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どエルフさん  作者: kattern@GCN文庫さまより5/20新刊発売
第一部第六章 エルフさらいの悪漢ドワーフ
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第89話 どエルフさんと女性向けサービス

「なんで止めるんだモーラさん!! せっかくいいところだったじゃないか!!」

「そうだ、心通わせる名シーンだっただろう、この小娘が!!」


「男同士でそんなことしてどうすんのよ!! 気持ち悪いだけでしょう!!」


 うぐ、と、黙ったのはドワーフ。

 たしかにそうかもしれんと彼は今更ではあるが、事態のおかしさに顔色を曇らせた。


 しかし、頑固で知られるドワーフが納得したところで、それでも食い下がってくるのが男戦士である。


「君がそれを言うのかモーラさん!! 男同士で裸でいちゃいちゃする本が好きなくせに!!」

「なぁっ!? ちょっと、それは今は関係ないでしょう!!」


 男同士でいちゃいや、と、わけのわからない感じに首をかしげるワンコ教授。

 その耳を、そっと女修道士シスターが覆って、二人の痴話喧嘩をフォローした。


「特にいがみ合っていた敵同士で一方が捕虜になって――『戦場に居る時からお前ばかり見ていた』『貴様』『どうして俺がお前を捕虜にしたと思う。俺のこの気持ちがわかるか』――とかいう展開から、男同士で抱き合うのが好きなんだろう!!」

「ぎゃぁあああっ!! なんであんた、それを!!」

「そのページだけめちゃくちゃ手垢がついていたからな!!」


 なんでそんなところだけ頭が回るのよ、と、女エルフが絶望した顔をする。


 だが、へこんでもいられない。

 というかそういう場合でもないのだ。


 きっと唇を強く結ぶと、女エルフは男戦士を睨みつけた。


「いいことティト、一度しか言わないからよく聞きなさい」


 いつになく気迫のこもった女エルフの表情。男戦士も思わず攻めの姿勢から一転して尻ごんで黙り込んだ。


 すぅ、と、息を吸い込んで、女エルフが叫ぶ。


現実リアル理想ファンタジーは違うのよ!! 現実に、男同士で抱き合ってるところなんて、見たってちっとも面白くないのよ!!」

「なっ、なんだってぇっ!?」

「よしんば、アンタたちがそりゃもう目が覚めるような美少年・美青年だったとしましょう、それならね、少しくらい私の中でもありかなって、そういう気分にもなるでしょうよ!! でもね、汚いおっさん二人がきゃっきゃうふふ乳繰り合ったって、こちとらまったくうれしくないのよ!! 逆よ、逆に気分が冷めるのよ!!」


 汚いおっさんって、と、男戦士とドワーフが絶望に顔をゆがめる。

 二人とも、確かにいい歳なのは間違いない。


 まだぎりぎり、なんとか、そういうナイスダンディ的な路線で、狙いないこともないかもしれないが――。


「なるほど、モーラさん的には、ロマンスグレー系のお話はナシなんですね。流石ですねどエルフさん、さすがです」


 女エルフには女エルフのこだわりがあるのだ。

 耳をふさがれて何が何やらという感じのワンコ教授をよそに、女エルフの腐女子としてのこだわりを前に、女修道士はうなづいたのだった。


「うぅっ、汚いおっさんって、ひどい――」

「ワシら見た目はこんなだけど、心は乙女なのに。あんまりじゃぁ――」


「そういう要らんセリフが興を余計に削ぐのよ!! やるならやるで、ちゃんと勉強してからこい、このノンケおやじどもが!!」

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