23.大きな声の出し方 《3/4》
ダサいスポーツカー。
その助手席に乗っている私。
嫌な気分になる、香水。
不安定な動きのマニュアル車。
田舎道を加速する。
怖い。怖い。事故りそうだ。
鷹飛車先輩は、自分のドライビングテクニックを
見てくれと言わんばかりに車を運転している。
母親のノロノロ運転が懐かしい。
安全運転の方が絶対にいい。
「幕間。すまなかった。最近、2年と3年が弛んでてな。・・・あれはアイツらに向けて言ったんだ」
「えっ・・・」
「だから、気にしなくてもいい」
ブォオオオアオオン。
故障しそうなうるさい音。
「ただな、幕間。お前の演技は、恥ずかしさが抜けきってねえよ」
またしても谷底に落とされる気分。
「はい・・・」
「お前さぁ、なんで恥ずかしそうなわけ?」
あれ?謝罪って言われて来たのに
また説教されてない?私?
「なんででしょう、緊張しちゃうんです」
「もしかして、幕間って処女か?」
ブロロロロ・・・
処女を指摘された悲しさと鷹飛車先輩の
あまりのデリカシーの無さに怒り。
昇華に言われるなら、まだ良いけど。
異性の、このブサイク眼鏡パーマ。
こいつに言われるのは、ムカつく!
「関係あります?今?」
私は早口で返答する。
「いやぁ、処女ってさぁ、処女膜が邪魔して声小さいんだよね」
どうしてこんな最低な事を言えるのだろうか。
一刻も早く、降りたい。
私の空気を察した先輩はフォローを入れる。
「今のはジョークな」
無視を続ける私。
空気を察したダサスポーツカーは
踵を返して、コンビニに向かう。
「まぁー、あれだ。もし、そういうのコンプレックスだったら、俺に相談してくれよな」
こ、これは・・・
これはつまり、性交渉!?!?
ついにその時が?
いやいや、こんな中身も気持ち悪い男に
私の純情は捧げたくない。
無視したまま、挨拶だけして
車から降りた。
誰でも良かった筈だったのに。
ただ、処女の純情を捧げるのは
誰でもよかったのに。
少し気付かされた気がした。
誰でもいい、なんて事はないって。
むしろプラスに捉えるんだ。
私は性交渉されるまで、レベルアップしたのだと。
見た目も気を使うようになったんだ。
私はレベルアップしたのだ。
ただ、悔しい。
それを馬鹿にされたことが。
ムカつく。
イライラする。
私は涙を流しながら、帰路を歩く。
足元しか見えない。
見たくない。
コンクリートの道。
そこが急に明るくなり、
ブロロロロロと音が鳴る。
振り向くと、原付バイクがある。
半分だけヘルメットのそれを脱いだ彼が
「よぉ、てか、え?泣いてる?」
と言った。
楠田くんだった。




