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どエルフさん  作者: kattern@GCN文庫さまより5/20新刊発売
第六部第四章 白百合女王国の守護者
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第562話 ど男騎士さんと目指せ梁山パーク

「しかしまぁ、梁山パークとはいったいどのような集団なのだ? この短期間で白百合女王国の国民からこれだけの信頼を得たことを考えると、よっぽどできる組織のようだが」


「えぇ、とても信頼できる組織よ。元々、レジスタンスはレジスタンスでも、貧民救済を活動理念する互助集団だったの。今回のカミーラ失踪という一件がなければ、表立って前に出てくるような組織じゃまずないわ」


「……貧民救済か」


「いわゆる義賊という奴ね。放浪の最中に私も何度かその名は耳にしたわ。もっとも――白百合女王国内の武闘派レジスタンスとしては、既にホモホモヘブンがいたからね。国内での知名度はその次。正直、知る人ぞ知る組織よ」


 ホモホモヘブンとはまた懐かしい名前を聞いた。

 男騎士がその名を聞いて懐かし気に視線を上げる。


 その先には、かつてその組織がねぐらとしていた山――ジューン山がそびえたっている。


 まさしくホモホモヘブンの後釜として、ジューン山へと入った梁山パーク。

 かつてヨシヲたちが、男たちの復権という大義を抱えて戦ったように、彼らにも政権を奪取して、成したい何かがあるのだろうか。


 なんにしても――。


「なんとなく、カミーラが生かされている理由が察することができる相手だな」


「貧民救済が主目的だから、女王の所在などどうでもいいってことか。そら、ボケ老人が女王と似ていようと似ていまいと、困っているなら捨て置けないわな」


「そうね。それが救いといえば救いよ。他にも過激なレジスタンス組織は白百合上御王国の中にいくらでもある。けれど、その中で梁山パークに身柄を拘束されたのは不幸中の幸いよ」


 もっとも、彼らも今や政権打倒・奪取を志している。

 貧民救済の理念がこうじてか、それとも何か別の思惑が働いてかは分からないが、うかうかとそんな所に旧政権の女王の身柄を置いておく訳にはいかない。


 早急に、白百合女王国女王の身柄を奪取しなくては。

 必然ジューン山の頂へと至る道を歩む男騎士たちの足取りは早くなった。


 軽装の第二王女がずいずいと進む。

 それに三歩遅れて男騎士が進む。

 体力や装備量の差という訳ではない。というのも男騎士、ジューン山に入った時から、密かに警戒態勢に入っていた。


 以前、彼がジューン山に登った時とはまた違う。

 妙な張り詰めた空気が山には漂っている。

 山を占拠している勢力が違えばそうなるのかと言われればどうも違う――。


 これは、あきらかに、戦いを知っている者が手を入れている空気だ。


「貧民救済の慈善組織にしては、いささか気の張り方がとげとげしい」


「ティト。こいつはどうも訳アリくさいぞ。あんまり油断してかかるな。たった数日で、ここまで山を要塞化することができる組織だ。ただの慈善集団のままじゃこれだけの仕事をすることはできねえ」


「分かっている」


 第二王女の情報の通り信じるのは危うい。

 貧民救済を是とする正義の集団という考えは捨てた方がいいかもしれない。


 今、ここにある状況だけで判断するなら、梁山パークは十分、武装蜂起により国を転覆するレジスタンスとしての力を持っていた。


 カミーラを奪取し、早々に状態を建て直さないと国家転覆は現実的にありうる。

 急がねば。そう思いつつも、どこから奇襲をしかけられるか分かったものではないと警戒を続ける。


 茂みの中。

 木々の上。

 曲がり角。


 神経をとがらせながら進んでいると――。


 こっぽらこっぽら。

 なにやら間抜けな四つ足の獣の足音が、前方の道から響いてくるのだった。

 蹄の音にしてはなかなか軽い。蹄を手入れしていないのか、そもそも軍馬ではないのか、なんにしても農耕馬のような重たい足音。


 それと共に、なんとも勇壮な名乗りが、ジューン山の頂に木霊した。


「とまれ!! ここより先はレジスタンス梁山パークの野営地である。これ以上進むと言うのであれば、梁山パークの者である証を見せるがいい!!」


「……ふむ」


「おん? なんだよ、なんだか耳に馴染みのある声をした奴がしゃしゃり出てきやがったな?」


 ぶるひぶひひんと農耕馬を暴れさせるその男。

 馬上にてフルプレートアーマーを着込んだ彼は、馬にかかる負担など一切考慮していないどころか、それによる馬の動きの変化についていけないようであった。


 何度も何度も手綱を引いて、無様な足踏みを農耕馬にさせる。


「静まれ、静まるんだ牧王号!! んあー!! 落ち着くのねーん!!」


「相変わらずしまりのないやっちゃなぁ」


「なにこのポンコツ騎士は。というか、ティトさん、貴方の知り合い」


「ん? まぁ、そうだな。知り合いというか、なんとうか……」


 自分の偽物です。

 そう素直に言ってしまったら、目の前の騎士が傷つくだろうか。

 ついつい言葉が詰まる男騎士。


 しかし、彼の気持ちなどまったく知らぬ。

 分からぬ。

 顧みぬ。


 そんな感じで、ようやく葦毛の馬を落ち着かせた騎士は、意気揚々と名乗りを上げた。


「我が名はティントォ!! 中央大陸連邦共和国と暗黒大陸の戦いにて、連邦を勝利に導いた聖騎士!! そして生ける伝説!! 此度の白百合女王国の動乱においては、梁山パークに加勢することと相成った!! さぁ、我が武威を恐れよ!!」


 そんな名乗りがあるか。

 あまりに自意識過剰で、聖騎士にしては分別のない言いぐさ。

 本物の英雄も、また、詳しい事情は知らないが、彼が偽物であることを知っている第二王女。二人揃って、その言いぐさにすっかりと閉口した。


「……どうする、ティト。やっぱりこいつ、〇す? 〇す?」

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