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そして『器』を奪われた俺  作者: 深爪 みなみ


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ep.34 ラミラス・クルオーゼン

____________

『やれるか?』『何言ってんだよー』『時間の無駄だわ』『あ?』『走れーーーー!』『…』

『おそい』『左は任せたぞ』『、、、、さん』

『、、ラスさん』『ラミラスさん』


____「ラミラスさん」


「ラミラスさん」


目が開く。息が荒い。体が熱い。


「ラミラスさん?」

ギルド専属回復術師が心配そうに尋ねる。


「大丈夫ですか?また、うなされてかましたが、、、。」


「…」

声が出ない。

こくりと頷く。


いつもそうだ。

毎日、毎日。同じ声を聞く。


人の声が痛い。聞きたくない。

手に残る感覚。拭いきれない恐怖。


【ラミラス・クルオーゼン】

俺はシブルク支部で唯一のAランクパーティ

シルバーウイングの一員。だった。

どうやら周りにはあまり良くは思われてなかったようだった。そんなことは知っていた。


ただ、俺達には実力があった。

自信もあった。

周りにどう思われようが、俺達は強い。

そう思うのも嫌ではなかった。


毎日、指名依頼で遠征の日々。


子供の頃から憧れていた冒険者。

決して裕福とは言えない家庭で育った俺。

冒険者になって、家族に仕送りをしている自分に酔っていたのかもしれない。


仲間達も優秀でSランクも夢じゃない。

こいつらとなら。そう思っていた。


あれに会うまでは。


正直覚えていない。

ただ、ただ、怖い。

無理だ。死にたくない。


無いはずの左腕が痛む。



目が覚めた時にはベッドの上だった。


目が覚めたのは「厄災オルトロス討伐戦」より1週間後のことだったという。


オルトロスを討伐したのはヒイラギ君たちのグロリオサとギルド長のヴァルカスさん。

そして、その4人と自分以外は全員死亡した。

その事だけは分かっている。

そして、俺を救ってくれたのはグロリオサの面々だと言うことも。


いや、分かっているというより聞かされた。

聞かされただけだ。


コンコン。

どうやら来訪者のようだ。

正直、誰とも会いたくはなかった。


「よぉ、ラミラス。調子はどうだ?」


やって来たのはヴァルカスさんだった。



頷くことしか出来ない。

もう、来ないでくれ。そう思っていた。


「ラミラス、知ってるか?」

「そこの花。」

「毎日あいつらが夜に来てんだとよ。」

「あー。グロリオサな。」


驚いた。彼らとは顔を合わせていないのだから。


「まぁ、心配してくれてんだよ!」

「ハッハッハ!」


それでも、、、、頷くことしか出来ない。

声がでない。分からない。


「そー嫌そーな顔すんなってぇー。」


分からない。分からない。


「まぁよ。ここからはおっさんの独り言として聞いてくれや。」


ギルド長が何を言っているのか分からなかった。


「人ってのはな、変化が怖いんだよ。」

「例えばな、俺だったら、んーーそーだな。」


「出勤予定の職員がこねぇー。」

「結論から言えば病欠だ。」

「だがな、来ない。それは日常ではねぇーんだよ。職員の身に何かあったんじゃねーか?」

「重い病気に突然なっちまったんじゃねーか?ってな。」


「結果としては小さい変化だけどもよ。大きい変化にもなるかもしれねーだろ?」


「だから人は変化を怖がるんだよ。」


頷くしか出来ない。分からない。


「じゃーあれだ。もういっこな。」

「俺が結婚したとしよう。」


思わず顔がゆるんでしまった。


「あー!おめぇーバカにしたな?」

「俺だってすんげぇー可愛いねーちゃんと、結婚するかもしれねーぞ?」



「そのな、結婚ってのが大きい変化だ。」

「そりゃーそーだ。日常生活が一人から二人になるんだ。それはそれは大きい変化だ。」


頷く。それが変化なのは分かったから。


「その変化にも2種類あってな。」

「前向きな変化と後ろ向きな変化だ。」


「まぁ言ってみりゃ。その変化を受け入れた時、前向きなら押して進むだけ。」

「後ろ向きな変化は荷物を背負って前に行かなきゃならねーんだ。」


「そして、二つの変化には共通点がある。

どっちの変化も己自身が覚悟を持って、1歩踏み出さなきゃなんねーんだ。」


「俺自身、何がいーてぇーのか分かんなくなってきちまったがよ。」


「ラミラス。お前は変化を恐れてるんだ。」

「別にそれが悪い事とは思わねぇ。」

「変化を求めない。は、時に心を安定させるからな。」


「けどな、今のお前さんは違う。」

「変化を恐れてるんだよ。」

「それは荷物を背負ってるからだ。」

「変化をしなきゃいけない荷物を背負っているのに、1歩が踏み出せない。まぁ、そんなとこだな。」




「どうだ?その荷物俺が支えてやる。」



「ギルド職員として俺と働かねぇーか?」

「お前なら出来る。俺が保証してやる!」


「それが何故だかは言わなくても。」

「ラミラス。お前なら分かるはずだ。」

「お前は頭がキレるからな。」


大粒の涙が零れていた。

なぜ?

分からない。分からないけど。


涙が溢れて止まらなかった。

子供の様に泣いた。

声を上げて泣いた。


あれだけ出なかったはずの声を上げて泣いた。


「ヴァルカスさん、、、、」

「お願いします、、、、」



「ああ、任せとけ。」


そう言った彼の笑顔は眩しかった。


怖い気がした。


けど、俺はこれからなんだ。


そうも思った。


救われたんだ。あの人に。





____暗雲立ち込める城。

『クリムゾン・グロリオサ。覚えたぞ。』

『弟の仇。我が死ねない恐怖を与えてやる。』

黒紅色の身体は復讐の炎で燃えていた。






____「厄災オルトロス討伐戦」より二週間後の出来事だった。

読んでいただきありがとうございます。


感想やレビューもらえると


めちゃくちゃ喜びます。


拝読いただきありがとうございました。


では、また次回。

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