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どエルフさん  作者: kattern@GCN文庫さまより5/20新刊発売
第一部第六章 エルフさらいの悪漢ドワーフ
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第75話 どエルフさんとシチュエーション

「くくくっ、とにかく、親分のために、そのちびっこエルフはいただくだにぃ」

「んがぁ!! 邪魔するなら女の子だからって容赦しないんだなぁっ!!」


 ハーフオークの男がその緑色の腕を振り上げる。

 ばしりとその大きな手のひらで板敷の床をたたきあげれば、まるで太鼓のように彼らの立っている場所が震える。


 足元からの衝撃に体勢を崩す女エルフと女騎士。

 と、そんな彼女たちに向かって、今度はダークエルフの男が手を向けた。


「超重力!!」


【魔法『超重力』:無属性魔法。対象にかかる重力を倍加させ行動を制限する。今日は重力がすごいのよ、今日は重力がすごいのよ】


 女エルフたちの体を襲う強力な重力。

 身軽がモットーのエルフ娘。だが、そのフットワークを完全に封じられて、彼女たちはその場に膝をついたのだった。


「ぐふふふ、いい眺めだにぃ。美女たちが跪いてる姿ってのは」

「んがぁっ!! むらむらしてくるんだなぁっ!!」

「くっ、貴様ら――」


 女騎士を眺めてほくそ笑むダークエルフとオークのぶ男たち。

 舌なめずりするその姿は、どう擁護しても、そういうゲームの絵面にしか見えはしない。


 これはいよいよ、本当に、正真正銘、あの名セリフを使う時がきたか――。


 そう思ったその時だ。


「や、やめろっ!! 私のようなぺちゃぱい、揉んでもつついても楽しくないぞ!!」


 慌てて女騎士は自分の顔の前で手を振ると、涙を流していやいやをしだしたのだった。


 凛々しさ、威厳、そんなものなどどこにもない――全身全霊全力の拒否のポーズ。


 流石にこれにはぶ男たちの顔も、ゲームに出てくる凶悪キャラ顔から、すっかりと雑魚モンスター顔に戻っていた。


「そそ、そうだ、こっちのエルフの方がいいんじゃないか?」

「ちょっと、変な話を振らないでよ!!」

「女騎士は触手!! オークはエルフだろう!!」

「どっちもそんなに変わらないでしょ!!」


「黙れ!! 女騎士は大変なんだぞ!! 国が滅ぼされたら他国の兵に、森でオークと出会ったらオークに、宮廷魔術師は基本敵だし!!」

「そんなこと言ったらエルフなんて!! 奴隷商人につかまったり、儀式の生贄にされたり、あと、森でオークと出会ったらあれなんだから!!」


 やはりどっちもオークと出会うとアレなのではないか。


 先ほど結んだ友誼などすっかりとどこへやらである。

 どんぐりの背比べ、低レベルな女騎士と女エルフのやり取りに、場が凍り付く。


 なんの話だろうか、と、きょとんとする少女エルフをよそに、その後も二人はしょうもない罵りあいを続けた。


「ふんがぁ。なんか、色々とだいなしなんだなぁ」

「胸もなければ色気もないとか――お前ら、ほんとなんで女騎士とエルフなんてやってるだにぃ」


 なんのためにだろうか。


 罵りに罵りあって、身も心も疲れ果てた二人は、ふっとお互いの顔を見つめあった。


 そこに居るのは哀れな女。

 職業的にも種族的にもヒロインになる資格があるのに、今一つ、ここ一番で、そうなり切れない、哀れな娘たち。


「「くっ、殺せ!!」」


 いまさら遅い。少女エルフを除いた、その場に居合わせた誰しもが、そう思ったのだった。

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