ep.22 Cランク②
少しだけ空が暗い。
どうやら今日は雨が降っているようだ。
あれから1週間程が立ち、話題の3人組はどうやら休息日のようだ。
しかし、ヒイラギだけはギルドへと足を運んでいた。
「シュナ。」
「あれ?ヒイラギさん。」
「今日はお休みにするはずじゃ?」
「ああ、休息日だ。」
「でしたら何故?」
「ヴァルカスは今日戻ってくるのだろ?」
「ええ。」
「なら、待たしてもらう。」
「なるほど。そう言うことなら。」
シュナはヒイラギにひとつの鍵を渡した。
基本的にはギルド長室はギルド長不在の場合、鍵がかかっており入ることが出来ない。
しかし、万が一の為にヴァルカスは本部へ赴く度にシュナへ鍵を渡しているようだった。
「よいのか?」
「ええ。ヒイラギさんなら。」
「あ!けど、勝手に色々な物は触らないで下さいね!約束ですよ!」
「ああ、分かった。」
ヴァルカスを待つヒイラギ。
どれ程の時間がたったであろう。
外の雨は止み、雲の切れ間から光が射し込んでいる。
雨上がりを待っていた小鳥達の囀りが聞こえる。
目を閉じ何かを考えているヒイラギ。
と、思いきや。
スヤスヤと寝息を立てて眠ってしまっているようだった。
その寝顔はまるで子供の様に。
突然、扉が開く。
「ヒイラギぃ、すまねぇなぁ。」
「待たせちまったかぁ?」
「ああ、、、。」
「大丈夫だ。」
少し掠れた声で返事をするヒイラギ。
ヴァルカスは茶化す事もなく対面するソファへと腰掛ける。
先日のリリィの初陣。
そして、神威の覚醒。
事の顛末をヴァルカスに告げるヒイラギ。
どことなく、ヒイラギとしても
ヴァルカスには伝えなければと思っていたのであろう。
ヴァルカスもそれに応える様に、静かに、ただ静かに。耳をかたむける。
「といことだ。我の責任だ。」
「すまない。」
「そうか。」
そう言ったヴァルカスの顔はどこか物悲しさが滲み出ていた。
つい最近まで、娘のように思っていた保護対象。
この間までが嘘のように。
リリィの成長は嬉しいが素直に喜べない自分がいる事に、ヴァルカスは気付いたのであろうか。
「ヒイラギぃ、俺からもお前にだけは伝えておかなきゃいけねぇことが3つある。」
自分から伝えなければいけないと言ったものの、本当に伝えてよいのか。
1つだけにすべきなのか。
いや、2つ伝えるのがよいか。
やはり3つとも。
迷いが、現れたのであろう。
ゴクリとヴァルカスの喉が鳴る。
「何から話せばいいかなぁ。」
「そうだなぁ。」
本当は纏まっている。話すことなど纏まっているはず。
気持ちの揺らぎがヴァルカスをそうさせる。
「とりあえず。だ。」
「リリィについてだが、、、、」
「あいつぁ、支援魔導師なんかじゃねぇ。」
「賢聖だ。」
「これはお前にだけは伝えとかなきゃなと思ってな。」
「だろうな。」
「お前、知ってたのか。」
「そんなはずはなかろう。」
「なら、なぜ?」
「ヴァルカス。リリィが並行術式を同時に幾つ構築できると思う?」
「いくつってお前、賢者で3つ。
いくら賢聖とはいえ、4つ。
出来て、5つってとこだろぉ?」
鼻で笑うヒイラギ。
「8つだ。」
信じられないと言った顔をするヴァルカス。
人間本当に思ってもないことを聞かされると、そのような顔をするのだな。
「ハッハッハ!」
「そんなもん聞かされたら、お前さんの反応も納得だわぁ。」
ヒイラギはここ1週間の出来事を語る。
どのようなクエストを受けたか。
リリィは何を覚え、何を見たか。
様々な事をヴァルカスへと伝えた。
教師が保護者に語らうとでも比喩するのか。
ヒイラギの話を聞き、そしてリリィを想い。
喜怒哀楽を面白い程展開する親バカ。
物悲しい表情をしても、やはり子の話を聞けるのは嬉しいのであろう。
「して、ヴァルカス。
次の話を聞かせてくれ。」
「ああ。」
「そうだったな。」
「俺がギルド本部へ行ってたのは知ってるな?」
「ああ、もちろん。」
「そこで、本部の馴染みにな。」
「打診したんただわぁ。」
「何をだ?」
「お前らのランクだよ。ランク。」
「もう決定済みだ。」
「ほう?」
不敵な笑みのヒイラギ。
その笑みには自信しかない。
「ヒイラギぃ、お前はBだ。」
「そしてダウラ。リリィ。」
「両名共にC。」
「これで、パーティー登録の壁を超えたってわけだな。」
「感謝しろよぉ?今回の昇格は異例なんだ。」
「俺が言わなきゃ叶ってねぇ。」
「そうだな。」
「ヴァルカスよ。」
「ありがとう。」
極めて純粋な感謝。
ヒイラギが、いや。アニマが頭を下げた事があっただろうか。
彼の中で何かが変わろうとしているのかもしれない。
「よせよせぇ!冗談だよ!」
「あー、昇格は本当だがな。」
「ハッハッハ。」
ザッハ・ヴァルカス。
この男。本当に器のデカい男だ。
「そしてだ。これから話す事は、かなりの大事だ。今回俺がギルド本部へ行ったのも、理由はそれだ。」
「もったいぶるな。早く聞かせろ。」
「それが始まる、いや動き出すのはいつになるかは、わからねぇ。」
「そして、その情報が確かな理由の証明。なぜ知り得たか。」
「すまねぇが、それは言えねぇ。」
「ただ、これだけは信じてくれ。」
ただ、真っ直ぐとヒイラギを見るヴァルカス。
ヒイラギも目線を外さない。
「魔族と一戦構えることになる。」
「この街か王都かはわからねぇ。」
「魔祖四厄災の1つが動くかもしれねぇ。」
「ほぉ?」
嬉しそうにするヒイラギ。
何故嬉しそうなのか。その理由はすぐに分かる。
「もし、この街で事を構えることになりゃー、、、、、」
「ヒイラギぃ。お前らの力が必要になるかもしれねぇ。」
「いや、必ず必要になる。」
「そんときゃー、俺と共に戦ってくれ。」
「頼む。」
「ヴァルカス。頭をあげてくれ。」
「理解はした。その為の昇格か?」
「いや、そうではねぇ。」
「けど、そうだとも言える。」
「受けて、、、くれるか?」
「我が断るとでも?」
「捻り潰してやろう。魔族など。
ヴァルカス。我らでな。」
「恩に着る。」
頭を深々とさげ、感謝の念を込める。
ヴァルカスという男。
この国2番目の都市のギルドを治めるだけの事はある。さすがだ。
「ヒイラギぃ、それとよ。」
「ここでの今までの話、内密に頼む。」
「無論だ。」
萌芽色の月が顔を出し切る程に時間は過ぎていた。
拳を突き出すヴァルカス。
「ほれ。」
「?????」
「お前も拳を出すんだよぉ。」
ニカッと笑うヴァルカス。
フッと照れくさそうなヒイラギ。
「男と男の約束だ。」
「ああ。」
こうして夜は更けていった。
かさなる拳。
雨上がりの澄んだ空気。
淀みなくながれる星空。
今宵も萌芽色の月が輝いている。
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では、また次回。




