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ヒーローと悪役  作者: n00n
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ヒーローとヴィラン


第一話「再会」




『戦争の中で生まれたヒーロー。』


 僕が二歳の時、世界で大きな戦争が起きた。とある国の科学者が一体の生物兵器を生み出し、隣国の民間人約100万人を無差別に殺害したことが発端だった。その国はその科学者に重い罪を与えるべきだ多くの国は考えていたが、その国は何も与えずむしろ庇護していた。多くの民間人を失った国はもちろんその国に憤慨し、話し合いを行うことを要請した。しかし、その国は断った。このことにより、家族・友人・仲間を失った者たちが集結しその科学者を殺害することを計画し、その国に攻め込んだ。そして、すぐに絶望した。大量生産された生物兵器。武装したその国の軍人たち。攻め込んで二日後にとうとう多くの民間人を失った国は滅んだ。

 そこからその国は多くの国に攻め込み、滅ぼした。世界対一つの国だったが、どの国もその国の勢いを止めることができなかった。多くの人間は絶望した。希望はない。捕虜にされても実験の被験者にされるだけだ。人々はどうしたら楽に死ねるのか。これしか考えなかった。


 とある軍人が泣いていた。

 仲間である者たちが二匹の生物兵器に殺されたからだ。絶望と恐怖。次は自分が殺される。目の前で転がっている仲間の死骸を見てそう思った。歯がガタガタ鳴る。銃を持っていた両手に力が入らない。涙で目の前がぼやける。

 

 生物兵器が俺に近づいた。ああ。もっと長く生きたかった。


 













 一人の青年が現れた。欧米人のような顔立ち、青い瞳、ガタイの良い体型。そしてアメコミに出てきそうな服装。いかにも『ヒーロー』と呼ばれる見た目だった。その青年は恐怖に染まった軍人の前に現れた。


 一瞬だった。その生物兵器たちが粉々になったのは。


 軍人は言葉を発することができなかった。目の前の光景が嘘みたいだったからだ。その青年が振り返りこちらを見たとき

「もう大丈夫だっ!私があなたたちを助けにここにきたのだからっ!」


 その青年は多くの人間を殺した生物兵器に立ち向かい、倒した。その姿は生き残った人々に希望を与えた。彼を称え、応援した。


 青年がその国のトップに出会い、倒すのではなく話し合った。その人間は青年の圧倒的な力に怯えていたため、戦争を終結させるという約束をすぐにのんだ。


 戦争が終わった後、多くの国同士で助け合い協力し合った。

 その中には、生物兵器によって殺された家族・友人・仲間を失った者たちによってその国を攻め込むといった計画があったがその青年により和解した。


 そして青年は気づいた。生物兵器を生んだ科学者がどこにもいないことに。

 だが、今はとにかく戦争が始まる前の世界へ、いや前の世界より平和な世界を作るために働くことに時間を費やした。そうして、世界が作られた。

 また、その科学者を人々は『死神』と呼んだ。意味は、、、そのままだよ。


 

 そこから13年。

 僕は高校一年生になった。その戦争は約一年間続いたが、当時2~3歳の僕には記憶が残っていない。だが、僕はこの話が大好きだ。というよりその青年が大好きなのだ。その青年はヒーローの名前として「ヒーローのジャスティス」と人々の間で呼ばれ始めた。

 僕も彼のようなヒーローになりたい。小さい時からそれだけは変わっていない。ただかっこいいんだ。ヒーローが。ジャスティスさんが。

 とはいっても僕にはこれといった能力がない。頭はそこまでよくないし、顔だって付き合うか付き合わないかでいったら付き合わないを選ぶような顔だ。身体能力だってそこまで高くない。いわゆるどこにでもいる、いや個性のない人間だった。ただ、ヒーローになることを望む人間だった。

 

 だがな、ヒーローは誰にでもなれる時代になった。しかし試験が難しい。そのうえ、頭のいい科学者たちがジャスティスさんの体を解析して、多くの手術で身体能力、超能力が身につけることが可能になったが適性があるらしく、試験に合格しても適性がなかったものが毎回必ずいるらしい。ちなみにその人たちを「ネイビー」というらしい。つまり、誰にでもなれるが一握りという感じだ。


 そして、なによりヒーローになったとしても戦う相手が相手なんだ。といのも、ジャスティスさんが現れたときにギャング、マフィア、ヤクザ、チンピラといった人たちがいなくなった。ジャスティスさんとかヒーローたちが倒したって思うだろ?違うんだよ、これが。

 

 全員死んだ。


 嘘だって思うだろ?でも嘘じゃないんだよ。


 その日は何の変哲もなかった。いつも通り人々が暮らしていた。

 ある少女が水を汲みに朝早くに目を覚まし、川に向かおうとした。美しい、透き通った太陽の光を直接浴びようとドアを開けた。


 近所で有名なギャングたちがバラバラに体を刻まれていた。大きな檻の中で。


 他の地域では夜眠りにつこうとしていた少年が同じような形でマフィアと思わしき人々の死骸を見つけた。


 その日、多くの人が悲鳴をあげトラウマを植え付けられた。


 多くの学者たちがこの事件について話し合う。そこで

「あの科学者が関わっているのではないか。」

そう結論をだした。そう死神。


 その科学者を警察、ジャスティスさんが追う反面、多くの科学者はその科学者がより強い生物兵器を生み出していいよう「ヒーローの生産」を考えた。これはヒーローの試験がなんでできたかの話。でも今のヒーローたちの敵はどっちかというとそいつじゃない。現在、敵は六人確認されている。そいつらはヒーローたち以上の力、または同等の力を持っている。その科学者と関係があるのではないか?と考えられているがその証拠がないためあまり信用されていない。それにその科学者は容姿に名前、性別すらわからない。知っているものは全員死んでいるし、何よりその科学者と思わしき人物は、寿命によって死んだ。

話を戻すと、その六人によって多くの民間人は毎日死んでいる。なぜ殺しているのかそれはわかっていない。ちなみに、名前は『ヴィランズ』。そのままだな。まあ、民間人の間で作られたから深い意味はない。ただ、我々。いやヒーローの敵だということはわかっている。


 



 僕の一日は朝日を浴びて始まる。そして、すぐにジャスティスさんの活躍を確認するため新聞を読む。そして、その記事の部分を切り抜く。

「今日もさすがです!!!ジャスティスさんっっ!!」

 そして、朝食をとりながら母親と軽い会話を交える。

「今日はどんな活躍を彼はしていたの?」や

「忘れ物は無い?」なんていう質問に僕が返すところから始まる。

 ちなみに、僕に父親はいない。二歳の時の戦争で死んだ。それ以上は知らない。ただ母が言うには「あなたとよく遊んでいた」らしいが、そんなの覚えていない。


 電車に乗る揺れる電車、機械音、いつものなんら変わり映えのない朝の登校の一部だ。

 

 





 

















目を開けると大きな真っ白い部屋にいた。



 ??????


 何が起きた???

 

 記憶を蘇らす。電車の中で終わっている。そこから本当に思い出せない。




 周りの人間が目を覚まし始めていた。僕とおんなじ反応をみんなしている。




 何が起こっている??ここはどこ??なぜこ、、、、、、

「今からテストを行います。」


 アナウンスが部屋の中に響く。女性の声だ。


 テストって何だ、何をするつもりだ、


 心臓の拍動がうるさい。手が震える。怖い。怖い。


 周りを見渡すと窓ガラスが上にあった。そこに人がいて、ぼやけてよく見えなった。


 とにかく落ち着こうとしていたら


 ガッコンッッ!!


 大きな機関音がする。



「シューーーーーーーーーー。」


 煙が壁から突然現れた丸いパイプの中から出される。


 匂いがキツイ。すぐにそう感じた。


 怖い。何が起きている。手の震えがドンドン激しくなっている。


 バタッ、バタッ。人がどんどん倒れていく。悲鳴が上がる。女子高生が甲高い悲鳴をあげる。



 




 





 そこから数秒後僕は倒れた。意識がなくなっていく。涙で周りがよく見えない。

 ヒーローになりたかった。なんの特徴もなかった僕だけど、なれたらカッコいい僕になれると思ってた。画面に映ったヒーローにあこがれていた。ジャスティスさんになろうと毎日誰かを助けてた。近くで転んだ子供に絆創膏をあげた、おばあさんの荷物を持った、友達をいじめから救った、先生の重たい荷物を持った、おじいさんが道に迷ってたらすぐに声をかけた。全部カッコいいからやった。

 今から、多分死ぬんだろう。意識が遠のく中でなんとなく考えた。かっこ悪い。

「、、、な、んでこ、んな、、かっこわるい、、僕で、お、わるんだろ、、、。」

つぶやいても誰も反応しない。もう死んだのかな?、、、僕も、あと、、少しで、、、、。


























「んなことで死んでたまるかっっ!!」


叫んだ。窓ガラスにいる人間にだ。


フラフラでまともに立てなかったが、腹が立った。

きっと窓ガラスの向こうの人間はヒーローの敵、あのヴィランズの一人だろう。


「僕はっっ!!ヒ、ヒーローになるんだっっ!!お前なんかに負けるよう人間じゃないんだ、、、」

最後は力尽きた。息を荒くして。

とにかくこのまま静かに死ぬのだけは嫌だった。


「ぼ、僕は、、、!!!」


あっ、、、もう無理。力尽きる。瞼が重い。呼吸が薄くなる。


「、、、ハー-。ヒューー。ハーーー。」


僕の呼吸音だけ聞こえる。

そして、真っ暗な世界へと身を委ねた。































バッ!!!

目が覚めた。ここはどこだ??ベット??質素な部屋??記憶が、、、、あ、僕あの白い部屋で最後に、、っと考えていると


「死んでませんよ、あなたは。」


さっきのアナウンスの声だ。振り返ると、、、、、


きゅんっっ!!


な、なんだこの美女は、、、!!!テレビで出てくるアイドルなんかじゃ比較ならない!!

大きな瞳、真っ白く陶器のような肌、筋の通った鼻、おそらく宗教上の理由かは分からないがシスターの服装をしている、、、なんといか天使。そう天、、

「最後のあなたの言葉。大変面白かったですよ。」

あっ、、、最後の、、、、

「ただの民間人ならあのまま殺していましたが、あなたは、、、私に対して暴言ではなく『お前なんかに負けるような人間じゃないんだ』と言いましたよね。本当に興奮した。素晴らしい。あなたならきっと、、、。」

、、、、、、???

なんかよくわからない。

「、、えっと、あなたは」

「今はあなたについて知りたい。」

目が怖い。多分大きすぎるから、いや瞳孔が開いてる。、、てか瞬きしてる?さっきから口しか動いてないんですけど、、。、、、、待った。そんなこと考える前に他に考えるべきことがある。こいつ多分ヴィランズの一人、、。


僕は考えるよりさきに動いた。といかその子から少し離れた。

「怯えないで。あなたを殺す必要がないと判断しましたから。」

早いな、、、。


「あなたの言葉本当に面白かった。今まで、叫ぶ人はいても全員くだらなかった。とっても。」

今まで、、、。きっとヒーローたちが追っているヴィランズの一人だな。


「民間人の中からあなたみたいな人を探すのを諦めてました。最初の計画を変更し無駄な人間を排除するよう路線へと変更していました。でも、それは間違えだった。」

計画??何を企んでいるんだ。僕は目の前にいる人物に反抗的な目を気づかないうちにしていた。


「、、、何か詮索してますね。一体何を、、。」


やっべ、、、、。下手に怒らせたらヤバイ、、、、!!


「ああ。私はあなたが想像している通り私はあなた達から死神って呼ばれてる人です。」


、、、、、、!!??


「、、、え??」

六人の一人じゃないの??てかシスターの服着てるのに科学者なの??てか生きてたの??


「でも、死神みたいに私が直接人を殺したことは一回しかありません。だから、怖がらないで。」

、、、、。いや間接的に人をころしてますよね?てか一回人を殺したことあるのかよ、、、。


「そして、六つの私の作品。あなたに伝わるように言うと『ヴィランズ』は私が作りました。」

、、、わーお。あの噂は本当だったんだ、、、、。てか、なんでこんなにしゃべるんだろ、、。普通こういったことは僕みたいなやつにしゃべる義理なんか、、。

「そして、今日から七人になります。あなたが加わるから。」


「、、、、、、、、、、、、は??」


口が開く。脳が言っていたことを処理している。言っていることは理解したけど、意味が分からない。なぜ、僕が、、、??、、、、待った、さっき言ってた計画に、、、。


「、、、、詳しい計画の内容は、あなたの気分が落ち着くまで話さないようにしましょう。」

そういって、部屋から出て行った。


落ち着こう。今から僕はヴィランズの仲間になって、民間人を殺す?、、、、ダメだろっ!!


とりあえず、警察に連絡してヒーローたちがくるのを、、、。


荷物が無い。いつの間にか服が制服じゃない。なんか病院の患者が着るような質素な服。



無理だ。落ち着かない。意味が分からない。

ヒーローになりたかった僕は今から、ヒーローの敵になる、、、、、。やっぱりダメだろっ!!


とりあえず、寝よう。もしかしたら夢なのかもしれない。そうだ。きっとそうだ。



また真っ黒な世界に身を投げた。

疲れた。

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