悪役令嬢も悪役令嬢で頭足りてない。その愚痴は私ではなく本人に言うべき事なのだ。
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婚約者様の膝に乗せられて、
抱え込まれている様な姿での挨拶。
当然その姿に南の公爵令嬢は驚きを隠せない。
変な言い方だけど「はしたない」って奴なのだ。
高貴なるお方…と言っても一応立場上は同じ公爵令嬢なのだが、
その高貴なるお方をお迎えしているのにも関わらず、
私が取っている格好は婚約者様にべったりとした格好。
「ようこそおいて下さいました」とは言ったものの、
どう考えても上位者が下位の者を出迎えたような、
礼儀に準じた心配りの出来ている恰好とは言い難いのだが…
もうこれ以上格好を気にしている余裕がなくなりつつあると言った方が正しい。
一秒たって早く帰ってドレスを脱ぎたいのだ。
―お出で下さいました―
なんて言いたくもないが婚約者様は私の事をよく理解していらっしゃるから。
私をしっかりと抱きかかえて更に動かない様に力強く私の体を両腕で固定して、
膝の上から動かない様に乗せているのだ。
スカートの中で思いっきり大きくガニ股に開いている両足と、
ドレスのスカートを美しく広げる為に作られている座面が、
少々低めに作られたカウチは、更に強固に私が動かないように細工されている。
その座面が低めのカウチは婚約者様が両足を揃えて座ると、
座る位置の低さから私が跨っている婚約者様の両足は少々立気味になり、
跨っている太腿は当然であるが斜めになるのだ。
するとどうだろう?
身に着けた固い矯正具と下着は婚約者様の履いているズボンの上を、
スルスルと滑り婚約者様の方へ滑り落ちる形を自然と取らされるのだ。
股を開く事で少しばかり呼吸が楽になる代わりに滑り落ちた私は、
婚約者様から離れる術を失うのである。
その上から片腕はお腹に回され腰の部分をしっかりと固定されれば、
私がいくらぐったりしているとしても、
その固すぎる腰回りを締め上げる矯正具とコルセットは、
私が婚約者様の上で倒れたりすることを許さない。
背中が自然と婚約者様に凭れかかる形を取って、
私の頭は丁度婚約者様の胸元にトンとぶつかり、
まるで高めの背凭れがある椅子に座っているかのよう。
そして腰回りをガッチリと固定された上で今度は脇下付近から、
斜めに手を通して肩を掴んでいる様に見せながら、
首を支えて貰えば私は全身から力を抜いてがぐったりしているとしても、
令嬢らしくおずおずと座っている様に見えるのだ。
ふんわりスカートを広げるパニエと腰を形作っている固い矯正具の、
所為で私がはしたないガニ股開きをしている事は解らず。
私を乗せて太腿を斜めにしている婚約者様の両膝は、
潰れるはずのスカートの形を整えて、
その上に手を乗せればスカートの不自然さなんてない。
私を大切にする婚約者様の出来上がりなのである。
―さっきまでの激論と謁見の間での私に対して―
―戦いを証明するために傷だらけの腕に見せると言う―
―令嬢としては最大級の辱めを受けた私は?―
―それらで傷ついてしまった(笑)私の心の傷を癒すべく―
―婚約者様にやさしく抱きしめられて?―
―メンタルケアを受けている真っ最中なのだ?―
一応、南の御令嬢にはそう見えていてもおかしくはないのかもしれない。
けれど南の公爵令嬢は当然であるがその事に苦言を呈する事も出来る。
今の私と婚約者様のいる場所はあくまでも「王城」なのだ。
同格の令嬢。
同格の立場であるがゆえに建前上は、礼を尽くすのが当然だろう。
けれど、婚約者様は良く私の状態を解っていらっしゃるのだ。
流石に限界なのだ。ドレスが苦しすぎるのだ。
予定通りなら私は既にお屋敷に帰宅してドレス脱ぎ捨てて、
マッサージ辺りでも受けている。
そのつもりだからこそ苦しすぎる事でも私は「我慢」していたのだ。
こうも登城時間が伸びてそして会議に参加してやっと帰れる。
この苦痛から解放されると思っていたその時に唐突の先ぶれ。
南の公爵令嬢の訪問は。
当に過ぎている私の我慢の限界を当然の様に続けろと言う所謂、
―矯正具(拷問具)を外すな―
―苦しみ続けろ―
と言われている様な気分になるのだ。
だが南の公爵令嬢は今日の謁見の所為で未来がどうなるか解らなくなった。
その責任の一部は私にある事は確かなのである。
私が呼び出されたのはヒロインを無理矢理、屋敷に連れて帰っただけだが。
そのお陰で?とんでもない問題を巻き起こす事になっているのだからねぇ。
イベントを壊した後に王子とお話をしたはずなのだ。
まぁ…
あの短時間であっても王子は汚染されたみたいだから、
相当周囲の思考?をバカに出来る汚染力というか、
感染力を持っていたのかもしれない。
言うまでもないけれど、よく聞くシナリオの矯正力なんてモノだったら、
どうしようもないけれどね。
神に愛されたヒロインちゃんにどう抗ったとしても、
勝ち目はないって事になるのだから。
けれど少なくとも構築した防衛網で人知れず辺境の村々で無下に、
村が襲われ虐殺され続ける隣国からの「削り」はなんとか終わらせる事が出来た。
それだけ変化させる事が出来た事をゲーム通りに進まない事を、
証明できた事を喜ぶ出来事なのかもしれない。
乙女ゲームの知識に助けられながら、
生かされたと思えば私も相応に恩恵はいけているのだ。
「神」を信じないといけない部分も当然にある…
それは王子が奈落の底に転落したとしても仕方がない必要経費だと、
思うべきなのかもしれない。
ヒロインの為の世界になどしてたまるかと考えていた部分はあるのだけれど、
まだ私は少なくとも「乙女ゲーム」というヒロインの持つ素敵パワー(笑)が、
終わったとは思えないのだった。
そして、愛を育めていたどうかは解らないけれど、
未来の悪役令嬢として仕立て上げられヒロインの為に「断罪」される、
南の公爵令嬢は「今」はまだ悪役令嬢とし振舞う必要がない以上、
素敵な未来の王家の王妃と言う立場に固執しても別に私は驚かない。
だた…
北の領地の現実を知っていたかどうかは別の問題だとは思う。
平和なお花畑の南の公爵家2家と王家で完結したこの王都は、
ヒロインと言う「ドラマを作る」異分子が無ければ、
結局「北」を見捨てる事だけは確かで、
南だけで作られる秩序は当然であるが「北」を盾として扱い、
その侵攻に耐える役をその痛みを引き受ける事だけはしなかっただろう。
結局犠牲を強いられるのは北だけ南はヒロインが退場したとしても、
基本的にその考え方を変える訳じゃない。
王家と南の2家で行われる密談の様な事とその結果出来上がった、
北を犠牲にし続ける戦略。
「北」を犠牲にぬくぬくと育ったこの王国は最後まで隣国から、
侵略を受けていると言う事実を認めて来なかったのだから。
戦うと言う考えは当然生まれない。
その事が如実に表れているから、先程まで開かれていた会議。
王子をどうやって支援するのかを決める会議は訳の解らない言い訳じみた、
主張しか出で来ないと言う結果となっていたのだから。
南の公爵令嬢は椅子にこそ座ったのだがそこから何も話さない。
ただたた私と婚約者様の状態を見つつ。
私達を観察するようなそんな感じで何も言わないのだった。
さっさとお話して用件を済ませて欲しいのだが?
そわそわしだしたと言うか顔を赤らめて何も言わない。
…ああ、刺激が強すぎたのかもしれない。
まぁ男女がべったりとくっついていると言う姿を曝す事自体が、
はしたない事とされる世界なのだ。
南の公爵令嬢には婚約者様の姿は刺激が強すぎたのかもしれないわ。
ただどうでもいい事だがこうして、ベタベタすることを気軽に許す理由は。
一応「婚約者様」だからと言う点もあるのだが何時「誰」が「いなくなる」か、
判らない生活をしていたのだ。
カナリアをする前「私」直属の親衛隊だった人に「私」を、
守らせる為にさせていた事でもあった。
子供の「遊び」であるのだがよく私を護衛する人の一人に、
だっこ「させていた」時期がよくある。
女性騎士男性騎士問わずにだ。
それも「本来」なら許されない事であるのだ。
立場をわきまえよって奴なのだがそんな事はどうでも良かったのだ。
打算が無かったとは言わない。
けれど守られる「私」はその時平然と
「私の為に死ね」と言わなければいけなかった事がきつかった。
その報酬は当然お父様が払っていた事も知っているし解っていた。
だがそれでも「私自身」が何かを「納得できなかった」部分もある。
自身の勝手な不満とは解っていても、
それでも何かを周囲に与える事が出来たらと、
何の気なしに始めたのが「我儘お嬢様」の触れ合い(笑)なのだが、
思いの外、近衛の方々はこの「我儘お嬢様」との触れ合いは好評だった。
肩車や抱っこは当然として、潜り込み始めたかった当時は少なかった、
兵士専用の訓練施設に興味があるふりをして潜入して、
模擬剣を振う真似に訓練所付近で運動と言う名の「遊び」は当然、
カナリアとしての活動の前段階のためだった事も言うまでもない。
そうやって男女関係なくその場になじみ訓練所の常連となった事。
令嬢らしからぬ行動を「我儘お嬢様」で通した部分もあったが。
少なくとも護衛に必要以上に近かった事から、
私と戦った「戦友」達は「何」を守っているのか、
それを正しく理解していたと思う。
「故郷」を文字通り命懸けで守る事。
だから「私」が傷だらけになる事も許してくれたし、
文字通り命を懸けて戦ってくれたのだ。
確かめ合っていた「生きている事」を確認すると言う意味で、
触れ合う事は重要な事だったしね。
とはいえ流石に年頃になり婚約者様との婚約が決定してからは、
当然その「確かめる役目」は婚約者様が引き継いで、
その意味も多少様変わりしてはいるものの…
少なくとも私自身には必要な事として完結してはいる。
あの戦場で私を抱きしめてくれて、
支えとなってくれた何人もの近衛がいたから。
「今」私はここで、婚約者様の膝の上で「ぐったり(笑)」できるのだ。
結果論で「納得する」とかそんな「考え」では無くて、
感じさせてくれる人達がいたから私はカナリアを続けても、
最後まで潰れなかった。
あの時抱きしめてくれた「人達」がいたから、
あの戦場で「温かく」感じる事が出来た「戦友」がいたから。
私は「心」も腐りきらなかった。
私にとって触れ合う事。
誰かに体を預ける事は「生かされている事」の確認でもあり、
当然「生かされている」からこそ、その「恩」を生かしてくれた本人か、
その「本人」が残した大切な「誰か」に帰さなくてはいけない。
王宮での苦しい時間だってそう考えれば我慢は出来るのだ。
我慢だけだけど。
体はとっても正直なのである。
疲れていたら婚約者様から離れないのである。
今は動かそうとしても腕に力が入って動けないのだが。
決してドレスの重量に負けた訳ではないのだと言い張るのだ。
しかし話をする体勢でない事は確かで、
それでも婚約者様の隣に腰かけるなりなんなりするべきなのは解っている。
けれど当然の様に婚約者様は私を放さないし、
会話の準備が出来てないと思っている。
令嬢同士の会話である以上「私」と南の公爵令嬢との会話となるべきで、
当然であるが私の加護者である婚約者様は口を出さないつもりでいるらしい。
もう一つ言うのであればさっきの会議でその流れを主導していたのは、
南の2公爵家なのだ。
その会話の流れ私の腕を見ても当然の様に「節約」をした事は、
許せる事ではなさそうだった。
結局、南の2家は婚約者様にとっては何を言っても味方となる事はないと、
結論付けられる結果となった事は確かだった。
それは「どうでもいい2家」から「敵として見ておいた方がいい」に、
婚約者様にとってランクアップ?した事は確かであり、
そうなれば当然それに連なる立場である「南の公爵令嬢」も敵ではないにしろ、
警戒するべき相手となってしまっている事は確かなのだ。
当然その警戒するべき相手の前で「私」を手放すなんて事は考えないのだ。
私がどんなに顔に「笑顔」を張り付けようと、
少なくとも「南の公爵令嬢」と共に入って来た、
護衛騎士達を見る目は笑っていない。
私の体がきつい事も解っているからなおさらだ。
ただこのままでは何も始まらない事だけは確かで。
そうなれば帰る時間は更に遅くなる。
この会談さえ終われば今日の「予定外」の行動も終わる。
さっさと帰りたい私は、もう仕方がなく話しかける事をせざるを得ない。
「ええとそれで、ご用件は何でしょうか?」
「そ、その姿は私に対しての当てつけですか?!
わ、私が愛して王子殿下に愛してもらえなかった事に対する!」
…この期に及んで南の公爵令嬢様から出てきた第一声がそれだった、
ただこの瞬間、何しに来たのか理解出来てしまった理解出来てしまったから、
さっさと帰りたくなる。
唯の愚痴を聞いて貰いたくて来たにすぎないのだ。
確かに私はヒロインを退場させて学園であの場を無理矢理収めた。
その結果「よく話し合え」と言ったにもかかわらず、
結局説得できなかったと言う事なのかもしれない。
真向正面からこの「喧嘩」を買うべきなのかどうか悩む所なのだけれど、
買っても問題ないよね?
ほとんど言いがかりなのだから。
帰りたいと言う思考が加速して、
―ええそうですよ。今婚約者様と愛を語らっているのです―
―邪魔だからさっさと帰れ―
とかなんとか言ったら、大人しく帰ってくれるのだろうか?
そんな私の雰囲気を感じ取ったのか
婚約者様はキュッと腰と胸に回した手に力に手を込めるのだ。
それは「愛している」の合図とかそう言った事ではなくて。
反論するな何も言わずに聞き手に回ってやれと言い意味。
私を制止する方向で動いてきたのである。
なんだかなぁ…
私の知らない「苦悩」が南の公爵令嬢にはあるのかもしれない。
「私は、私は努力しました。
で、殿下を愛しました。愛してあげれば愛してくれると思ったのです。
けれど殿下は!王子殿下は私を愛して下さらなかったのです!」
何をどうやって努力したのか解らないのだが…
ただ王子にとって南の公爵令嬢は「乙女ゲーム」の通りに、
「悪役令嬢」として階段をかけ上がっている最中だったのかもしれない。
学園に入る前に婚約が決まって?(いたかどうか知らん)
今までは一目に触れなかっただけで入学までに王子との関係はボロボロだったと。
乙女ゲームの断罪。
学園3年間で恨み辛みが溜まりきった王子が暴発する為の土壌は、
この南の公爵令嬢を見るだけで「なんとなく」ではあるが、
出来上がりつつあったのではないかと…
彼女の言葉を聞いていると思えてならないのだった。
愛してあげれば愛してくれる?
何を言っているのか解らない。
そもそも家同士の繋がりで、
「愛する」「愛される」と言う関係は後回しだろうに。
未来の「王妃」になる立場なのだろうから当然感情のコントロールも、
出来なくちゃいけないし、出来ないなんて言わせて貰えない。
そんな事を考えている「私」はぜんぜーん感情のコントロールは出来のだが。
私の感情はさておき、この未来の王妃候補だった彼女は結局どうしたいのだ?
どうしたかったのだ?
何をどう努力したら愛して貰えなかったと言う結論になるのか私には解らない。
現在進行形?で私は婚約者様から偏愛を受けているのだから。
そもそも公爵令嬢なんて立場なのだから「お家の為に生きる」のが、
当然として教育されたのではないのかね?
他人の金で苦労もせずにのうのうと「美しく」そだてられたのだから、
その役目はどんなに苦しくとも果たさなくてはいけないでしょうよ。
「わ、私は、何かを…
間違えたのでしょうか…
未来は決まっていたと言うのに。
その未来の為に努力してきたと言うのに…
王妃となって殿下を支えられれば、良かっただけなのに」
途中から涙ぐみ、震え声で訴えて来る南の公爵令嬢。
ただその言葉を聞いた私が思い浮かべる事はただ一つ。
なんだ。
ただの幸せ自慢か。
王子殿下がこの度めでたく国境線の町に引っ越すと言うのだ。
だったら婚約者らしく?付いていけばいいのではと思ってしまう。
何を言いたいのか解らないと言うか、南の公爵令嬢と王子殿下の差は、
親の用意したレールの上を走る事を嫌がったか、そうでないかの差でしかない。
南の公爵令嬢は「幸せなレール」を歩いていると思っていて、
王子殿下は「自由のない不幸なレール」だと思いそのレールから降りたのだ。
どっちの決断が正しいのか解らなかったが、
私と婚約者様の「レール」は地獄に繋がっていた。
その地獄へと繋がるレールの分岐点を何度も何度も命がけで切り替えて、
生き延びてきたのだ。
その裏側でこいつらは結局北の2家が命がけで作り上げた平和を、
浪費し遊んでいたって事だった。
隣国の危険な兆候をもみ消して楽園で遊んでいた大人達に育てられた、
次代の者達がマトモな訳が無かったのだ。
その時私は完全に思い違いをしていた事に気付いてしまったのだった。
ヒロインが物語から退場したら宮廷抗争は抑え込める。
ヒロインがヒロインたらしめるのはその世界がヒロインの思った通りに、
用意されているから。
だからこそ「断罪」は行われるのだと勝手に思い込んでいた。
そしてそれが「神」の意志であるのだと。
そう思いたかったのだ。
カナリアが成功したから私はシナリオが存在するのだと思い込み、
ヒロインが転生者で生家と仲が悪くても健気に優しさを保ち続け、
泣きながら入学して学園で努力するそして色々な物に認められて…
そう言った事柄全てが「強制力」なんてものだけで片付けられる物ではない。
本当にシナリオの強制力なんて物があったらその前提条件が、
すべてが変わっていく訳が無いのだ。
現実とゲームの狭間なんて言い方はしたくないけれど、
この世界がゲームでないから北の2家は生き延びられた。
私がカナリアをした事も当然あるけれど、
それ以上に隣国の軍略の正しさがあったから侵攻を私が確認出来たのだ。
本当にゲームが下地にあって「強制力」があったのなら、
北の2家は今存亡の危機になって私は王都に避難するレベルなのだ。
ではご都合主義的に生まれてくる展開は何なのか?
それはそう言った思惑が世界的になる様に作られていたからに他ならない。
強制力など無くとも当然の様に王子は婚約破棄をして卒業後は、
宮廷抗争が起こる土台が出来ていると言う事なのだ。
それは異物であった「ヒロイン」を排除しても別の誰かを、
巻き込んで物語は続けられたと言う事に他ならない。
私は場を荒らすヒロインさえいなければなんて考えていたのだが
それが間違いで卒業パーディーで「王子殿下」という爆弾がいれば、
誰かを犠牲に「断罪」が行われるという…
その原因が「目の前にいる」のである。
彼女の口から零れ落ちた一言「愛してあげた」と言う言葉は、
上位者からの言葉に他ならない。
ただでさえプライドだけは高い王族が「あげた」なんて言葉を使おうものなら、
その言葉だけで「王子」のプライドは傷ついたのだろう。
…おそらく王族としてとの務めとか何とかいって次に待っているのは、
「〇〇してあげた」シリーズ。その一つ一つが王子を「ダメ」に見せて、
王子殿下は、南の公爵令嬢に劣等感を抱き始める。
二人だけの関係で周囲に他人がいないのであれば何ら問題は無かったのだろうが、
学園という他者に見られる場所に出れば自ずと南の公爵令嬢は、
王家に相応しいかを見られ続け心を病む事になる。
そして王子は王子として南の公爵令嬢の立ち振る舞いが良ければ
「劣等感」を覚え、同時に男尊女屈のこの国では自分の婚約者ですら、
思い通りに動かせないのかと言われるのだろう。
南の公爵家がその財力を使って最高の公爵令嬢を作り上げれば上げるほど、
王子殿下はその「最高で完璧」な姿をした公爵令嬢に、
劣等感を抱かずにはいられない。
王族のプライドがそれを許してくれない。
王子が感情に忠実で抑えが効かなく成長したのは、謁見の間での出来事で、
確認済みだし教育係がその辺りの二人の関係を軽んじたとしても仕方がない。
結局幼い頃からの友好関係の構築に失敗していた、王子と未来の悪役令嬢に、
学園のあの時点で「よく話し合え」なんて言うだけ無駄だったのだ。
そして「愛してあげた」南の公爵令嬢が、ここに来た理由は、
公爵家が用意してくれていた、歩くはずだった「レール」が、
壊れてその先が無くなったからに他ならない。
決して「王子」を心配している訳ではないのだ。
お似合いと言えばお似合いの二人だったと言事なのだろう。
でだ、そこまで理解できる言葉をはいて下さりやがった私が、
南の公爵令嬢に掛ける言葉は何が良いのかって話なのだ。
いや…そもそも気になったのが王子が前線に行く事になったのだ。
王子と南の公爵令嬢との婚約関係はどうなるのだ?
「私は王子のパートナーとなるべく、苦しい令嬢生活を続けてきました。
そして未来の王妃として王を、そして国を支えるつもりだったのです。
けれどそれも叶いません…
もう私には、その資格がないのです…」
悲劇のヒロイン?ぶってはいるが、
なかなか酷い事を言っている事に気付いているのだろうか?
彼女の頭の中では「王子は国境で死んだ」と言うストーリーが、
出来上がっていると言う事なのではなかろうか?
私は小首をかしげて疑問に思うのだが、
そうすると首に手を当てて頭を支えている婚約者様が、
その腕をクイクイと動かして私の頭を刺激してくる。
それは私の疑問に対する回答なのである。
傾いた頭は宛がわれている大きな手でての甲を使って押し戻される。
それは「王子は死ぬことはもう決まっているのか?」に対する回答。
―まだ死ぬと決まった訳じゃない―
否定し疑問に思うなと言う意味で当然頭を元の位置に戻された、
私は、それはそうだなと思うしかなかったのだ。
自身によっているのか思い込みが激しいのか、
同時に婚約者様からの締め付けは緩み、
その事に反論してやれと言うサインでもあった。
南の公爵令嬢からの訴えと言う名の愚痴を聞きつつ。
彼女が遠回しにねちっこく言って来ている事は至極簡単。
「私の将来のお相手である王子様が前線に行くのだ。
そこで死んでしまったらどうするつもりなの?」
結局落ち度と言うか失言で前線に行く事になったとしても、
婚約は解消されていないと言う事なのか。
失言王子と一蓮托生なのであれば仕方がないのかもしれないが。
けれど王子が何処まで生きられるかなんて私達の関与する所じゃない。
今までどれだけ「国境」の武力衝突に無関心を貫いてきたのかと言いたい位だ。
それを今更「どうしよう?」「どうなるの?」と、問われた所で当然であるが、
私達の知ったこっちゃない。
当然南の公爵令嬢の将来がどうなろうと気にする事なんて出来ないのだ。
それだけの状態に追い込んで置いて、支援をしろだなんてちゃんちゃらおかしい。
大切な王子様が生きられるかどうかを決定するのは、
王家の「手厚い」支援であるが当然であるが私達じゃない。
「そうですね。
国境の町は遠いですが…
殿下は王子として素晴らしい実力を持っているのです。
きっと王国の為に立派に生きてくれるでしょう」
どれだけ私達にどうにかしろと騒いだところで今更決定した、
王子の支援の内容が覆る事はないし究極南の公爵令嬢の言っている事は、
今まで支援してこなかった王家とそれに追従した、
南の公爵家の問題に過ぎないのだ。
それを未だに「北」の責任にしたがっているとしか私には思えず、
国と南の公爵家が北を支援すると言う事が、
形となるのはまだまだ先になりそうだった。




