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もう周りは暗がりだがマンション前に人が立ってる。
「あれ?坂巻くん!どうしたの?」実彩子は驚く。
「それはこっちのセリフです!木嶋も先輩もあれから全然連絡つかないし〜」と膨れる。
「そう言えば!連絡来てたよね!ゴメン!
今朝からバタバタしてて、やっと今帰宅なんだよ。」実彩子が照れる。
「歓迎会は無事にお開きにしました。もう!ひと言くらい入れて下さいよ!先輩らしくないなぁ〜」と坂巻がプリプリする。
「ごめんこめん、本当にゴメン!良かったら近くの焼き鳥屋おごるよ?
話せば長い1日だったのよ。」と肩を叩く。実彩子の部屋は目黒の繁華街の路地のマンションだ。社畜らしく駅から5分だ。
歩いて路地を抜ければ、すぐ焼き鳥屋だ。グイグイと坂巻の背中を押した。
お漏らしの話と実家が反社だけ抜いて、事の顛末を話す。
「へえーーーーッ!アイツ、そんなに稼業継ぎたくなかったんですね!先輩と結婚してでも!」と坂巻が驚く。
「うん?その言い方はトゲがないか?」思わず実彩子は坂巻の脇を小突く。
「社員の生活も掛かってるからね。覚悟も無いのに継ぎたくないんでしょ。お兄さんが居るなら継いで貰いたいでしょ?自分だって公務員で安定した仕事あるし。」反社の話抜いても違和感ないと思うが。
「お父さんがご病気だから急いでたみたいだよ。まっ、他に好きな娘できたら別れれば良いんだし〜
とりあえずだよ。」と話す。
「にしても顔がニヤけてますよ。昨日までずっと土気色の顔してたのに〜」とからかう。
「やっぱり?あんなに酒席で体調崩したこと無かったからビックリしたよ。
私でもやっぱり失恋の痛手は堪えてたんだね〜」とウンウンと納得する。
「あれ?でも1人で帰ってきたんですか?もう入籍したのに?」坂巻君が腑に落ちないって顔をする。
「う〜ん、あっちの家も見てきたけど〜どうしょうかなあ〜引っ越し大変だよ〜10年くらい住んでたし。荷物がスゴいんだ。」そう引っ越しを考えると気が重い。
まだ元彼の荷物もそのままだ。捨ててくれて良いとも何とも返事はない。
そういう奴なのだ。勝手に捨てれば文句がまた言えるから。
だが、もうハイハイと聞く気はない。こっちから聞いたのに返事しなかったのはあちらなのだ。
彼氏でないなら、普通に文句言える。と言うか捨ててしまおう!今夜まとめて!
「明日、燃えるゴミの日だ!今から、とにかく彼の荷物まとめて出してくるわ!」と席を立つ。
「あっ、それは良いですね!考えたら月曜日楽しみになってきた!やってやって下さい!」坂巻君もアイツのせいで外務大臣に怒られた事があるのだ。
おかげで坂巻くんまで外務省の担当外されたのだ。
手伝うと言われたが、ゴミ袋2個くらいで済みそうなので断った。
「今夜中に出してやるわ!朝8時だから!」袖をめくって立ち上がった。
焼き鳥屋を出て駅へ向う坂巻を見送る。
確かに元彼と付き合ってる間は、こんなに近くなかった。同じ部屋に居るがもっと距離あった。家も蒲田なので遠くはないが…
「よっぽど元彼が嫌いだったんだろな。」と思った。




