ep.11 エテルナケア②
本当に驚いている。
掻い摘んで話を聞いたとは言え
彼女のその発言には理解が出来ない様子のシュナ。
ヴァルカスの話を聞いている時から
どこか、表情の変化が激しい。
もちろんリリィを想ってのことだろう。
一喜一憂とはこの事を言うのであろうか。
いつもの受付カウンターに立つシュナとは違う様子で口調を強くする。
「私は反対です!」
「はい、今日からいきなり冒険者です。だなんて!」
「前みたいに、リリィちゃんだからって強い態度で物を言う。」
「少なからずそういう輩が冒険者にはいるんです!」
「だから、、、」
怒っているかと思えば、急に目に涙を浮かべる。
本当にリリィが心配で、心配で仕方がないのであろう。
普段のリリィはここ、シブルクの街のギルドで仕事をしている。
普段の業務はと言うと、主にクエスト依頼書の受発注・管理、報告完了書類の整理、素材・魔道具の在庫管理、等など。
いわゆる裏方、いや事務員といったところだ。
冒険者と関わる事が少なく
表立って業務をすることはほとんどない。
しかし、受付嬢に欠員が出て少しばかり受付カウンターが忙しいようであればカウンターに立つこともしばしば。
そんなリリィだから、そこを狙って
いちゃもんを付けてくる冒険者も少なくはあるが、一定数はいる。
しかしながら普段から受付嬢として
カウンターに立つことは少ない為
名前はほとんど知られていないが
顔はある程度割れている。
恐らくシュナはその点を心配しているのであろうと思われる。
そんなシュナなの想いを知ってか、知らずか。
ヒイラギが動く。
「ならば、これならばどうだ?」
不安そうなシュナに言う。
「安心しろ。リリィが居なくなるわけではない。
少しだけお前らから見た印象を操作するだけだ。」
幻影の鞘 アイドロン・シース
ぱっ、と一瞬だけ、ほんの一瞬だけ
リリィの身体が青白い光に包まれる。
背は少し高くなった様に感じる。
いや、雰囲気のせいか。実際には変わっていない。
透き通るような色白の肌。
その肌はリリィそのもの。
肩ほどまであった髪。
その髪は腰ほどの長さになっている。
金色だった髪。
少しだけ青みがかった光るような白色。
透き通るような肌とは同調している訳でなく
綺麗にその髪は存在感をだす。
リリィ・アルブム。白きユリ。
その名に寄せたかのごとく。
なんとも印象敵なのが瞳だ。
右目はとても大きくて青い綺麗な瞳。
それはリリィだ。紛うことなき。
驚くは左目だ。真紅の瞳。
ボーダーアイ。俗に言うオッドアイ。
蒼×紅。静寂×喧騒。薄明×暁光。
リリィの本格の他人格を表した。そんなところか。
粋なことをしやがる。
目には少しだけ前髪がかかっている。
16歳前後に見て取れる印象はガラリと変わり、すごく大人びて見える。
その姿を見て全身の力が抜けたヴァルカスが一言。
「なんてこったぁ。」
「【エテルナケア】様、、、、。」
その姿を見た瞬間、これまでの不安はどこへやら。見惚れるように見つめるシュナ。
しかし、ヴァルカスのその言葉を聞いたシュナもハッとする。
「ええ。ヴァルカスさん。」
「エテルナケア様。そのものとしか、、、」
息を飲む2人。
この世界にも神はいるとされている。
実際にいるのかなど、誰にも分からない。
誰が言い出したか、どこの神だそれ。
と、人が安易に考え出した妄想。
そのような神を含めたらキリがない。
全ての神を覚えるのは無理がある。
それほどまでにこの世界の人の中には神がいる。
女神 エテルナケア
永遠の慈愛 と称される神。
この世界の中ではメジャーな方ではない。
しかしながらとある地方では絶対的崇拝の対象。
もしかしたらヴァルカス、シュナの両名はその地方の出身、またはその地方に近しい土地の出身なのであろう。
どこにでもありそうな話だが。
これは話しておくべきである。
宗教間対立。
全ての神を覚えるのは無理がある。
まぁ崇拝している神が違えば争いが起きてもなんら不思議ではない。
むしろ、これに関して言えば争いに宗教が巻き込まれた。それが正しいだろう。
とある地方で起きたいざこざ。
争いと言うには規模が小さい。
が、そのいざこざに巻き込まれてしまった神が2人。
女神 エテルナケア。と、もう一人。
女神 リリフィアナ。安堵と純潔を称する神だ。
もちろんこの2人の女神にも神話がある。
あれだ。
青き衣を纏て金色の野に降り立ち、、、
聞いた事があるようなあれ。
あれのような神話があるのだ。
しかしながら争いの最中。
具体的には誰がどのようにして、そうしたのかは分からない。
ただ、人々が人々を陥れる為に。とのことだけは分かる。
神話が書き換えられたのだ。
それもただの噂話によって。
書き換えた。という表現は少し違うのかもしれない、書き加えられた。これがしっくりくる。
エテルナケア、リリフィアナ。
両女神はそれぞれの神話で闇堕ちした。
そう記されているのだ。
そのような内容にいつの間にかなっていた。
悪魔に心を売った女神。
悪魔落ちのレッテルを貼られているのだ。
それが故に、今はこの2人の女神を
崇めるべき対象とする者は少ない。
そして、女神を模写、、いや、実際に会った事のある人などいないであろう。
しかし、実際に像や壁画にえがかれている。
ヒイラギが創り出した今のリリィはエテルナケアと酷似している。
エテルナケアの姿をその像や壁画で見たことがあるヴァルカスとシュナ。
だから口からその言葉がでてしまったのだ。
しかし当の本人は何が起きているのか分かっていない。
鏡を指さし、姿を見るように促すヒイラギ。
「こ、こ、、、、これが、、
わ、、、わた、、、、し???」
無理もない。
自分の瞳に映る自分。
その自分が見た事のない姿をしているのだから。
しかし、リリィは驚きはせず。
ただ、ただ、見とれている。
しばらくしてヒイラギがアイドロン・シースを解く。
リリィにはどこか信じられないといった感情とは別に、瞳の中に強い意志を感じ取れた。
そしてシュナもまた、先程までの感情は消え去っていた。その瞳は未来を見ていたのかもしれない。
ヴァルカスは言う。
「シュナぁ、リリィ。
お前ら、今日からの業務にぃ新たな業務を追加しておくわぁ」
2人揃ってヴァルカスを見つめる。
その言葉を言いたく無さそうなヴァルカス。
その言葉を聞きたい2人。
「引継ぎな。」
「わーったら仕事してこい。」
にこやかに足取り軽く。
2人はギルド長室を後にする。
少しだけ物悲しさが見え隠れするものの
リリィを想い、くっついて歩く姿はまるで姉妹のようだ。
美人で後輩想い。
いや、リリィには特別想い入れがあるのであろう。
リリィ・アルブム。彼女の名が大陸にとどき渡るのはまだまだ先の物語。
こんな素晴らしい妹をもって。
そう語るかのような誇らしげなシュナの背中を見送るのであった。
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では、また次回。




