21.大きな声の出し方 《1/4》
これまでのあらすじ。
などと私は自分で整理する。
親友の昇華と宅飲みした私!
初めて飲むビールの味!
格上女子の部屋!
そしてバレバレの処女!
昇華のエロトーク!
そして明かされた!
昇華の秘密!
ー〝私は劇団ジャンクションで、マクは劇団ファンクションね〟ー
謎が解ける。
あの日、私にビラを配ってくれた
綺麗な人は、劇団ジャンクション所属だったのだ。
どおりで、こっちのサークルには
現れないわけだ。
あのビラの通りサークル棟に来て
1つしか演劇サークルがないと勘違いしていた私は・・・
迷わず、ファンクションへ行ってしまってた。
場面は切り替わる。
ここは鏡張りのトレーニングルーム。
「櫻子?知ってた?華大には演劇サークルがふたつあるんだよ!?」
興奮冷めやらぬ私は、櫻子に尋ねる。
「うん」
知ってるけど、何か?みたいな顔をしている。
「俺は迷ったんだよねー、ジャンクかファンクかさぁ」
茂木くんがそう言う。
「いや、茂木はジャンクションじゃないでしょ」と櫻子。
「そうかー?」
「えっ、なんか違うの?そのふたつって」
「まー。簡単に言えば、楽しくやれるのがこっち。こっちがコントなら、あっちはドラマをやりたい、そんな感じかな」
櫻子の例えはよく分からなかったけど
たぶん、昇華が所属するから、おしゃれな感じなのだろうなと私は思った。
「そんな事より、練習しよ〜ぜ」
茂木くんはやる気だ。
今日も台本を片手に読み合わせていく。
基本的には会話劇だから、大きな動きはない。
台本に集中すればいいから、
少しだけ恥ずかしさはないけど、先輩達が品定めするように私達を見ている気がして、緊張する。
何回も読んだセリフに対して
少しだけ感情を込めたり、読むスピードを変えたり
間を意識して喋ったりする。
凄い。
なんだろう。
楽しい。
ここはゆっくりしたほうがいいよな、とか。
こういう喋り方のほうがウケるな、とか。
きたきた、この台詞。
櫻子や茂木のこの台詞が好きだ、とか。
楽しい。
ト書きに従って演技するって言っても
例えば〝嬉しそうに〟って言っても
その表現方法は私次第だ。
これが、演じるって事なのだろうか。
「はい、一旦やめ」
鷹飛車監督が手を叩く。
達成感があったけど・・・
彼は嫌味な眼鏡を輝かせて、フィードバックを行なった。
「茂木。あまりにもおふざけすぎる。お前は給食袋担当なんだから、シリアスさも必要。櫻子。さすが経験者だが、ふたりに合わせた演技を」
「・・・そして幕間。ぜんぜんダメ」
上手くやれたつもりだったのに・・・
「棒読み。何より、声が小さい。別に今全力じゃなくてもいいけど、ここで声張れなくてどうする?マイクなんてつけないんだぞ。公演は客と演者の距離がある。聞こえないってのが1番ダメ。やる気ある?」
やる気ある?
やる気出してたとこだよ!
悔しくて、何も言えない。
私の中での出来ている、は。
受け手にとっては、出来ていない。
だった。
声が小さい。
どうすればいいんだろう。




