第5話 勝戦記念日
昨日の事はニュースにはならなかったようで、軍は完全に隠蔽したようだ。
しかし、ネットで検索すると所長の名前が変わっていることから概ね想像できる。
まあ、俺としては陸軍の持つ兵士の数や兵器の性能などは粗方把握することができた。
「見せてよ」
悪魔は俺から情報の書かれた資料を受け取ると、ゆっくり読み始める。
「資料の見方分かるのか?」
やはり気になってそんな事を聞いてしまう。
「頭痛い」
「なら、やめとけ」
俺は資料を自分の机の引き出しに入れ、鍵をかけておく。
「ねえ、明日だよ」
「分かっている」
明日はいよいよ過激派の集会が行われる日。
この集会が無事に終われば多くの信者が国の国会を取り囲んでしまうだろう。
俺は事前に調べてある報告書を読みそう判断する。
過激派の人数は全国300万人にも及ぶ。
それらをまとめる明日の集会は何としても潰さなければならない。
明日10月1日は日本では勝戦記念日。
200年前のエネルギー資源獲得戦争の勝利を祝う日。
だからこそ過激派はこの日を選ぶ。
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10月1日 金曜日
この日は勝戦記念日で祝日。
街はどこもかしこも人でごった返しており、人々はお祝いムードに包まれている。
「総司、海斗早く早く!」
「あんまりはしゃぐと転ぶぞ」
時刻はまもなくお昼を迎え、俺は海斗と色葉とともに屋台を食べ歩きしている。
日本の国旗がそこら中に飾られており、過激派だけでなく一般市民も戦争で得た明るい未来を喜んでいるのは事実だった。
「ねえ、あれやろうよ」
色葉が指差すのは、ゴム玉を撃つ射的だ。
こういうのは500年前から何も変わっていない。
「どれを落とせばいいんだ?」
俺は標的を色葉に聞く。
「えーとね、あの髪飾りがいいかな」
俺はピンクの髪飾りを狙い3発立て続けに撃つが一つも当たらない。
「うーん難しいな……」
弾はあと1発。奇跡でも起きない限り無理だろう。
だが恐らく、海斗が撃ち落としてくれるのでとりあえず撃ってみる。
「当たった……」
弾は見事に髪飾りの留め具の部分に当たり、店員が俺に髪飾りを渡してくれる。
「付けてよ……」
恥ずかしそうに色葉は後ろ髪を束ねる。
「どう?」
「似合ってるぞ」
俺は率直に褒める。
「これ大切にするね」
色葉は嬉しそうに俺に約束してくれる。
「ああ……」
少し返事がそっけなさすぎただろうか。
「海斗はどうだ?」
俺が海斗の方を振り向くと大量の景品を抱えていた。
「相変わらず運動神経がいいんだな……」
「勉強は苦手だけど、それ以外なら得意だからね」
「流石海斗! これ食べるね」
色葉はご機嫌で海斗の取ったお菓子の景品を持って行ってしまう。
「あはは……」
これには海斗も苦笑いをする。
過激派の集会まであと5時間。
俺はそれまでに2人をここの会場から遠ざけなくてはいけない。




