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捨てる神に拾う神  作者: たま


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5

歓迎会の翌日は休みだったが、事務局長に実彩子から連絡を入れた。長年のキャリアと実績があるからこそ連絡を入れられる。

これが酔ってタクシーの中で後輩の膝上でお漏らししたなんて知られたら…終わりだ。

「家の近くのカフェまで出てきて下さるって、署名を貰いましょう。そっちは?」実彩子が木嶋に聞く。

「兄貴はまだ相手が見つかってないみたいです。マチアプで探してるんですが、やはりバレるとお断りされるみたいで3人目もダメだったみたいです。」木嶋くんがニコニコしてる。

それは好き嫌いより重要だろう。

実彩子は40近いし片親だし、元々関西人なので◯◯組はあまり馴染みがない。母は気にしないだろうし、弟2人もIT関係だ。障害らしい障害がない。

マチアプする人は、それなりに親を安心させたい人だろう。勘当される!

木嶋の母も親兄弟から勘当されてしまったらしい。

「俺、公務員成りたかったんですよね、絶対!

でも役所とか結構調べるんですよ。意外に特別職公務員で国会事務が穴場だったんですよ。」木嶋君がニコニコと横浜行きの私鉄に乗りながら話す。

実彩子の戸籍が横浜だし事務局長のお宅もそっちなので横浜に向かった。

「実彩子さんの苗字ですね、今日から。嬉しいなあ〜」実彩子の名刺を見ながらニコニコしてる。「花輪海斗かあ〜」と声にして照れている。

「事務手続きが面倒だけど大丈夫?銀行とか?」実彩子が心配する。

「でも女性は皆やってることですからね。大丈夫です。婿養子って、今は成れないですね。それを知りませんでした。」海斗が意外そうだ。

「うん、父亡くなってるし母だけだしね〜旧姓に戻るのが面倒でそのままにしてるだけだし、うちは。

家らしい家なんて存在しないから、大丈夫だよ。」実彩子が母にラインするとスタンプだけが返ってきた。

それくらいどうでも良いことなのだろう。

「条件の良い人が見つかってラッキーでした。

兄がマチアプした時は焦りましたが。

こっちは参議院でウチが昔世話してた議員が俺の顔覚えてたみたいで。異動騒ぎでそれどころじゃ無かったので。…お漏らしされて驚きましたが、良かった〜」海斗が天を仰いでるが、早くその記憶を消してもらいたいなと実彩子は思う。

それに詳しく聞けなかったが、実まで出してないか?気になる。ゴミ袋に詰めて口が縛られた衣類を嗅いだら、ちょっと臭ったのだ。

とにかく戸籍を売ったようなものだ。

「その話は一生内密でお願いね。戸籍を売ったんだから!」と実彩子が恨めしそうに海斗をにらむ。


この年でお漏らしは相当こたえる。

昨日は自分で思うより精神的肉体的に参っていたのか?参議院から異動してきた後輩が泣き喚いて道端に寝っ転がってた話を聞いて呆れていたが、自分も失恋でダメージが酒で出たのか?

「そう言えば、昨夜その話して婚姻届書く時って私…何着てたの?」パンツもズボンもゴミ袋の中だった。風呂場のシャワーの記憶あるが…

だんだん頭が普通に回りだすと色々不安が増えていく。

「エッ、シャワー浴びさせて〜バスタオルで拭いてたら、急に真っ裸で土下座してましたよ。後は裸で話して婚姻届書いてくれて…」海斗が空恐ろしい話を淡々とする。思わず口をふさいだ。

「もう、良い!もう、全部早く忘れて!お願いだから!」実彩子はもう倒れそうだ。

「汚れてなかった下着とブラウスは自分で着てベッドに入って行きましたよ。俺はソファで寝ようと思ったんですが、途中で寒くなって婚姻届も出すんだし良いかって思ってベッド入らせてもらいました。すいません。」とペロッと舌を出した。

会った上司は、「今流行の0日婚だな!」と驚きながらも祝福してくれた。木嶋の実家の話は伏せた。

役所の休日窓口に出して完了した。

「ありがとうございます!新しい戸籍が作れて助かりました!どうしますか?同居するなら、僕の家広いですよ。見てみませんか?」と誘われたので一応見に行くことにした。

豊洲のタワマンだった。思わず見上げる。

「ここなら永田町すぐ行けますから♪」海斗が中にスタスタ入る。

「家賃高いでしょ?給料で払える?」実彩子が心配する。「エッ、これは父から生前贈与で貰いました。名義も書き換えて税金も払ってます。」と事もなげに言う。

「う〜ん、人にバレたらヤバくない?」実彩子は心配する。「エッ、ココは永田町で働いてる公務員多いですよ。皆は結婚してローン払って住んでますが。

ちゃんと下調べしてから買いましたから大丈夫です。

会議期間中入ったら激務になりますからね。近くないと身体壊します。」ちゃんと調べて買ったようだ。

「兄も僕も住む所は生前贈与で貰ったんですよ。

ただし跡目を継いだ方は、他の不動産や株や証券やら全てを受け継ぎます。組の責任者なりますからね。

兄はあっちの晴海の方のタワマン買いました。今は広告代理店勤務なんですが、合コンとマチアプに燃えてますが、もう観念するしかないでしょう。」とベランダから晴海埠頭の方を向いて高笑いした。

兄弟でよほど引き継ぎたく無かったのだろう。

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