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捨てる神に拾う神  作者: たま


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8

「オイッ、俺の荷物捨てたんだってな。」坂巻や木嶋改め花輪海斗と朝から元カレの荷物ゴミで捨てたと自販機前で話してるとイチャモンつけに来た。

「何、勝手してんだよ!そんな事していいと誰が言った?」とまだ彼氏風吹かす。

「返事全くしないんだもん。こっちだってゴミがいつまでも部屋にあるのは不快だわ!」プイッと無視した。

「ゴミだと?俺の荷物はゴミじゃないだろ?」何か勘違いしてる男がのたまう。

「いいや、お前の荷物なんてゴミ以下の生ゴミだ!

すぐ出さないと部屋が臭くなるぞ〜」坂巻くんが先輩なのに全く敬語を使わない。

「コイツ!生意気だな!口に利き方わきまえろ!」元カレは序列に厳しい。坂巻君が英語で何か言い出した。スゴい速さだ。

「このくらいの英語も分からなくて先輩風ふかすなよ!おかげで外務省で恥かいたわ!」とプイッとする。

「お前ら!先輩を何だと思ってるんだ!」となぜか実彩子の頭を叩こうとする。そう報復しなさそうな相手に打撃を与えて見せしめにする、駅のぶつかりオジサンと同じ心理だ。

その手を大柄な海斗が抑える。

「やめて下さい!僕の妻ですよ、実彩子は。

だいたい女性に手を出すなんてカス男しかしませんよ!」元カレはビックリして口をパクパクさせてる。

「お前、誰だよ?見かけない奴だな!

こんな40近いババアを嫁だと?

頭おかしいんじゃないか?」元カレが大声でまくし立てる。

「頭のハゲかけたオジサンに妻をババア呼ばわりされたくないですね!アナタこそ40越えのゴミだと聞いてますよ。え〜と、名前はゴミ山さんでしたっけ?」大柄な海斗がガシッと実彩子の肩を抱いて元カレを見下す。

「俺はハゲじゃない!元々髪が薄いんだ!」ハゲと言われたのがダメージだったのか頭頂部を必死で押さえてる。

坂巻が腹を抱えてクックックと笑いを押し殺す。

実彩子は初めて実彩子って呼び捨てされてビックリしたり顔を真っ赤にしたり色々忙しくて目がキョドる。

そのまま元カレはどこかに行ってしまった。

「お前〜良いぞ!若いのに見どころあるじゃん!」坂巻君が海斗を気に入ったようだ。

「参議院から追い出されてきた奴だから、また変な奴かと思ったが。」と大きな海斗の背を叩く。


防衛庁の杉下と予定を合わせて神楽坂のスペインバルの個室に決めた。そこで海斗を部下として紹介して歓迎会の夜に介抱してもらった縁で結婚した事も告げた。

「君〜方法を教えてくれ!どうやって実彩子さんを口説き落としたんだい?」防衛庁のアラサー独身部隊はそれが気になるようだ。

チラチラと実彩子の方を海斗が見るが、実彩子がキッとにらんで口にバツのポーズをする。

まさかお漏らしして、それを黙って貰うために結婚したとは言えない!

「先輩が体調悪くなってタクシーで送ろうとしたんですが、俺が腹壊してタクシー降りてしまって、仕方なくホテル入ったんです〜」とか適当に話してる。

「エッ、それでそれで?それで結婚話になる?」と意外に紳士な杉下が食い下がる。

「い、いや〜お互い体調悪いのでベッドで横になってゆっくりしてたらそうなりまして〜」とか適当な話をしてる。

そんなロマンチックな話では無かったのだが!

どちらかと言えば風呂場のゴミ袋が臭かった夜なんだが…

「いや〜後学(こうがく)にするよ。実際それで結婚してるんだからね!スゴいよ!僕らも1週間後には結婚してるかもしれないんだからね!夢があるよ!」なんか勝手に美化されて、でも防衛庁の官僚とは親睦を深められた。

「ハハハッ、ウンならぬ運がついたんだね!僕も腹が弱いから、今度やってみよう!」と防衛庁のガタイの良い明るいアラサーがダジャレを言う。

実彩子の顔面が歪んだ。


神楽坂をプリプリしながら実彩子がくだる。その後を海斗が謝りながら追いかける。急に腕を掴まれて路地に押し込まれた。

「な、なによ!」口を押さえてシッと言われる。海斗の視線を追うとこんな夜に赤ちゃんを前抱きした女性がフラフラと神楽坂を歩いてる。髪を振り乱して赤ちゃんは泣き続けてる。

目を皿のようにして誰かを探してる。

「参議院の時の仲間だよ。ほら、俺より先に衆議院入った。」と促されて顔をよく見たらスッピンで眼鏡なので分からなかったが、確かに後輩だ!

「な、なんで?今、産休なのに!こんな時間にこんな所歩いてる訳ないのに!」声を殺して実彩子も驚く。

前からいかにもキャバクラの女の子らしい子と腕組んで元カレが歩いてくる。

「アナタ!なんで帰ってこないのよ!この子が、この子が可愛くないの?

もう40なんだよ?この子が成人する時、定年だよ?

どうすんのよ?お金貯めないと!無駄使いしないでよ!マンション買ったばっかりなんだよ?どうすんよの〜っ!私、産休で働けないのに!」と元カレの胸ぐらを掴むと赤ちゃんいるのに蹴られた。

「お前のどこが女だよ?化粧しないわ服装だって気使わないし!ちゃんと部屋も綺麗にして飯作って三つ指ついてお迎えしろよ!できなきゃ女じゃあねえだろ?」といつの時代の女だと言うような事をのたまわる。

「ちょっと!」実彩子が飛び出そうとしたが、海斗に止められた。

「ダメだ!夫婦の問題だよ。介入しちゃダメ!」と止められた。「アイツと結婚した女の人は、ああやって頑張るしかないんだよ。離婚しないなら、耐えて泣いて

ああやって頑張るしか。

子供を育てていくためだよ。」元彼は笑いながらキャバ嬢と去って行った。

「アイツと結婚したら、アレは実彩子さんだったんだよ。」海斗の言葉が染みる。

フラフラと後輩は立ち上がる。元彼とキャバ嬢の後をまたゆっくりと赤ちゃん抱いたまま追いかけだした。

「男を見る目が母親にないと、結局子供に迷惑掛かるんだよ。実彩子さんが捨てられたのは、ラッキーだったんだよ。

お母さんがそう言ってたんだろ?分かった?」海斗に抱きしめられて後輩の代わりに実彩子が泣く。

母に元カレのお母さんの写真見せた時、不愉快そうだった。「化粧濃いね〜花柄ジョーゼットスカート!

旦那にかなり絞られてるね。整形もしてるね〜旦那さん浮気性だったのかな?細いね〜太ると罵られるだろね。」と。

後輩は泣くことも忘れて子供のために亭主を追い掛けてふらふらと歩いていった。

元カレと結婚生活続ける道を選ぶなら、元カレのお母さんみたいになる道しかない。

でも、それは昭和の女の生き方だ。令和の彼女はどう生きるのか?

実彩子は後輩の代わりに泣いた。

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