03.スタートダッシュ 《後編》
私は今、
すごく後悔している。
後悔したまま、自分の部屋にひとり。
私は安物のパイプベッドに寝転がる。
ー〝新入生歓迎会出る人ォ!ついてこい〜!〟ー
歓迎会があるというのに
私はそれを咄嗟に拒否してしまった。
自己紹介でさえ、上手くできないのに
みんなで集まって会話をする時間が
あまりにも苦痛だからだ。
それに、お酒は二十歳になってからと
親に教えてもらっている。
どうやらこの手の新歓コンパというのは
お酒を飲むらしいのだけれど
法律で決まってることを
私は破れない。
他の人がどうかは知らないけど・・・
今頃、チーム転石のメンバーは
私の事を笑っているのだろうか。
私のいないところで、わたしの悪口を・・・
考えたくもない事が
脳裏を過ぎる。
ただ、その反面。
達成感があった。
勇気を出して
サークルに入ったこと。
自分を変える為に
演者になる事を希望した事。
私の計画に
一歩ずつ近づいている。
私の目的は
彼氏を作り、
処女の純情を捧げる事。
勉強ばかりの高校時代に
置いてきた青春とエロ・・・
それを手にいれる。
その為にこの大学に来たんだから。
私は思い出す。
今日、私と関わり合った男。
オリエンテーションの時に隣の席にいた
大人しそうな男。スマホいじって、私には
全く興味なさそうだった。
劇団ファンクションの部室にいた男。
少しだけ会話して終わった。
チーム転がる石の同期の男とも
ほぼ、会話はしていない。
・・・世の中には
幾多の男がいて、
女より数が多いというのに。
この工学部に限っては
男子の比率が多いというのに・・・
どうして私には
男に関わる機会が少ないのだろう・・・
あれ、そもそも・・・
私ってどんな人が好きなんだっけ。
ぶっちゃけた話、誰でもいいや。
初回の貫通で血が出るそれを
早いところ破ってくれる人がいれば
それで多分、いいと思う。
男の人も、結構、
誰でもいいからヤりてぇ、なんて人いるし。
そういう感じで
私を抱いてくれる人は
現れると思うし。
[解説しよう!そんな事はない!誰でもいいと言う男に限って選り好みするものである!]
私は不器用だ。
同じ学科のオリエンテーションで
皆が必死に友達を作り
ラインを交換していると言うのに。
それが出来ない。
皆んなが同じサークルで
集まろうとしている中に
私は逃げてしまった。
自分を変えるために
演者になる事を選んだけれど
きっと私には・・・無理だ。
後悔がつきまとう。
風呂が面倒で
シャワーを浴びる。
やり方の分からない
とりあえずで、時間をかけた化粧。
これを見てくれた男の人が
何人いるのだろう。
化粧って、面倒。
化粧をする同級生を
バカにしていたけれど・・・
こんな時間をかけていたなんて。
そして鏡の前に立って
驚く。
は、鼻毛が出ていた!