第95話 どエルフさんと別れと旅立ち
「じゃぁ、俺たちはこれから南の方に向かうので」
「あの、本当にお世話になりました。また、何か機会があれば」
そうね、また会うことがあれば、一緒にお茶でもしましょうか、と、少女エルフに対してお姉さんぶる女エルフ。
ひと晩あけて、体力が回復した少年勇者と少女エルフは、世話になった男戦士パーティに挨拶にくると、そのままキャラバンに引っ付いて南の国へと向かった。
「ふっ、ではな。また、いずれどこかで会うこともあるだろう」
とは暗黒騎士が残していった置き手紙である。
行先も告げずに、男戦士たちよりも早く街を後にした暗黒騎士とそのパートナーの魔法使い。
結局彼らが何者だったのか、結局分からずじまいである。
どこか後味の悪さを感じる女エルフだったが、とうの手紙を残された男戦士は、からっとしたものだった。
「なに、俺たちのような冒険家業では珍しいはなしではないさ」
「まぁアンタとアイツは、魂の絆で結ばれてるんだものね」
「あれ? もしかして妬いてるんですか、モーラさん」
「男に嫉妬するなんて、変なんだぞ、モーラ」
「ちーがーいーまーすぅー!! そんなじゃないから!!」
ふん、と、顔を振ってそっぽを向く女エルフ。
そんな彼女をはははと、男戦士のパーティが笑った。
主人に預けていた鎧は返って来た。
曲がった剣についてはどうしようもなかったが、少年勇者と暗黒騎士が気を利かせて、男戦士を準優勝という形にしてくれた。その賞金で、なんとか間に合わせのショートソードは手に入れられた。
準備万端、エルフ好きの店主が見守る中、男戦士が空を見上げた。
「さて、冒険に出発するにはよい天気だな」
「ティト。今度は古いダンジョンのあるクエストに行きたいんだぞ。僕がしっかり案内してあげるぞ」
「私はいろんな国を見て回りたいので、遠くに行けるクエストがいいですね」
「私は、そうねぇ――アンタが行くところについていくわよ、ティト」
男戦士を見るパーティメンバーたち。
頼りになる仲間を見つめて、ふふっ、と、男戦士が笑った。
と、思いきや、そこからの、いつものショック顔である。
「モーラさん、それは、いったいどういうことでしょうか」
「えっ? いや、別に、あんたに付き合うって、それだけのつもりだけど」
「いくら相棒とはいっても、トイレやお風呂、ふとんの中まで入ってこられるのはちょっと、男と女の関係としてどうかと――」
「そんなこと言ってないじゃないの!! なに勝手に変な妄想広げてんのよ、この――バカティト!!」
べしり、と、女エルフの杖が男戦士を叩いた。
あははは、と、女修道士とワンコ教授の笑い声が、青空へと広がっていく。
「もはや俺にはプライベートもないというのか。ヤンデレ、これがヤンデレエルフという奴なのか。まさかそんな属性までカバーするなんて、流石だなどエルフさん、さすがだ」
「カバーしてない!! もう、いい加減にしてよね!!」
第一部はここまでです。おつきあいくださりありがとうございました。m(__)m
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