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09.サタデーテレホン 《前編》



土曜日の私は、自他ともに認める堕落した生活を送っている。

スマホでアニメを流しながら

ゲーム機を操作し、寂しいからテレビをつけている。


ベッドで寝転がりながら、ゲームを楽しむ。

そこには私を叱る親はいない。


洗濯機が回転を終えるのを待ちながら

私はゲームに没頭する。



(はぁ・・・)



また負けた。

捕まえたモンスターを対戦させるゲーム。

ネット対戦で私のレートは低い。



人間関係の無いこの土曜日の空間は

とても幸せだ。



私の頭の中には・・・

銀髪の彼の姿が思い浮かんでいた。

名前も知らない、バイト先の彼。


あー、あんな人に抱かれたら

私の純情はいくらでも捧げていい。


そんなくだらない事を考えていると

アニメ動画が止まる。

電話が鳴った。



最悪だ。



「もしもし?」

「張子。連絡もよこさないで」

耳に刺さるような声。

母親の声。


「ごめん、忙しくて」

「大学はどう?」

「うん、楽しいよ」

「勉強は?」

「うん。てゆーか、まだ最初の部分だけだし」

「頑張って大学入ったんだから、勉強も頑張らなくちゃダメよ。・・・え?お父さんに変わるね」

お父さんの声。


「楽しいか?」

「うん」

「父さんもな、大学凄く楽しかったからな。母さんは勉強勉強言うけど、留年しない程度でいいんだ。まぁ張子がやりたい事あるなら別だけどな。勉強以外を楽しむんだぞ。母さんうるさいから、切るぞ」


そう言って会話は唐突に切れた。


父さんは私の理解者だ。

高校時代、私の漫画本棚を死守してくれたのも

お父さんだ。

母さんは私の事をあまり理解はしてくれない。


勉強以外を楽しめ。


留年しない程度に。


私は父の言葉通り進めていると思う。

サークルもバイトも、なんとなくいい感じだ。

後悔ばかりするけど。


私はゲームを辞めて着替えた。

買い物がてらに、天気もいいからお散歩しよう。

そう思ったのだ。



コンクリート造りの少し高めのアパートを出て

私は歩く。


ここは私がいた街よりは都会だけど

都会から来た人からは田舎と呼ばれる規模の街。

私が歩いて行ける範囲で生活は事足りる。



「あっ」



田舎の道で、出会ったのは茂木くんだった。

まさかの遭遇。毛量が多くて、中学生みたいなファッション。


「こんにちは・・・」

「プライベートでも声小さいね!」

茂木くんはこの前のエチュードのノリを演じていて寒い。


「ごめんなさい」

「謝らなくていいよ」

「じゃ、また」


そう言って茂木くんを抜き去ろうとする。



いいのかな、私。

同じサークルの同じチームの同期。

いいのかな。こんな感じで。



私は振り向いた。



「茂木くん」

「ん?」



引き留めたものの・・・

何を言えばいいのやら。



「茂木くんって演劇初心者なんだよね?」

「うん」

「どうしてあんなに堂々と出来るの?」


堂々と。痛々しい演技を出来るのだろう。



「逆になんで恥ずかしがってんのって話」



「ううんと・・・」

想定外の質問返しに私は言葉に詰まる。



「恥ずかしさが無くなれば、幕間さんともっと良い芝居が出来ると思うわ〜」



そう言って茂木くんは去った。



どうして恥ずかしいんだろう。




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