第766話 ど女エルフさんとこちらにも考えがある
「いやぁ、しかし、パンの耳をあんな感じにエロく食べることができるとは、想像もしなかったのう、ティトの字」
「びっくりですねぇ。まさかの高速ベロジャブからのかぶりつきですからね。あれだけ口周りに意識を集中させる食べ方もさることながら、きっちりと見る人にエロいと思わせるだけの演技力。そして、そんなものに青春を捧げてしまったんだろうなと思わせる、どうしようもない感。すべての意味でハイレベルにまとまったウワキツでした」
褒めているのかけなしているのか。
なんにしても。
またしても赤バニからくり娘のテイスティングシーンは、ナチュラルかつシンプルにエロいために保留されることとなった。
昨今、その手の描写にはうるさい世相である。
ウルトラセクハラWEB小説のどエルフさんであるが、それでも、踏み込んではいけない領域というのが、ここにも確かに存在するのだ。
単に作者がそういうのを書けないだけではない。
とにもかくにも今回も、赤バニからくり娘が大暴れ。
おそろしいまでの舌技を披露しての、高ポイント有効五点を取って、格付けチェックを終えたのであった。
食パンを二枚食べ終えて、満足そうに微笑む赤バニからくり娘。
いったいどうして、自分の恥をさらしておいて、そんな余裕の表情ができるのか。ほとほと、彼女の女を捨てたなりふりの構わなさに、男騎士も風の精霊王も感心しきりであった。
さて。
続いて、後手の女エルフである。
「これだけの技を見せつけられた後では、ちょっと不安しかないのだけれど。モーラさん、いったいこれにどう対応するのか」
「モーラちゃんなぁ。まぁ、前回の失敗を踏まえて、対策は練って来てくれていると思うが。なんだかんだで、彼女には羞恥心があるからのう。あのモンスター級の恥知らずを越えるウワキツプレイが果たしてできるじゃろうか」
できるさ。
できるに決まっているさ。
俺たちのモーラさんを馬鹿にするな。
そんな感じで、じっと男騎士が風の精霊王を見る。その熱気の籠った視線に風の精霊王、何も言わずにふっとほほ笑む。どうやら、彼もまた、ここからの女エルフの逆転劇を信じているようだった。
はたして、男騎士と風の精霊王の熱い期待を受けて、満を持してテイスティングルームに女エルフが姿を現す。
普通ウワキツヒロインに身を落としたヒロイン。
そんな彼女は――。
「行くわよ!! セーラーモーラ、出る!!」
「「ちょと待て!!」」
再び、男二人にちょっと待てボタンを押させるほどの格好をしていた。
いつ着替えたのか、セーラー服。
それも生足がボロン出ている、マジもんの若者しか着ちゃいけないレベルの露出度をした、そんな服を彼女は身に纏っていたのだった。
これに男騎士と風の精霊王。
ジャッジを行う解説席から、転がり落ちて床を叩く。
顔面と腹筋は既に崩壊していた。
「さく〇じゃ!! さく〇じゃぞ、ティトやん!!」
「合わせてきましたね。無意識に合わせてきましたね。流石はモーラさん、いい仕事をしてくれます。我々の期待を裏切らない、ナイスコスチュームチョイス」
「まさかの春〇《チュンリー》対さく〇じゃ。ターボの好カードになってきよったぞ」
「熱い展開ですね」
そう、女エルフ。
前回の戦いで、自分の準備の甘さを痛感していた。
ウワキツ勝負だというのに、なんでもありの言わせた者勝ちの勝負だというのに、準備不足でことに及んだことを、今更ながら痛感していた。
コスチュームを着て挑むという発想くらいできたはずだ。
ここまで、スク水、白スク水、魔法少女服、そしてサンタコス。
いろんな服を着て、ウワキツを演出してきた。
そして、ウワキツ勝負のことごとくで勝利をもぎ取って来た。
にも関わらず、その肝心のコスチュームを今回はおろそかにした。
なんというか、ウェディングドレスで満足していた。
これくらいのウワキツで十分かなと、彼女も自分で無理やり自分を誤魔化すような、そんな納得の仕方をしていた。
しかし、それではダメだった。
やはりそれではダメだった。
相手は本気でウワキツ勝負を挑みに来ているのだ。
だというのに、そんな妥協したこれくらいでいいかなというウワキツ服では勝てるはずがない。もし、勝利を欲さんとするならば、自分もそれ相応の覚悟と、服を用意しなければならない。
故に、女エルフは覚悟を決めて服を着替えた――。
「竜巻旋風〇!!」
「「ちょっと待て!!」」
女エルフがテーブルを前にして技を放てば、ひらりひらりと舞うセーラー服のスカートの中に、ヤバいものが見えた。
その年齢でそれを着るのは本当にまずいだろうというものが見えた。
いや、ある意味では安全なのだけれど、それでも昭和が過ぎるだろうというアイテムが、スカートの中には隠されていた。
はたして女エルフがスカートの中に仕込んだ凶器は――。
「ブルマじゃ!! 紺色のブルマじゃ!! 芸が細かいのう!!」
「もはや一部の人しか知らないであろう、伝説のコスプレ服!!」
「なんていうか年々その存在が忘れられている感が強いよね!!」
「その手のビデオでも、あきらかに見なくなりましたね!!」
「「ブルマじゃ!!」」
ブルマであった。




