第94話 どエルフさんと大会の行方
さて、ドエルフスキーとの戦いを終えた男戦士たち一行。
洞窟から街へと戻ったころにはちょうど夜が明けていた。
「ここから、武闘大会に参加するのはちょっと無理ね」
「だぞ、もう、眠くて、限界なんだぞ」
「なかなかの強行軍でしたからねぇ。ねぇ、ティトさん?」
女修道士が同意を求めて男戦士の方を見る。
なんということだろう、器用なことに、男戦士は目を開けたまま、鼻から風船を膨らまして歩いているではないか。
寝ながら移動していたのか、と、その奇行につっこむ気力もない面々。
かくして彼らは、武闘大会への参加を早々に諦めたのだった。
「それで、貴方たちはどうするの?」
と、女エルフが問うたのは、パーティーの後ろを歩いていた、暗黒騎士と少年勇者のパーティだ。
少しも考える素振りも見せずに、少年勇者は決まっているだろうと答えた。
「当然棄権する。これ以上、ララに無茶はさせられない」
そう言った彼の背中には、小柄な少女エルフが寝息を立てている。
なんとも過保護な少年勇者に女エルフは微笑んだ。
で、貴方は、と、少年勇者と違っていくらか辛辣な視線を向けたのは、暗黒騎士の方だ。
男戦士や少年勇者と同じように戦った彼であったが、そのパートナーともども、まるでなんともないという感じの顔をしていた。
「ふっ、まぁ、戦い甲斐のある相手が棄権するのであっては、あの大会に参加する意味も少ない。俺も棄権するとしよう」
「随分と余裕じゃない。ちょっと腹が立つわね」
「そもそも私の目的は大会での優勝ではないからな」
そう言って、彼は少年勇者を見る。
共闘しながらもまだどこかで心を許していないのか、そんな視線に少年勇者が噛みつくような視線を返した。
ふっと、それを笑ってかわす暗黒騎士。
どうせろくでもない目的なんでしょうねと、半ばあきれた感じで女エルフが言った。
「しかしそうなると、優勝者は一人残ったマッチョチームか」
「勝ち目がない試合でもないのに残念ですね」
「まぁ、いいことしたんだから、仕方ないんだぞ」
あるいは寝てても、この男戦士なら戦えるのではないか、そう思ってじっと男戦士を見る女エルフ。
ふと、そんな視線を感じたように、男戦士が首を女エルフの方に向けた。
「やめるんだモーラさん!! 胸をいけにえに破壊神を召喚するだなんて!! いけにえにするような胸なんてどこにもないじゃないか!?」
「はい、まぁ、いらんこと口走って変なことなっちゃいかんし。素直に棄権しましょうかね」
「バカな、無より破壊神を生み出す、これがどエルフの力だというのか。流石だなどエルフさん、さすがだ――」




