ep.19 デーモンズ・ドロップ①
あちこちでまだ少しザワついている。
3人がフロアに戻ってきた為だ。
リリィの容姿。
ヒイラギとダウラの実力。
内容は様々だ。
「シュナ。リリィのカードは出来たか?」
どことなく。本当に気付くかどうかの違和感。
ヒイラギの声が少しばかり弾んでいるような気がする。
「ええ。機械も直りましてー、無事に。」
カードを受け取るリリィ。
カードにはしっかりと支援魔導師の記載。
「シュナさん!
ありがとうございますです!」
「?????」
直ぐに違和感を覚えるシュナ。
誰だってそうだ。
リリィのことを知っている者であればその反応になるのは必然。
「では、初陣だ。」
「シュナ、これを頼む。」
カウンターに出された紙。
【Eランク依頼 メシュ森林 ゴブリン討伐】
【Dランク依頼 メシュ森林 フォレストウルフ討伐】
【Fランク依頼 メシュ森林 薬草類生態調査】
「我はウルフ。ダウラはゴブリン。」
「そして、リリィが生態調査だ。」
「どうだ?ランク的にも問題はないであろ?」
「ええ。受け付けました。」
「ただし!ヒイラギさん。」
「アルブムさんは、今日登録したばかりの新規冒険者です。」
「くれぐれも無茶だけはしないで下さいよ?」
「まぁ、あなた方なら大丈夫でしょうけど。」
リリィを取られた。そんな感覚なのか。
少しムスッとしてシュナは言った。
「ああ。では、行ってくる。」
「シュナさーん!」
「行ってきますです!」
額に手を添え、敬礼のようなポーズで元気に駆け出して行くリリィ。
その背中を見送るシュナ。
「か、、か、、、か、、、、」
「可愛いぃーーーーー♡」
シュナさん。また目がハートですよ?
ギルド長室の窓から3人を見送るヴァルカス。
声を掛ければどれだけ気が楽か。
「リリィ。頑張れよ。」
我が子を送り出すような。
そんな背中でヴァルカスはリリィを見ていた。
森林へ向かう3人は途中の平原にいた。
「リリィ、まずはお前が使える魔導の確認をしておきたい。」
「はい!わかりましたしたーですです!」
どうやらリリィはダヴルへの昇華前では
・防御結界、防音結界
・索敵
・バフ、デバフ系
・ヒーリング系
が、使用出来たようだ。
「ほう。ではリリィ、今までに貼った限界の防御結界は何枚だった?」
「えと、、、」
「限界まで貼ったことが無いので確かなことは言えないんですけどけど。」
「多分15枚ぐらいですです?」
「その程度ではないと思うがな。」
ニヤリと不敵な笑みを浮かべダウラの方を振り向いたヒイラギ。
なにやら面白い事を閃いたようだった。
「ダウラ、お前結界は展開できるな?」
「ええ、もちろんです。」
「如何様にでも。」
「全てだ。」
その言葉に呼応するように結界を展開するダウラ。
冥族特有の紫色をした防御結界。
相変わらずの禍々しさだ。
そして驚くべきはその数だ。
魔導力、いや、冥力とでも言うのであろうか。
潜在能力をまざまざと見せつけるかの様に、展開した結界。
【23】
「よいか、リリィ」
「攻撃は最大の防御とはよく言ったものだ。」
「そしでまた、逆もしかり。」
「防御も最大の攻撃となりうることを、お前の目で確かめてみろ。」
「己の限界を己で決めず、全力を出してみろ。」
「ダウラのあれに、ぶつけて見せよ!」
「はい!わかりましたですですっ!」
静かに目を閉じるリリィ。
集中して結界を、限界を展開しようとしているのが伺える。
空気が変わる。
凛とした流れ。
淀みがない。
瞬間。
とんでもない結界が展開される。
同時にダウラとリリィの結界がぶつかり合う。
本来ならば仲間同士で掛け合わせて、防衛戦などで使用できる結界。今回はあえてそれをぶつけさせたのだ。
バリバリと音を立てて崩れ落ちる結界。
差は歴然だった。
リリィが展開した結界の数。
【94】
ダウラとリリィの23枚目の結界が割れた直後だった。
「あふぅーーーーーん。」
「リリィさーーーーーん。」
ドリルの様に回転しながら
魚のように宙を舞うダウラ。
ダウラさん。あんたってやつは。
どこのポジションを狙っているのだよ。
「驚いている様子だな?リリィ。」
「これが、今のお前の力だ。」
「、、、、、」
「、、、、、」
「凄い!すごい!すごーーーーーいっ!」
まるで子供のように喜ぶリリィ。
自分がダヴルへと昇華したことの実感が初めてここで湧いたのかもしれない。
「それにしても、ダウラよ。」
「やはりお前、少々気味が悪いぞ。」
ど、ど、どんまい。ダウラさん。
リリィの能力はダヴルへの昇華と共に凄まじいものになっていた。
索敵能力は平原を覆う程の広範囲。
恐らく、シブルクの街など余裕で覆う大きさ。
そして仕方ないとはいえ吹っ飛ばしてしまったダウラへ無意識に口ずさんだ詠唱、アルティメットヒール。
そのへんの支援魔導師では及ばない。
賢者ですらリリィという存在を前にしたら霞むであろう。
「ところでヒイラギさん?
私ずっと思ってたんですけども。」
「依頼で魔物を退治しますよね?よね?」
「沢山の討伐依頼があって、沢山の冒険者がいて、沢山の魔物を退治してくるのに、何故、魔物は減らないのですです?」
「ああ、それはダウラが教えてくれると言っておったぞ。」
「ダウラさん!ダウラさん!」
「ダウラさん!ダウラさん!」
ぴょんぴょんと飛び回ってダウラの口が開くのを待つリリィ。
「ちょっと、ちょっと。」
「リリィさん、落ち着いて下さい。」
ダウラの口から語られたのは
【デーモンズ・ドロップ 魔族の雫】
どうやら魔族が仕掛けている魔物発生装置のようなものらしい。
詳しく説明をすれば発生装置と少し違うが、まぁ人間から見れば同じであろう。
例えば、メシュの森林。
20を超える魔族の雫があるのだとか。
ただ、能力の低い者、言うところの低ランク冒険者ではそれを見つけることは出来ないのだとか。
魔族も馬鹿ではない。察知出来ぬ用、何らかの術式をほどこしているのであろう。
まぁ、これによりゴブリンやオークといった魔物が魔族の雫を通じて森にやってくる。
だから、ゴブリンの集落を落とそうがいずれまた集落が出来る。
冒険者と魔族のイタチごっこである。
魔族の雫にも成長というものがあるらしい。
魔物をどれだけの量排出したかによってなのか、作り手によって成長度合いが違うのか。
そこの所はハッキリしていないようだ。
ただ、メシュの森林に点在する魔族の雫に関してそれほどの成長は今は見られていない。
何十年も同じようなイタチごっこが続いているからである。
ただ、悲しきかな。
そのイタチごっこが成立しているが故。
冒険者という職業が成り立ち。
それを生業とする者が生きていけるのも事実。
人間からしたら、魔族の雫は都合がいいのかもしれない。
もしやすると、魔族からしても人間がその様に思ってくれている事自体、都合がいいのかもしれない。
遠い、遠いどこぞやの城でとこぞやの王がこう述べているかも。
デーモンズ・ドロップの錬成を急げ。
まぁ私の妄想は置いておこう。
そう話す3人の前にフォレストウルフが姿を現す。
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拝読いただきありがとうございました。
では、また次回。




