ep.25 クリムゾン・グロリオサ③
辺りは少し薄暗くなってきている。
夕焼けが消えた余韻。
空はそんな色を魅せていた。
リリィの願いを叶えるべく、Fランクの採取クエストから帰ってきた3人。
しかも、馬鹿げた量を取ってくる始末。
「ヒイラギさん。他の冒険者の事も考えて採取クエストは行って下さいね!」
少しキレ気味のシュナ。
そこへヴァルカスがやって来た。
「それじゃお前ら行くか!」
「リリィさん、お着替えとかしなくて大丈夫ですか?」
ダウラさん、その紳士の術。いつ覚えたのさ。
「ダウラさん?私の話、聞いてましたか?」
「報告してからの!か・ら・の!ですです!」
「そうでしたねっ」
はしゃぐリリィにダウラは暖かく微笑みかけた。
冒険者御用達の酒場 月の兎
「かんぱぁーい!!!!」
4つのジョッキが甲高く音を立てる。
しかしながら回りの視線がチラチラこちらに注がれる。無理もない。既にパーティー登録承認の噂は飛び回っていた。
「おい、あれだよ、グロリオサ。」
「ああ、とんでもない奴らが出てきたな。」
「ダウラさん、素敵ですよね。」
「こりゃ、シルバーウイングも落ち目か?」
「世代交代だな。」
「すでに実力はSクラスだとか。」
「リリィちゃん可愛いよなー」
「ありゃヴァルカスさんが可愛がってるからな、将来有望ってことだろ。」
「かっこいいよなー、ヒイラギ君。」
ジョッキを片手に満更でもない表情のリリィ。
「ふんっ。これですです。」
「私達の活躍を皆が噂する!」
「これがやりたかったのですです!」
リリィさんや、それはあなた達の実力ありきの話だよ。
そんなことを知ってか知らずか。まぁリリィが楽しんでいる様なので、それは何よりだ。
時間が経つにつれ、グロリオサの噂を口にするものは少なくなり、それぞれがそれぞれの酒を楽しみだす。
「ところでリリィ、ほんとにこんな事でいいのかぁ?」
「じゃあ、もういっこいいですです?」
「ああ、言ってみろい!」
大船に乗ったつもりとでも言いたげに胸を叩くヴァルカス。もはやドラミングだよ。
「王都に行きたいですです。」
「王都にか?一体何しに行くんでぇ?」
「それは秘密ですです。」
「けど、王都に行くのもお金がかかっちゃいます。だから、ヴァルカスさんが次にギルド本部に行く時に連れてって欲しいのですです。」
「もちろん、グロリオサとしてみんなで、ですです。」
「ほう、王都か。よいな。」
「我も王都を見てみたいものだ。」
「仕方ねぇなぁ。次に王都のギルドへ行くのは来週だ。そん時でいいかぁ?」
「はいですです!」
ヒイラギとダウラは思う。
出会ってから今までの間。その間で一番いい笑顔で笑うじゃないか、と。
ヴァルカスがぼそぼそと、喋る。
「リリィ、俺からも1つお願い、いーか?」
「1度でいいからよぉ、お父さんって呼んでみてくれねぇか?」
「もちろんです。」
「私は、お父さんの事はお父さんですが、ヴァルカスさんのこともお父さんって、思ってますよ。私はお父さんが2人もいて幸せですです。」
「ねっ?お父さん。」
ヴァルカスの目から大量の涙がこぼれ落ちる。
「ああ、ありがとう、リリィ。」
「ヴァルカスよ。酒が美味いな。」
「ああ。」
酒と泪。こんな夜もよいではないか。
親子の絆を見た、そんな夜だった。
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