを見ていたヒイラギ。
そのヒイラギの目線の先にいた女性。
【リリィ・アルブム】
彼女がヒイラギに何かを感じさせたのか。
そしてもう一人。何かを感じたのか。はたまた、、、
宮下は自分の担当ではない、数度見たことがある程度の喋ったことのない
可愛らしい風貌のリリィという名の受付嬢に何やらよからぬ妄想を抱いている様子である。
気味が悪い。下衆だ。
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拝読いただきありがとうございました。
では、また次回。




