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そして『器』を奪われた俺  作者: 深爪 みなみ


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ep.31 ドロップ・リベレイション④

2人の声は届かない。


目には生気がない。


身体の力は、、入らない。



ダウラはラミラスを肩に抱えて街の方へと走りだす。

「リリィさん、後ろは私が。」

「なので、この方の治癒をお願い出来ますか?」


「らじゃりー!ですです!」

「でも、私は大丈夫ですよ?」

微笑むリリィ。



2人の背後からはヒリつくような空気が伝わってくる。


いくら賢聖といえどリリィはまだ駆け出し。

戦闘の最中では無詠唱とはいかない。


リリィが詠唱を始めた。


【究極治癒 エクストラヒール】

【治癒安定 ヒールコンシステンシー】

【精神安定 コンフォーティンソング】

【強制睡眠 スリーピングフォレスト】


ラミエルへ4つの並列構築で支援魔道を施す。

さらに、


【速度補正 ブースト・ヴェロチタ】

【対物理防御補正 ブースト・フィジカ】

【対魔導防御補正 ブースト・マージャ】


3つのバフを自身とダウラヘ施す。


並列構築、その数なんと「10」。

成長しているというのか。

恐ろしい程の速度で、この戦闘中に。


「リリィさん、あなた。」


「ねっ?大丈夫って言ったでしょ?」

「それよりも、今は街へ!ですです!」


「ええ。」

ダウラが守らなければと思っていた少女は彼の予想の遥か上にいた。




____神威と禍魂の衝突。

ダウラとリリィが距離を取るには充分すぎる時間。

両者の睨み合いが続いていた。


先に動いたのはオルトロスであった。


瞬間、間合いを詰められるヴァルカス。

オルトロスの鋭い爪が振り下ろされる。



ドンっ。という衝撃波。

両腕を前で組み、真っ向から受け止めた。

ヴァルカスの腕に切り傷が入る。


「いてぇなぁ?犬!」


力と力のぶつかり合い。

ギリギリと音を立てて空気が震える。



互いの力が弾けた。

オルトロス、ヴァルカス、共に後方へ吹っ飛んでいく。




その時、詠唱が聞こえた。


「【レフ・ヴェロス】」


白き矢が敵を穿つ。



ヒイラギの放った魔導はオルトロスの左肩を掠め、傷を負わせる。


「ほう、避けるか。」


オルトロスの左肩、レフ・ヴェロスで負傷した箇所には白い炎が残っていた。



『何をした?』


「これならばどうだ?」


『何をしたと聞いているのだ!小僧!!!』



直後。

上空に巨大な魔導陣が展開。




「神の涙【ラクリマ・セフ・ディヴィナ】」



展開された魔導陣より無数の白き矢が雨のように降り注ぐ。



咆哮。禍魂での相殺。

しかし数ではヒイラギの方が優勢。



ズドン。鈍い音がする。


オルトロスは気付く。

が、気付いた時には下からの強い衝撃。



「おい、犬。どこ見てやがる??」


ヴァルカスの拳がオルトロスの腹へと突き刺さる。

その巨体は宙を舞う。

吹っ飛ばされたオルトロス。

地面へと叩きつけられる。




少しの沈黙、後、咆哮。



『舐めるなよ!!クソ蝿どもが!!!』



左肩と身体の多数に白き炎、腹への一撃を喰らいながらもまだ立ち上がる。





バチバチ!バチバチ!と空気が避けるような音。


白い炎をかき消すほどの禍魂。

オルトロスの身体を電撃が纏う。




____街の入り口の群衆。

何かが起きている。何かは分からない。

その何かが分からないという事が不安を煽る。


街の入り口へ到着したダウラはシュナを目にした。

「シュナさん!」


その声に反応したシュナが駆け寄る。


「ダウラさん、一体なにが。」


「説明は後にしましょう。」

「とにかく今は街の者を奥へ。」

「それと彼を。」


驚く彼女を安心させようと、間髪入れずにリリィが紡ぐ。


「シュナさん!応急処置は完了しています。」

「命の危機は脱した状態なので後を頼みます!」

「私達はまだやる事があるのですです!」


リリィは笑って見せた。

その笑顔は作りものの笑顔では無かった。

この場にいる誰よりも自信に満ち溢れていた。


そして、リリィは即座に街に防御結界を展開。

ダウラに告げる。


「ダウラさん!この防御結界をお願いします!」


言われた言葉はわかる。しかし意味が分からないダウラ。


「私からダウラさんへ移行、維持、上書きの術式を組み込んでおきました!」

「なので、この街をお願いします!」


何も聞かない。

「分かりました。」

「リリィさん。無茶だけはダメですよ?」


ダウラはリリィから譲り受けた防御結界の隙間に自身の結界術式を書き込んでいく。


同時に走り出すリリィ。



「リリィちゃん!!!行くの???」


涙声のシュナ。


「ですです!」

「私は!」

「クリムゾン・グロリオサの支援魔導師ですから!」


大きな声で返事をするリリィ。



その小さな身体。


シュナの目には大きく映っていた。

読んでいただきありがとうございます。


感想やレビューもらえると


めちゃくちゃ喜びます。


拝読いただきありがとうございました。


では、また次回。

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