17.ハート柄のパンツ 《後編》
文明の力って凄いと思う。
お客さんがタブレットで注文したメニューが
私たちのいるキッチンの小さなプリンターから
発行されるのだ。
そのレシートみたいなのをもぎ取って
そのメニューを作っていく。
私の役割は皿洗いと盛り付けと
ビール他、ドリンクを注ぐ係。
1番の強敵はビールだ。
グラスを斜めに傾けて、ビールサーバーの
レバーを下ろして注ぐ。
よく見るCMのイメージ図みたいに
綺麗な泡を作るのが難しい。
とにかくビールってみんな飲みたいらしくて
ビールばかり作らされる。
それなのに一向に上達しない。
その合間を縫って盛り付けを行い
少しの暇があれば皿を洗う。
キッチン内を一番うろうろしているのは
私だ。
グラスに注いだビールをトレイに乗せる。
もぎ取ったレシートをそこに乗せる。
カウンターにそれを置くと、ホールスタッフがそれを取りに来て、客に持って行く。
「ありがとう!」
楠田くんは、他の人と違って
ありがとう、とか、おつ、とか、よろ、とか
コミュニケーションを取ってくれた。
案外、悪いところだけじゃない。
そんな気もした。
「ちょっと!幕間さん!?」
別のホールスタッフが私に文句を言いにきた。
・・・ハイボールとレモンサワー2つ。
それを作りわすれていたのだ。
「ごめんなさい、ごめんなさい」
「早く!作って!お客さんに怒鳴られた!」
急いでオーダー通りのものを作り
その人に渡す。
「怒られるのは私なんだからね」
厳しい顔で私を叱る先輩。
ああ、今日の反省会確定だ。
「まーまーまー、そんなカッカしないよ!」
楠田くんがその先輩を宥めた。
上下関係は分からない。
先輩はバツが悪そうに去っていく。
「なぁ?新人なんだし、ミスするって」
楠田さんはカウンター越しに私に話しかけてきた。
「すみません・・・」
地球の終わりってぐらい、テンションが下がる私。
「でも元気は出してね」
そう言って去っていった。
遅刻ギリギリにくるし、タバコ吸うし
異性の前で平気で着替えるし。
グイグイくるし。
苦手だった。
でも、見習うべき点もある。
なんだかんだで彼はチームワークを
重視しているのだ。
最近のサークルでは
チーム転がる石の雰囲気は
ちょっと微妙だ。
権力者の鷹飛車監督率いる軍団vs意を唱えた反乱分子の新人チームみたいな構図が出来ている。
そのせいで、別にみんな仲は良いけど
少しぎこちなさを感じる。
楠田くんみたいに
私も・・・私も、ああやって・・・
チームワークとか考えられたら・・・
なんて考えてるうちに
その日のバイトは終わった。
私は皆より早く上がる。
そそくさと着替える。
こういう時、私はとある癖がついた。
鏡を見て、化粧をちょっと直す、
と言うこと。
なんだかんだで
変わってきたのか、そんな気がするけど。
男の気配は全くない。
こう、運命の出会い的なもの・・・
ないのだろうか。
そうこうしているうちに
大型連休に入る。
連休明けから
サークルの活動は激しくなっていく。
頑張らないとな・・・私。




