ep.35 Aランク①
シブルクの街はすっかりと落ち着きを取り戻していた。
あれだけの事があったと言うのに冒険者以外の死者はゼロ。
それが街の精神的な安定を保っている理由なのかも知れない。
ヴァルカスとグロリオサの面々は馬車に揺られ王都へと向かっていた。
ギルド本部からの呼び出し。
十中八九「厄災オルトロス討伐戦」についてだろう。
「ヴァルカス。今回はどれぐらいの時間が取れそうなのだ。」
「ああ、おそらく会議は2日。それが終わりゃーシブルクの街へ帰るってとこかな。」
「別に、あれだ。」
「やりたい事でもあるならお前らは残って後から帰って来てもかまやしないぜ?」
「ならばそうさせてもらおう。」
やりたい事でもあるのだろうか、どこか嬉しそうに見えるヒイラギだった。
王都へは馬車で半日弱。
車内では「厄災オルトロス討伐戦」の話題へと自然になっていた。
「それにしてもリリィ。あん時の重力魔導には驚かされたぜぇ。」
「夢中だったから......ですです。」
単純に褒められたから嬉しいのか。
それともヴァルカスに褒められたから嬉しいのか。
どちらにせよハニカんだ笑顔を見せるリリィ。
「あれに関しては我も驚いた。」
「あそこまでとは。」
「さすが賢聖ってところだな。」
「…」
「あ。」
この馬鹿が。という言葉を押し殺すヒイラギ。
あからさまに額を押さえやってしまってますよ、を体現するダウラ。
「私が......賢聖???ですです??」
「まぁーいずれは分かることだ。」
「こーなっちまったらしゃーねーだろ。」
いや、ヴァルカス。お前の失態だぞ。
しかしながら自分が賢聖という事実を知ってもリリィは嬉しそうだった。
出来ることが増える。
もっとみんなの役に立てる。
この子は可能性の塊だった。
それは潜在能力だけではなく、心ですら。
揺られること数時間、王都ギルド本部へとたどり着く。
部屋の扉を開けると待っていたのは。
カリス・ローゼン、ノース、シーシャ。
そしてゼノだった。
「待っていましたよ。ヴァルカスさん。」
またしても眼鏡をあげるカリス・ローゼン。
「君たちがグロリオサか。」
「なるほどのぉー。」
グロリオサの面々覗き込むゼノ。
舌をペロリと出したシーシャが言う。
「へぇー。君たちが。」
「真ん中の君、可愛いね。」
「今夜よかったら、」
「遠慮させてもらう。」
被せるように答えるヒイラギ。
「やっぱり可愛いわねっ。」
何故かヒイラギの前で手を広げ守ろうとしているダウラ。
ダウラさん。君の愛は凄いよ。ホントに。
____「厄災オルトロス討伐戦」については、こんな所だ。
ヴァルカスがふっとため息を付き、報告を終える。
もちろん、グロリオサの事についても、報告の途中に追加要素として話していた。
一通りの報告を聞き終えた幹部連中。
一番最初に口を開いたのは意外な人物だった。
「リリィちゃん?だっけか?」
「君が賢聖なのは分かった。」
「ただな、納得出来ない部分があるんだ。」
いつもは大笑いしているノースが真剣な眼差しでリリィに問う。
「冒険者になってそれ程期間は経っていない、それなのに今回のオルトロス戦。」
「そこでの重力操作。」
「辻褄が合わないんだよ。支援魔導師だと。」
「それを君はどう説明してくれるかな?」
ヴァルカスの方を見るリリィ。
それに応えるように頷くヴァルカス。
____道中の馬車の中でこんな話をしていた。
「リリィ。」
「リリィが賢聖って事は話す。」
「そーじゃなきゃ辻褄が合わないからな。」
「ですです。」
「ただ、ダヴルの事だけは隠しておきたいんだ。」
「ヴァルカスさん、それは何故です?」
ダウラが聞く。
それに関してはヒイラギも何故だというような顔をしている。
「今回の召集の場、そこに、シーシャがいる。それが厄介だ。」
「シーシャってのはあれだ。お前ら会っただろ?錬金術師のサーシャ。」
「アレの姉だ。」
「あー。あのおっとりとした店主さんの。」
「それで何が問題なのです?」
ヒイラギの意見を代弁するかのように問う。
「シーシャはクマコ支部でギルド長をしているんだがな、あいつは現役なんだ。」
「現役の冒険者。」
少しの沈黙が車内に流れる。
「あいつのパーティーはSランク。」
「所属はシーシャを含め、2名。」
「二人ともダヴルだ。」
「それは幹部連中は知っている。おそらく喉から手が出るほど欲しいだろう。リリィの事が。」
「なるほど。そういう事か。」
「私は!グロリオサの一員ですです!!!」
頬を膨らませ怒るリリィ。
いや。可愛いかよ。
「そーだ。リリィはグロリオサだ。」
ヴァルカスがリリィの頭をくしゃくしゃに撫でる。
「あと、もう1つ。ノースだ。」
「アレはあー見えて。切れ者だ。」
「ノースに突っ込まれたらそん時はダヴルってことを白状しちまうんだ。」
「俺がどうにかす、」
ヒイラギが割って入る。
「我がどうにかしてやる。リリィ。」
「そうか。頼んだぞ。」
少しだけ顔を強ばらせていたヴァルカスがそこには居た。
____ヴァルカスの頷くのを確認してリリィが言った。
「私はダヴルですです。」
幹部連中が何かしらの反応をみせる。
特にシーシャだけは、やはりと言うべきか、
舌をぺろりとし、リリィを見ていた。
まるで獲物を見つけたかの様に。
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